突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
水は資源である。
水がない場所に人は生存することは出来ず、またその水の質すら選ぶ。
日本はその山脈と気候によって多くの水を有しどこでも自由に使えるが、他の国ではわずかな水を得るために長い距離を移動しなければならなかったりする。
人は水を得るために様々な文明の利器を生み出した。
それが井戸であり、水道であり、貯水湖、ダムである。
今回はその利器である井戸が出た話だ。
カプセルに感じる重量感。これは間違いなく大物だ。
実験室内で開封する。
R・井戸(ポータブルタイプ)
井戸。そこに出現したのは石枠で組まれた円筒だ。木枠から釣瓶が落ちている。
釣瓶を巻き上げるためのものか、ハンドルがついている。
見かけは普通の井戸だ。
そこに穴がなかったことを除けば、普通の井戸に見える。
覗き込んでみても深い穴が広がっており、底が見えない。
しかし、ポータブルタイプ?
構造からしても、見た感じの重量感にしても、持ち運びできるようには見えない。
というかどこから持ち上げようというのか。
地面と接地していない部分を見つけてしまった。
兄が鬼化した状態で踏み荒らした跡が残っていたらしい。
まあそのあたり技術があるわけでも無い兄を責めるわけにもいかない。
実験室自体草原であり若干凸凹しているのだ。
ポータブルタイプ……。いやいや、まさかね。
そう思いながら隙間に手を入れる。
異常なほど軽い手応えで、井戸はあっさりと持ち上がった。
それも片手で。
は?
片手で持ち上げられた井戸の底面はまるで切りそろえたかのように平坦だ。
地面の上に見えていた部分、ただそれだけが切り取られて持ち上がっている。
そして地面には重いものが乗っていた跡しかない。
確かにこれなら持ち運べるだろう。
片手で持ち上げているにもかかわらず、なぜか水平を維持し続けていることであるとか、500グラムも無いであろう手応えであるとか、これが持ち運びを考えて作られていることがわかる。
斜め上の方向と技術で。
そこは井戸の簡易組立てキットとかにしてほしかった。
解体して原理が解明できれば一儲け……できたような気がするから。
いや、そうでないからガチャ産の景品ではある。
これどこに置いておこう。適当に置いておけば兄が勝手に使うだろう。
実験室の開発が進んでしまうのは頭が痛いが……。
なお組み上げた水は純水だった。どうなってんの?
後日。兄が井戸(ポータブルタイプ)をログハウスの上に設置した結果、倒壊を起こしていた。
落下で破損してはいなかった。それどころか瓦礫の上で不自然に水平を保っていた。
どうも持ち上げている間だけ重量が軽くなるようだ。
本当にどういう作りなんだ、これ。