突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ミニカー。車を模したミニチュアを指す言葉である。
一般的に手に乗るサイズの大きさのものが主流であり、主に子供の玩具として販売されている。
大きさの関係上、ギミックと呼べるものは多くは扉の開閉とタイヤの回転ぐらいだが、中にはプルバック式の仕掛けを使って走り出すものも存在する。
今回はそのミニカーが出てきた話だ。
兄がアトリエの釜で唐揚げを作っていた。
いや、何を言っているのかわからないが、唐揚げを作っていたのだ。
釜にボトルごと油を投入し、釜の中身の色が変わるまでかき混ぜ続けたあとに鶏肉を塊のまま投入して4時間煮続けるという、明らかに常軌を逸した作業工程でだ。
なぜ4時間も煮るのか。
なぜボトルごと油を投入するのか。
そして、なぜそれで唐揚げが出来上がってしまっているのか。
錬金術はあまりにも不可思議である。
なお出来上がった唐揚げの味はちょっとそのぉ……。
やばかったです。
素揚げの鶏肉! としか言いようがない。
まあ材料に唐揚げの衣となるものが投入されていない時点でそうなるのは約束されていたというか。
うどんで上手く行ったからって唐揚げで試そうとするのは理解できたが、なぜそこでレシピどおりにやらなかったのか。
いや錬金術ではこっちのほうが正しいのか?
レシピノートを読んでいない私にはわからない。
まあいいか。
料理程度のレシピならば、兄は二三日で修正してまともなものが作れるようになるだろう。
他の薬や道具でなければ。
ガチャでも回そう。
R・ミニカー
出現したそれは……、出現と同時に地平線へ向かって走り出した。
手のひらサイズの車が自転車ほどの速度で走り出したのだ。
雑草に覆われた草原という悪路をものともせず、その小さな車輪でしっかりと地面と捉えながら。
あっ、ちょっ、まっ。
私は慌ててその車を追いかけ始める。
時折そのミニカーは草を足場にたまに跳ねながらも、しっかりとその車体を走らせている。
しかも不定期に曲がったり、空中で方向転換したりするために追いかけている私は散々振り回されている。
それに速度が全然落ちない。
その小さな体のどこにそれだけの動力が仕込まれているのかわからないが、私を振り回し続けるのには余りある。
最終的に勢い余った結果ダンジョンの壁にめり込んだミニカーの両脇を指でつまむことによって捕まえることが出来た。
つまみ上げたミニカーはまるで電池式でモーターで走らせる車のプラモデルの如く、タイヤを高速回転させて振動している。
というか、勢いがすごすぎて指からすり抜けそうである。
ところでこれどうやって切るんだ……?
電池ボックスも電源スイッチも、なんなら動力となる仕掛けも見当たらない。
なのでシャーシとガワを掴んで引っ張って外した。
そこにあったのは、回転するシャフト。
歯車もゼンマイもなにもない。
シャフトをプラスチックのフレームが固定しているだけで、なんの動力にもつながっていない。
ああはいはい。
いつものいつもの。
シャフトが回転しているだけなら景品としては普通ですらある。
めちゃくちゃ走らされたけどな!
後日。兄が
ミニカーのガラス部分から見える内側にみっちりと
アトリエの釜か、ダンジョンの機能によるものかはわからないが。
その結果、中に詰まっている
これによって……ダンジョンの壁にめり込むだけの破壊力を持つ回転を加えながら跳躍突進を自由に使えるようになったのだ。
……。
なにミニカーを武器に加工してんの!?
いや放置しててもギャルギャル音をたて続けるだけのおもちゃだけども!