突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R 第三の手

 人の腕は2本しかない。当たり前のことだ。

 当然人の効率はこの2本に限定される。

 そのため、人の使う道具は基本的に腕を拡張する形になっている。

 より多くの、より高精度の、より優れた、腕を求めて人の文明は成長してきたと言っていい。

 

 軍事において、この腕が2本しか無いということが問題であるとされ、ある装備が開発された。サードアームと呼ばれる、3本目の腕である。

 これは通常重量のために両手で持つしか無い武器を片手で持つための装備で、その見た目が腰から生えた腕なのだ。

 この装備を使うことでより効率的に武器を構えたり、保持したまま別の武器を構えるといった動作が可能になるわけだ。

 

 比較的簡単な構造でこのような効果が得られるのならば、もし人に3本目の腕があればどれだけ人の効率は変わるだろうか。

 

 今回は3本目の手が出た話だ。

 

 

 

 R・第三の手

 

 今日姿を現した景品はこれだ。

 なんというか、出来の良い手の模型が一つと、首掛けスピーカーのような形をしたなにか。

 

 無駄に手のクオリティが高く気持ち悪い。うっすらと血管が浮いているようにすら見える。

 

 しかしこれはなんだ? 手の模型……というわけではないはず。

 模型ならば首掛けスピーカーのようななにかがわからない。

 

 掛けてみるか……。そっと首にそれを掛けてみる。

 すると、それに反応したのか手がピクッと動いた。

 

 えっ、こわ。

 

 この首掛けスピーカーのようななにかに連動しているってことなのか。

 思わず両手を握りしめる。

 

 すると、それに連動するかのように手の模型が拳を握りしめた。

 

 ……ん? もしかして。

 頭の中にイメージを浮かべる。

 もぞもぞと動く手のイメージだ。手だけで地形を這うように。

 

 そのイメージに連動するかのように手の模型が動き出す。

 

 ほう、なるほど。第三の手と書いてあったが、本当に第三の手として機能するのかこれ。

 当たりじゃないか?

 

 しかし、問題はだ。

 異常なほど集中力が要求される。

 

 とにかく手を動かすのに脳で使ったことがない部分を使わされている気がするのだ。

 頭の不自然なところが熱を持っているような気がしてならない。

 

 

 小一時間使いづつけたが、扱いきれない。これなら素直に両手でものを扱ったほうが遥かに早いじゃないか。

 私の扱い方が悪いのかわからないが、ものをうまく持たせることすら出来なかった。

 

 地を這うことしか出来ない第三の手と、それを必死に動かそうとする私。

 なんかバカバカしくなってくる。

 

 私はそっと第三の手を拾い上げ、適当な袋に入れて忘れることにした。

 

 

 

 

 後日、兄が第三の手を浮かせる方法を発見した。

 曰く、ケツに力を入れる、だそうだ。

 しかし私がしても手は浮かび上がらなかった。

 

 結果。兄が第三の手をドローンのごとく飛ばして遊んでいる姿を数日見る羽目になった。

 問題があるとすればその姿はどう見てもホラー映画だ。

 夢に出そうで困る。


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