突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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☆☆☆☆ 戦闘用全身義体

 全身義体。人体の一部を機械に置き換える義体化の極致であり、技術によって人を超えるものである。

 多くのSF作品では軍事用の技術として発展しているものであり、やはりそのような改造を施しているものはどこか荒っぽい雰囲気をまとっている。

 その身体には人にはない機能を有している場合が多く、周囲の仲間とネット接続することで高度な連携を図る、衛星とリンクすることでその視覚範囲を大幅に拡大する、極めつけは機械じかけによる怪力だろう。

 それらは工学技術によって実現されており、一足飛びで作り上げることは出来ない。

 現実に作り上げるには解決しなければならない問題が多く存在していて実現可能か疑わしい技術の1つだ。

 

 今回は全身義体が出た話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄が新大陸に行く準備を整えている。 

 行く、と言っても兄はあくまでダンジョンから出ず、サメ機巧天使(シャークマシンエンジェル)を変装させて偵察に行かせるつもりのようだ。

 まあ未知の病原菌とかもらってくると対処が出来ないのと、下手に怪我をすると治療の際にうまく言い訳できないとかいう、色んな意味で利己的な理由である。

 

 じゃあ発掘ダンジョンは良かったのかとも言いたくなるが、その辺、兄は適当である。

 明日には別の理由をひねり出して突撃している可能性だってあるわけだ。

 夢と好奇心を抑えられないのだ。

 

 最も、兄の危機管理能力には目をみはるものがある。

 本当にやばいならギリギリ危険が及ばないところで立ち止まることだろう。

 多分。

 

 今日出たN・ハンドスピナーを回しながら、兄の準備を後ろから眺めていたのだが。

 突如思いついたかのように立ち上がり、こちらに向き直してこういったのだ。

 あのURの高額ガチャを回そう、と。

 

 こいつ正気か?

 1回3万円もする、どう見ても詐欺の温床になっているガチャ筐体を回そう、と?

 しかもダンジョンの進化に巻き込まれてどこに行ったのかわからない。

 

 そう言ったら、床からせり上がってくる例の高額ガチャ。

 ダンジョンに取り込まれてダンジョンの一部になってしまっているようで、いつでもダンジョンの中に配置出来るようになってしまっているようである。

 

 最も、兄には見えていないようではあるが、ダンジョン内であるためそこにあるということは認識出来ているようだ。

 

 兄に手渡される3万円。

 マジ?

 マジでやるの?

 

 兄に促されるまま、そのガチャに3万円を呑ませる。

 機械音とともに3万円が内部にへと取り込まれ、それと同時にカプセルが撹拌され始める。

 イラッとする陽気な音楽とともに、通常のカプセルと比べてもふたまわり近くでかいカプセルが排出された。

 そのカプセルの外装には星のマークが4つ刻まれている。

 

 だから! そのレアリティ表記はガチャのものじゃねーだろ!

 

 部屋に出たガチャと同じツッコミを入れさせられる時点でこいつはクソだ。

 しかもカプセルがでかいせいで開けづらい。

 

 ☆☆☆☆・戦闘用全身義体

 

 出現したのは、ロボットだった。

 成人男性ほどの大きさに様々な機械が詰め込まれた結果、映画に出てくる未来からやってきたアンドロイドのような造形をしている。

 

 それはなにかを求めるように手を動かし、しかし動力不足なのか行き倒れるように動かなくなった。

 赤い瞳のランプが弱々しく光っている。

 

 えっ、えー?

 ロボット……? いや、カプセルの内側には戦闘用の全身義体だと書かれている。

 ということは、これは誰かが中に……?

 

 とそこまで思い至ったところで、兄がその戦闘用全身義体の頭部を押さえ、ボタンを押し込んだ。

 それと同時に開く頭部。

 中には何も入っていなかった。

 

 多くの場合頭脳を納める頭部の部分に、だ。

 だとすればどうやって先程は動いたのか。

 

 だが、兄は何かに気がついたように……倉庫になにかを取りに行ってしまった。

 

 この不気味ななにかを置いたまま私を一人にするのはやめてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後。兄は倉庫から第三の手を取り出してきた。

 異常なほど操作性に欠けた、浮遊する腕を人間に追加する……言い方を変えれば義体技術の1つである。

 

 兄はその第三の手を、額にリンゴのマークの掘られた戦闘用全身義体の頭部の中に押し込んで閉じたのだ。

 そして第三の手の操作部を首に掛けて、第三の手を動かした。

 

 どうしてそれで動くのか、全くわからないが兄の指示を受けた全身義体がすくっと立ち上がり、兄のイメージどおりに動き出す。

 第三の手を頭脳パーツ代わりにして、兄の手足となった全身義体。

 

 兄曰く、この手の全身義体は動作を補助するAIが入っているもので、さっき動いたのもそれの処理によるもの、だと。

 第三の手を入れて動いた理由になっていないような気がするが、一応筋は通る。

 しかも、頭脳の接続コネクタのようなものが存在していなかったところから、非接触式の思考情報のやり取りを行っているものだと判断。

 同様に思考情報をやり取りしている第三の手を頭脳代わりに投入してみることを思いついた、と。

 

 だがなんでその事に気がついたのか、そこから第三の手を入れるという発想を実行してしまえるのか。

 私にはわからない。

 

 そのテンションで新大陸に迷惑かけないでくれよ!


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