突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
玉座。王権を持つものや国家の君主など、権威主義のトップが座る象徴的な椅子のことである。
創作においては……やはり、魔王と呼ばれる強大な力を持った存在が座っている印象が強いだろう。
このような場合の玉座は往々にして巨大で、しかも装飾も極めて凝ったものとなっている。
自らの力を誇示するように、あるいはなんらかの要石として。
象徴的なものであるがために、あるだけで魔術的な効果を生み出すのだ。
今回はその玉座が出てきた話だ。
何を思い立ったのか、兄は宝箱を改造し始めた。
発掘ダンジョンから大量に回収してきた宝箱は、内部の空間が拡張されている他、時間が停止していることからアイテムボックスとして利用できる。
ただ、かなり重量があることから
どうもそこに手を加えたいようなのだが、それで出来ることと言ったらとりあえずばらしてみることぐらいで。
とりあえず宝箱についている装飾を外していく作業をしているのだ。
これがまた妙に複雑、というかおそらく罠を仕掛けるための細工なのだろう。
一つ一つが精巧な鍵のように内側に食い込んでいたりするのだ。
ボロっちい見かけに反して内側は機械仕掛けである。
それに、中身を拡張する仕掛けも内側に仕掛けられているようで、うかつにそれを叩き割った結果中身が縮んで大変なことになったりもした。
流石に50センチメートルの箱に2メートルの棒は入らないからね……。
まあいいや。
兄のことだ、飽きるまで弄り回しているだろう。
私はガチャを回してしまおう。
SR・魔王の玉座
出現したのは、巨大な椅子だった。
高さが12メートルほどありそうな巨大な水晶を削り出して作り出されているそれは陽の光を吸って複雑な色を生み出している。
しかも表面に掘られた意匠にその色が流れ込むことによってさながら神話の光景を描き出しているように見えるのだ。
で、でかい……。
透明な玉座でありながら、光を通すことで錯視的にステンドグラスのような造形を生み出している。
高度すぎてどのような技術が使われているのか全く想像がつかない。
しかしながら、だ。
これは玉座なのだ。
座るために作られた家具なのだ。
……いや、玉座を家具というのは語弊があるか?
まあいい、重要なのは座れるってことだ。
座面の大きさ自体は普通の人のサイズであり、難なく座れそうである。
座面自体が巨人サイズとか、これまでのガチャを考えるとまあありえない話ではないからな。
というわけで、私はその玉座に腰掛けてみる。
お、座面に貼られたクッションがフカフカで座り心地がかなりいい。
と思った瞬間だ。
ぽんっと私の着ていた服が下着まで含めて周囲にぶちまけられた。
その代わり私の身体を包み込んでいるのは漆黒のローブ。
ご丁寧に、私の頭には付け角まで付けられている。
な。
なんだこれは。
あまりに禍々しい衣装に、私は困惑する。
座った人間を魔王にする玉座ってか!?
後日。兄が座った結果、極めて邪悪な造形のフルプレートメイル(3メートル)が出現した。
より厳密に言えば、兄が胴体部分に入った状態のフルプレートメイルだ。
普通の人間サイズの椅子に無理やり座っている3メートルの鎧巨人の姿は、流石にどうかしている。
そのうえなぜか手足が届いていないのに兄はそのフルプレートメイルをまるで着こなしているかのように動かしだしたのだ。
その操作感は兄曰く「なんか油っぽい」。
あっ、何かを思いついたように鬼の角と誰でも変装マスクを持ち出すのはやめるんだ。