突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ハンマー。すなわち槌のことであり、釘や岩などを打ち付けたり壊したりするための道具である。
棒の先に重量のあるものをくっつけるだけで制作が可能だ。
その単純な構造ゆえ、人類が最も最初に発明した道具だと考えられる。
要は重いものを振り回せる道具なのだ。
それ故、強さと活力を象徴するシンボルとして掲げられることもある。
今回はそのハンマーが出てきた話だ。
兄が魔王の玉座に座って得たフルプレートメイルは、魔王の名に恥じないだけの頑丈さと理力を持ち合わせていた。
3メートルある鎧をどうやって操作しているのか、その怪力はどこから来ているのか、なんで兄はぶつかった衝撃のダメージを受けていないのか、など疑問は尽きない。
それにやたら黒の装飾が施されて邪悪な印象が合わさるとやはり魔王と形容するのがふさわしい鎧姿だと言える。
中身も傍若無人で最悪だしな!
……兄の鎧があれだけ強いのなら、私が座ったときに出たこのローブもなにか特殊な力でも持っているのだろうか。
特に怪力になったりはしていなかったが。
まあいいか。
また今度確認しよう。
多分常識的な手段ではわからない気がする。
さて、ガチャでも回しておこう。
R・ハンマー
出現したのは、異常なサイズの頭を持つハンマーだった。
ヘッド部分にはこれみよがしに「100t」と書かれており、その見かけ以上に重いことを自己主張している。
……が、柄を握った手応えからしてそんな馬鹿げた重量ではない。
というか質感からしてこのハンマーはゴムの塊なのだ。
柄以外のほぼ全てがゴムで出来ているように見える。
触った感じ相当硬いゴムのようではあるが。
ハンマーなのだから何かに振り下ろすことで効果を発揮するだろうと私は考える。
しかし、馬鹿げた重量ではないとはいえ、これが重くないというわけではない。
洋樽ぐらいある巨大なゴムの塊が重くないわけないのだ。
ゴムの比重は水とほぼ同値。
種類によって前後するとはいえ、そんなに大きな差はないはず。
つまり、ざっくり計算しても500キログラム前後はある。
……、いやそう考えるのなら手応えがおかしい。
そう思って私は柄を握りしめ、そのハンマーを
持ち上げた腕にかかるスレッジハンマー程度の重量感。
兄の
異常にでかいハンマーを片手で持ち上げている私の姿。
まるで漫画のようだ。
私はそれを……そっと置くつもりだったのがうっかり手が滑って思いっきりテラスの床に叩きつけてしまった。
スレッジハンマーと同等の重量がある塊を叩きつけられた床は、特に壊れることもなかった。
ま、マンガ的すぎる。
もしかしてだが、これは……。
後日。兄がサメもどきの頭にハンマーで思いっきりフルスイングしていた。
バコーン、と響き合わたる快音を立てながら、それを身に受けたサメもどきは全くの無傷。
これは……、やっぱりと言うべきか。
古いギャグ漫画に出てくるツッコミ用のハンマー……!