突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ログインボーナス。それはソーシャルゲームなどにおいて、毎日プレイしてもらうために用意された撒き餌である。
なおプレイヤー側も起動するだけ起動して遊ばないという選択で対抗するためほとんどの場合は無駄だと言っていいだろう。
ただ始めたばかりのプレイヤーなどを継続させる施策としてはあり……なのだろうか。
まあ貰えるものは貰っておけばいい。
ろくでもないもので無い限りは。
今回はそのログインボーナスが出た話だ。
完成した魔導書はガチャレクシアで大いに売れた。
これがもう、生産が追いつかない勢いで売れたのだ。
50冊用意した大学ノート2冊分の厚さの魔導書が一瞬で捌けた。
というのも、最初に売れるようにと魔導書に収録した魔法が治癒魔法だったのだ。
冒険者という職業は傷病の尽きない仕事であり、傷を癒やす手段の需要はそこかしこに存在している。
ガチャレクシアの宗教の神官なども治癒が使えるようなのだが、高いのだ。
その分実力は高いが。
ちぎれた腕をくっつけられる治癒魔法の使い手って、街単位に普通にいていい存在なのか?
他にある治癒手段といえばポーションだが、ガチャガチャダンジョンからのドロップ品しか存在しないため希少でこちらも値段が高い。
薬草類は傷の治りを早くしてくれるが、まあ現実的な範囲の効果しかない。
そういうわけで、初期投資こそ必要だが気軽に使用できる魔導書は人気商品となった。
どこでもいつでも誰でも、剣で切られた傷を塞ぐ程度の治癒魔法が使える。
しかも物理攻撃の効きにくい敵に有効な魔法もついでに使える。
まあ人気になって当然、といった感じだ。
ちょっと人気になり過ぎなきらいもあり、厄介なことを招かなければいいが。
さて、ガチャを回すか。
SSR・ログインボーナス
う、あ。
出てしまった。
一目でろくでもないものだとわかる代物が。
出現したのはトランクケースだ。
アンティークなデザインをしていて、美しい色合いをしている。
その見事な作りは、持っているだけでおしゃれさをアピール出来るだろう。
半開きの状態で、内側にあるものがなければ、だが。
開いた中身から照らされるように出ているのは、ホログラフィックなプレートだ。
ちょうどゲームのウインドウのように見える。
そして、そのウインドウには、「ログインボーナス」と浮かれて頭でもおかしくなったかのようなフォントで書かれているのだ。
わけわかんないのでちゃった……。
人生のログインボーナスってなに。
あまりにも存在そのものが謎である。
しかも、このログインボーナスが提示している今日のボーナスの内容があまりにも即物的過ぎて引く。
なんと、現金である。
ウインドウに張り付くように、千円札が出現しているのだ。
その上、1週間単位でログインボーナスがローテーションする用に作られているらしくそこに表示されている7日目がだいぶ問題だ。
一万円札である。
ちょ、直接的すぎる。
そこまでして集めようとしている対象はなんなんだ。
ログインボーナスだけが宙に浮いていて、それがなにを招こうとしているのか全く読めない。
なんのためのログインボーナスなのか。
どうせなにもないんだろうな!
なんかあるならあのガチャもうとっくに消えてるはずだしな!
翌日。ログインボーナス二日目の報酬が、詫び石だった。
訂正、かなり前にガチャから詫び石として排出された石が、召喚石として報酬にされたのだ。
しかも3個。
ソシャゲの石のような景品だなとは思っていたが、マジで召喚石だとは。
その3個の石を見て兄は何を思ったのか、円形の魔法陣状のなにかを地面に描き、それに向かって石を投げ込んだのだ。
突如光を放ちながら回転する石。
光が収まった果てに出現したのは、鉄の剣だった。
えっ、召喚石とは書いてあったけども。
まさか本当に召喚出来るとは思わない。
だってそういうのって普通、召喚するための装置が必要で、石はそれを動かすためのリソースじゃん!
なんで手書きの魔法陣と石だけで召喚できてるんだよ!