突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
屏風。部屋を仕切ったり、装飾を施したりするのに使用する家具だ。
その構造は木の枠にふすまに似たものを数枚つなぎ合わせたものであり、たたむことが出来るようになっている。
大きな部屋を2つに仕切ったり、風を避けるために使用されていたとされている。
また、大きなキャンバスのようなものなのでそこに鮮やかな絵を施すことで美術品としての用途も存在する。
掲示するにしても開いて置くだけなので手軽だと言えよう。
今回は屏風が出てきた話だ。
やっぱりというべきか、兄がやらかしやがった。
音と図形の魔法から新体系を編み出し、文字通り誰でも扱える魔法を作り上げたのだ。
音で本の中に記された魔法陣を喚起し、同じように音で対象を決定し、そして呪文の難しい構成要素は魔法陣側に記録しておく。
これによって手軽に誰でも魔法が使えるようになったのだ。
言葉の魔法はそれを記憶し、読解し、自身で組み立てなければまともに魔法が使えず、図形の魔法は記述の手間と知識を要求する割には使い捨てである。
杖を使えばごまかせるが、命中精度に難があったために兄は銃型の杖を作っていたのだ。
だがそれでは魔法本来が持つ柔軟性が死んでいた。
だからこそ、魔導書の形で魔法の構成要素を記録しておき、音によってその構成要素を読み出すという形式にすることで魔法の柔軟性を取り戻したのだ。
どちらも全く違う世界の魔法のはずだというのに、あっさりと組み合わせてしまう機神の演算能力には目を瞠る。
いや、兄の発想か。
この方法で魔法陣を分解して利用出来ると考えたからこそ機神はそれに応える形で出力しただけなのだ。
結果、魔導書を片手に構えて呪文を唱える魔法使いスタイルに回帰したのは奇跡というかなんというか。
さて、ガチャでも回すか。
R・屏風
出現したのは屏風だった。
時代劇なんかでたまに見るアレである。
屏風と言えばやはり有名なのは一休さんのとんちだろう。
屏風に描かれたトラが夜な夜な抜け出すので捕まえて欲しいと問われ、では捕まえるのでトラを出してくださいと答えたというアレだ。
この屏風もその説話に漏れず、というべきか。
見事なトラが描かれている。
どれぐらい見事かって、
いやあわかりやすいというか……なんというか……。
正直わかりやすくてまだなにかあるんじゃないかと勘ぐってしまう。
なにかあった場合は……やはり、トラが出てくる、だろうか。
絵の時点ですでに動いているのだから、出てきて暴れまわる、くらいのことはしても不思議ではない。
だがそんなわかりやすいものだろうか。
なまじ初見でわかってしまう効果があっただけに疑ってしまう。
とりあえず畳んでおくか。
後日。屏風の中の絵に、手を振る兄とトラを絞め上げる
は? と思っていると、兄が屏風から上半身を出してこちらにこいと手招きをしてくる。
なんでも絵の部分は異空間になっていて、トラはその中に入っていただけだそうだ。
だから
全然わからねえ。
なんでそれに気がついたのか。
どうしてトラのいる場所に入ろうと思ったのか。
あとそれってやっぱトラ、放置してたら出てきて暴れてたってことですよね!?