突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
台所。調理を行うために必要なシンクやコンロなどがひとまとめになった場所のことだ。
その関係上、広いほうがいいが、家の建坪との兼ね合いもあってなかなか苦しい配置になっている台所も多い。
特に最小サイズの場合、コンロが電気式のものが一口とシンクとだけで構成されていて、まな板を置く場所がない場合もままあるのだ。
特に現代では食洗機や炊飯器、レンジなど場所をとる調理家電も多くなってきているので広い台所はやはり理想であると言えよう。
今回は台所が出現した話だ。
現在、実験室の扉を入ってすぐにあるテラスは、兄の作り出したダンジョンの頂上にある。
これはダンジョンが
というのも、
ならそんなことすんなよとも言いたくなるが、まあ兄である。
絶対聞きゃしねえ。
そうやって移設したダンジョンの頂上はおおよそ半径100メートルほどの庭園となっている。
植生はまだまだこれから、といった感じではあるが、無駄にでかいダンジョンの頂上であるため見晴らしはいい。
最も青空と地平線上まで広がる海しか見えないが。
そしてこれまであった建物達は、この庭園の一つ下の階層にダンジョンの一部として取り込まれたというわけだ。
そう言えばこれまで出てきた物を納めている倉庫もそこにあった。
これまでのガチャの景品もそのまま入っていたため、ダンジョンの材料にされたわけではないようである。
こうして振り返るとろくでもないものばかりだな。
兄のダンジョンも、ガチャの景品も。
これ以上できれば増えないで欲しいところだが……。
すでに唸り声をあげているガチャの筐体を早く回さないとご近所迷惑になってしまう。
いつもどおりヒヒイロカネ製のコインを投入してガチャを回す。
そして、出現したものが部屋を圧迫しないよういつもどおりにテラスでカプセルを開封する。
R・台所
それはテラスの隅を占拠するように出現した。
台所だ。
設置式のコンロとシンク、台の下に設置された食洗機とオーブンで構成されたやや大きめの代物である。
業務用か?
そう思うとそんな気がしてくる、といった程度である。
いまいち釈然としないぼんやりとした印象を受けるのだ。
台所に詳しくないからだろうか?
が……、実際そんな事はどうでもいい。
問題になるのは、これがどうろくでもないかだ。
兄に悪用されて大変なことにならないようにそのろくでもなさを暴かなければならない。
というわけで、野菜炒めの材料を用意した。
野菜と豚肉である。
これをぱぱぱっと炒めて野菜炒めを作る過程で、その効果を見つけられるだろうという考えである。
台所のコンロでも、シンクでも、食洗機でも、とりあえず使ってしまうつもりだ。
そう思って、食材を台所においた瞬間である。
私の目の前から食材が姿を消し、代わりに皿に盛られた野菜炒めが出現した。
は?
いや、は?
過程……あの、過程。
過程を省略する台所、なのかこれ。
えー……?
後日。兄が台所を
配管などははじめからつながってなかったあたり、ガチャ産である。
兄が錬金術士のアトリエになぜ持ち込んだかというと、まあだいたい想像がつくと思うが錬金術そのものの過程をスキップするためだ。
錬金術の基本は台所で大体できる、とアトリエにあった日記に書かれていたのも理由だろう。
兄はそれを真に受けて、釜の近くに台所を運び込んだのだ。
結果はというと、兄の思惑通りにまんまと成功。
持ち込んだ謎の鉱石(発掘ダンジョンの方で採れる)が一瞬にしてインゴットに精錬された。
あの……料理……料理かそれ……。
その鉱石の精錬には台所一ミリも関係ないじゃん!
なんで出来てるんだよ!