突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
サインポール。散髪屋の入り口でぐるぐる回っているアレだ。
その由来は正確な記録が残っていないため、様々な説が存在し一概に間違っていると言い切れない場合が多い。
また、砂糖菓子の有平糖、すなわちねじり模様の飴に似ているところから有平棒と呼ばれることもあるらしい。
今回はそのサインポールが出てきた話である。
兄がなにやら、ゲームで見たことあるような武器を制作していた。
のこぎりとナタの2つの形態を持つ凶悪な武器で、これがまた幅の広くて重量のある代物だ。
しかも総ヒヒイロカネ製のせいで、どぎつい銅色に染まっておりこれまた目に悪いのだ。
直剣や盾など、そういうシンプルな構造の武器ならその色味もまた有りだと言えるが、今回作っている武器はナタをベースとした無骨なもの。
背面にのこぎりまで備えているとあっては、いささか強面がすぎる。
そんな武器が赤い銅の色に染まっているのだ。
正直なところ、いい印象を受けないと思う。
なんのために作ったのかもわからない。
作りたいから作ったにしては色味というかそういうものがあまりにも加味されなさすぎる。
そう思っていると、兄は成分抽出機でそのナタからなにかを抜き出し、
その結果……
これがしたかったのか……。
残った武器? こんにゃくみたいになったよ。
さて、ガチャを回してしまおう。
ヤバそうな自慢話を聞かない為に。
R・サインポール
出現したのはサインポールだった。
床屋なんかの玄関に置いてあって、くるくる回っているあれだ。
あれが回転していない状態で、なぜか横倒しで出現したのだ。
むむむ。
おかしい。
基本的によほど小さなモノか、直立していては安定しないものでもないかぎり、自身の利用方法に沿った向きで出現するのに、今回はいきなり横倒しで出現した。
これはすなわち……立てるとなにかが起こる?
なんというか、その時点でだいたい予想がつくな。
どうせアレだろう。
サインポールのくるくる回っている部分がドリルのように回転して地面に潜っていくとかそういう。
そう思い、適当な場所にサインポールを抱えて運ぶ。
邪魔にならない場所に、いつでも起こせるように抱えやすい位置で。
まわりに問題になりそうなものは……なし。
よし、起こすぞ。
どっこいしょーい!
サインポールが立ち上がると同時に、そのイメージ通りに内部の三色が回転を始める。
回転と共になにやら揺れのようなものを感じ、少し視線をサインポールから脇に避けたその時だ。
サインポールがある位置で基準に、そこが玄関になるように、地面から床屋が生えてきた。
床屋が、生えてきた。
地面を強引に押し上げるように床屋がせり上がってきたのだ。
ええー……。
そっちが生えるんかーい。
後日。兄が生えてきた床屋を利用していた。
しかもカットされる前よりも髪の毛が伸びているではないか。
なんか兄がいうには、ハサミを入れるたびにどんどん髪の毛が伸びていったとのこと。
それはだいぶ気持ち悪いな……。
しかもこいつ……しれっと髪の毛を後ろでまとめやがって……。
長いのがうっとおしいのはわかるが、だいぶ似合ってないぞ兄……。