突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
斧。石器時代から世界中に存在する、木を切るために利用される道具のことである。
基本的に長い柄の先端に鋭い刃をつけ、重量によって対象を切断する道具である。
そのため、用途に沿って様々な形状が存在する。
特に戦闘のために発達した斧の事を戦斧と呼ぶ。
ただ、歴史の古い割には神話などに特別な名前を持つ武器としての斧は殆ど存在しない。
やはりもともとが木材を加工するために使われる道具だからだろうか。
今回は戦斧が出てきた話だ。
兄がそこそこ錬金術士のアトリエの使い方を理解したらしく、発掘ダンジョンで獲得した素材のチェックをしていた。
錬金術の材料にするつもりらしい。
錬金術で作り出した制作物は、素材となったものの特性というべきだろうか、その保有する能力を引き継いだ力を持っていることが多い。
塗ると爆発する軟膏は、棚にあった爆発性の植物を材料にしてしまったためにそのような効果を持ってしまったようなのだ。
そのため、より強い力を持つ素材ほど強力な制作物が作れるわけで、兄が持つ物の中で最も強い素材といえば発掘ダンジョンで手に入れたものだ。
マジックアイテムと呼べるものもあれば、本来存在しない植物や、ドラゴンの素材など、常識離れした性質を持つ材料が多い。
当然材料にすればそれらの持つなんらかの力を自由に扱えるようになる可能性があるわけで。
まあチェックはするわな。
どうせ明日には確認した内容を忘れてそうだが。
私は私でガチャから出た景品を全て把握しているかと言われると微妙なところだ。
そして今日もまた一つ増えるわけだ。
R・氷結の斧
出現したのは氷で出来た斧だった。
何らかの理由で鋼ほどの硬度を得た氷を、時間を掛けて削り出したと言うべき無骨な見た目の斧である。
そして持ち手には黒い革紐が巻きつけられ、握りにされているのだ。
その性質は見た目だけでなく、その周囲にいるだけでもわかるだろう。
明らかに空気が冷えているのだ。
キンキンに冷えた氷がそこに置いてあるから冷えている、という感じではない。
周囲の空気の持つ熱量が失われているのだ。
体感で言えば、冷気が流れてきているというより、周りの空気の温度だけが下がったという印象だ。
う、うーん。
なんというか夏場に部屋においておけばクーラーを付けなくても部屋を冷やしてくれそうである。
だが、Rランクで出た魔法の武器となると、どうしても魔剣を思い出す。
あれは私の意志に反応して炎を巻き起こしたが、これは意志に反応する前から冷気を放っている。
下手に触れると、過敏に反応した斧が周囲を凍てつかせてしまうのでは?
現時点では涼しい程度にしか下がっていないが、これは武器である。
相手をキンキンに冷やしてしまう効果があってもおかしくはない。
考えあぐねた結果、私は
触りさえしなけりゃ部屋を冷やせる便利道具になるのは違いないんだよ!
後日。魔剣を使いこなした兄が、この氷結の斧も使いこなせないわけがなかった。
魔剣と違い、とにかく冷やすことに特化したこの斧は、案の定切りつけた相手を一瞬で凍らせそのまま破砕する代物だった。
それに握りを持っている間は刃先には常にその性質が生じているらしくうかつに触ることも出来ないほどだ。
というか持っていると寒い。
私が握っているわけでもないのに周囲がものすごい勢いで冷やされて寒い。
急に冬が来たのかと思う程度にはキンキンに冷やしてくれる。
かなり余計である。