突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R 生命力吸収装置

 生命力。減ると体調を崩し、極端な場合には死に至るリソースである。

 また心臓には生命力が宿るとして、それを生のまま食べる魔術が存在したりするなど、目に見えない液体のようなリソースだと認識されている。

 このため創作では何かと魔力に変換したり、必殺技に上乗せしたり、まじないの対価にしたり、他人から奪い取ったりと、便利に使われる傾向にある。

 

 今回はその生命力を吸い取る何かが出た話だ。

 現実に存在しない概念を操作するのやめてもらえませんかねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄がついにサメ機人(シャークボーグ)に漆黒のコートを吹きかけて外套にへと変換してしまった。

 まさか生物……生物? に使うとは思いもよらなかったし、なんなら生物に吹きかけても意味がないとすら思っていたのだ。

 

 だが兄にそんな常識は通用しない。

 使えるなら使う。

 それが可能であるのならば試す。

 

 思いつく思いつかないのラグこそあるが思いついたのなら実行しない理由がないのだ。

 こと兄に倫理観など期待できない。

 これはここ数ヶ月で実感したことだ。

 

 まあ実験室内でやってるぶんには法も犯さずにすむと考えているのだろう。

 せめて法に縛られててくれ。

 

 なおそんなことをしでかして作った黒い外套は、着るだけで着用した人間にサメ機人(シャークボーグ)の怪力を与え、しかもサメ機人(シャークボーグ)の判断で外套がうごめいて自動防御する代物になった。

 むやみに高性能である。

 

 ガチャを引こう。

 

 R・生命力吸収装置

 

 出現したのは、緑色に光る球体にグリップが付いた奇妙な道具だった。

 グリップには赤くて丸いボタンが付いていて、グリップのお尻の部分にはなにかのコードのようなものがついているのだ。

 またこのコードが適当なところにも簡単に張り付く。

 このコードでなにか情報をやり取りでもしているのだろうか。

 

 しかし生命力吸収装置とは、直球で危なそうなものが出てきた。

 いや刀剣類など、危ない代物は今までいくつも出てきたが、今回は毛色が違う。

 使うだけで直に人の命を奪いそうである。

 暴発すれば私の命すら危なそうだ。

 

 というか生命力ってなんだ。

 そんな目に見えないし、計測も出来ないものを吸収しないでくれ。

 体力とか元気とかならまだわかるが、生命力といわれると具体的にこれ、と言えるものがわからない。

 

 というわけで。

 とりあえず兄の畑で試してみることにした。

 

 コードを隣のウネのナスに接続し、目の前のトマト……トマト? 金属光沢をしたトマトのような植物に吸収装置を向ける。

 そして、ボタンを押し込むと緑色の球体から身体に悪そうな緑色の光が照射され、トマトがどんどん萎れていく。

 みずみずしい金属光沢が失われ、どんどん色味を失い、しわくちゃになっていく。

 その果てには黒ずんでその中身を全て失ったかのように細長くなってしまったのだ。

 

 うわ……、しかもカサカサになってしまった。

 手で触れると風化して粉末状になり、風に乗って飛んでいってしまった。

 これが生命力を失う、ということか。

 やはり恐ろしい道具である。

 

 なおコードをつなげたナスは光り輝いていた。

 やっべ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。兄がサメ機人(シャークボーグ)の生命力を吸い出し、サメ機人(シャークボーグ)に注入する作業をしていた。

 吸い出されたサメ機人(シャークボーグ)は全身がサビつき、その体躯はどんどんやせ細って、最終的に崩壊して崩れ去った。

 そしてその生命力を与えられたサメ機人(シャークボーグ)はというと。

 それまでとはふたまわりも巨大化し、目に見える筋肉構造も太く強くなっていた。

 

 まあそういう事すると思ってたけど。

 実際にやられるとドン引きするな……。

 


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