突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ダミー人形。車などの実験で使用される、人型の実験用人形のことである。
この人形は重量や重心などが、人に近い状況で実験が可能なように人間のそれを模して作られている。
具体的には、車が衝突した時にどのように乗っている人間が吹き飛ばされてダメージを負うかの実験に使用され、シートベルトの有用性などを証明している。
今回はそのダミー人形が出てきた話だ。
結局のところ、兄はダンジョンから出てきた素材や武器防具などを売ることに決めたようだ。
単純な素材ならばガチャレクシアでも珍しい代物ではなく、また武器防具の類はいっそのことガチャレクシアのほうが多様性に富んでいるといっていいほどに様々なものが存在していたので、普通に買取してもらえた。
下手に茶碗を売られるよりもガチャレクシアの経済を混乱させたり、面倒な足がついたりしそうにないものを選んで売っている今の方がマシだ。
商品自体もガチャレクシアはガチャダンジョンの影響でガチャの景品に似た代物が多く出回っている関係上、そんなに目立たないと思う。
兄もそれがわかっているのか兄基準でそこそこ良い宝剣とか宝石がいっぱいついた盾とか売っている。
しかし改めて検分してもろくなものがないな。
使い物にならない金貨が多すぎるし、使い方すらわからない変な反り方をした剣が何本もあるし、鎧に至ってはとにかくでかい。
神様が爪楊枝に使っていそうな謎ビームを出す持ち手の分かりづらい武器まであるぞ。
なお色は金色。
だいぶ趣味が悪い。
まあ今回の売却で倉庫もだいぶスッキリするだろう。
私はガチャを回してしまおうかな。
R・ダミー人形
出現したのは、人間大の大きさの人形だった。
車の衝撃実験などに使われて運転席に乗せられて毎回悲惨な目に合っているあの人形が出てきたのだ。
しかも、だ。
この人形、重いのである。
人間の重心や重量を再現しているだけあって、だいぶ重い。
なんなら私の体重よりも重い。
なまじ人間サイズだから運べそうなのが辛い。
それになにか効果があるのだろうな……と思うが、車の衝突実験をするわけにもいかない。
というか車がない。
ガチャがこっちの事情とか勘案しないのはわかっているが、役に立たないものを出されても困る。
とりあえず倉庫にでも運ぼう、と抱えて引きずる。
途中、腕が疲れてしまって、うっかりダミー人形を頭から落としてしまった。
そのときである。
頭の部分から「5」と吹き出しのようなものが出てきたのだ。
それはモンスターをハントするゲームの最新作でやっと追加されたダメージを視覚化したようなものと同じように見える。
私は思い切って、ダミー人形の頭を叩いてみた。
先程と同様に、「1」と浮かび上がる。
……。
なんだこれ。
ダメージ表示をするダミー人形。
便利なのか、便利じゃないのか、かなり分かりづらい。
このダメージ表示、普通にかぶって見えなかったり、ダミー人形自体にめり込んでいたりするのだ。
いや、使いみちとか無いだろ!
学生は車の衝突実験とかしないからな!?
後日。兄はダミー人形を立てた柱に縛り付けて的にした。
だが、ダメージ表示が行えるダミー人形が出てきたことで、武器の攻撃力という面で評価が可能になったのだ。
そのために柱に縛り付けられて、武器でボコボコに殴られるダミー人形。
明らかにそういう用途で使うべき人形ではないはずだが……。
というか武器でボコボコにされても壊れないのねこのダミー人形。
車の衝突実験させる気も無いじゃんこれ!