突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R 鬼の角

 鬼。一般的に人型で怪力と鋭い角を持つ怪物として描かれる怪異である。

 またその漢字が当てられている通り、非常に残忍な性格としているとされる伝説が多い。

 超人的で恐ろしいイメージから、様々な役割が伝説や神話で当てはめられ、一概に悪とは言いづらい存在だ。

 特に昨今のサブカルチャーではその在り方は様々になっていることだろう。

 だが、角を持ち怪力を誇る超人という核は失われない。

 それが鬼の、鬼たらしめる特徴なのだから。

 

 今回は鬼になる話だ。

 

 

 

 

 このガチャの中身はどこから来ているのだろうか。

 基本的にこれらの中身になんらかの関係があるようには見えない。

 最初に引いたのもブランド肉だったことからも、どのような基準で景品が選択されているのかもわからない。

 ただ一つ言えるのは、基本的に常軌を逸しているということだ。

 

 明らかに別の法則に支配されている苗木に、異常現象を誘発するレシピに、事故から無傷で生還させる詫び石。

 どう考えても、それは科学的な法則の下にあるモノではない。

 

 兄以外に相談できる相手がいるわけでもなし。

 ガチャのことを考えていても思考は空回りするだけだ。

 

 今日も今日とてガチャを回す羽目になる。まあいつものことだが。

 ハンドルはなめらかに、コインはできるだけまがい物を。

 排出されたのは白いカプセルだった。開封してみる。

 

 R・鬼の角

 

 そう書かれた紙がカプセルの中にはいっていた。

 開けたと同時に足元に金属製のなにかが落ちてくる。

 

 人の頭にちょうど載せられるほどの円形をした金属に、動物の骨に似た質感の角と思しき部品がついている。

 一般的にサークレットと呼ばれる装飾具に似ている。

 かぶればちょうど角が額に来るように作られているのだろう。円形は人の頭にそうようにわずかに歪んでいる。

 

 ややゲームの装備品っぽいデザインではある。細かい装飾が無く、角がシンプルに目立つ作りをしている。

 これをかぶっていれば、少し離れた位置から見れば角が生えているように見えるだろう。

 

 しかし……このデザインでこれをかぶるやつはいるのか?

 微妙に角のクオリティがおかしいぞこれ。色合いがちょっと変なのだ。

 なんだよ赤と青って。しかも根本の装飾部分と色が合ってない。

 端的に言えば付け角としてもダサいのだ。 

 それに金属の輪の部分の歪曲具合も頭を締め付けられそうだ。

 

 ……それでもつけそうなやつ、一人いたな。兄だ。

 これが筐体から出た物でないただの装飾具でもつけかねない。

 

 鬼の角と書かれたサークレット、まあ大体効果は想像がつく。

 どうせ怪力を得るとかそんなところだろう。

 

 私はそっと頭に乗せてみる。うわ、金属部分がグラグラしてる。

 角も若干緩い。うかつにどこかにぶつけたらもげてしまいそうだ。

 

 そのまま、プラスチックコインを手に持って握りしめる。

 手の中でミシミシと音を立てて砕けていくコイン。

 ものすごい力だ。

 そして想像通りすぎる。

 

 同様に100円玉を握り、真っ二つに折り曲げる事ができた。

 本当にただ怪力を与えるだけのサークレットのようだ。

 

 つけている姿が本当にダサいことを除けば有用そうなアイテムだ。

 この間の操作性が完全にゴミもいいところな第三の手とは使い勝手が違うな。

 

 最も、ダサいからつけているところを誰にも見られたくない……。

 

 

 

 後日、兄に渡しておいたのだが。

 兄は実験室内で3mを超える大男になっていた。

 しかもその巨躯と怪力を活かして新たなログハウスを作成していた。街でも作る気か。

 鬼の角を外せばすぐに元に戻れるらしく、重機代わりにとても便利だとかなんとか。

 

 ……え、なんで? 試したときと効果違うじゃん。


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