突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
忍者。日本固有の職業で、諜報や破壊活動など、敵地に忍び込んで様々な工作を行う集団のことである。
彼らは様々な道具や知識を用いて相手の認識を撹乱するすべを持っている。
それらは創作などにおいてひどく誇張されがちで、ほとんど魔法のような技術として扱われているのだ。
そのため一部のネット上では忍者ではなくニンジャ、なんて呼ばれていたりする。
今回はそのニンジャが出てきた話だ。
ニンジャの方だよ!
兄が
山脈の中で一人で行動していた男を出会い頭に意識を刈り取り、その持ち物を物色するという形でだ。
機械仕掛けゆえの正確な手際であった。
なぜそんなマネに出たのかというと、その成分を調べたかったそうなのだ。
機神の解析能力にかかれば、まともな物質であればあらゆる性質を丸裸に出来る。
多分世界を変えうる新薬の製造も簡単にできるだろうほどにだ。
そして調査された気持ちよくなるお薬だが、案の定というかなんというか。
かなり強い依存性があるようである。
脳に成分が寄生し、薬が摂取できないと強烈な飢餓感に囚われるようになっている。
その乾きを癒せるのはこの薬だけである。
ひどい薬だ。
しかもそれで終わりではないらしい。
どういう原理かは不明だが、薬自体が生命力を吸い上げ、どこかにへと流している。
うわー、絶対邪教の儀式に使ってるよ……。
街を蝕むついでに生贄まで手に入る薬とかやばすぎる。
兄はなんというか。
楽しそうにしている。
叩き潰しても良い悪を見つけた、とそう言いたげな表情で。
ろ、ろくでもない……!
まあいいか。
問題は起こさないだろう。
今回は解決する側になる、多分。
というわけでガチャを回してしまおう。
SR・ニンジャ(5体セット)
……ニンジャ。
いや、ニンジャなんで?
出現したのは黒い影のようなものだった。
球体の影。
丸い形にまとまった黒いもやもや。
それが5つほど出現したのだ。
それは私がカプセルの中の紙に意識を取られているうちに私の影に潜り込み、一体化していった。
それに伴って妙に濃くなる私の影。
……うわ。
これは寄生……されたか?
ガチャの景品に、寄生された?
ちょっと気味が悪くなって、力強く影を踏みつける。
間抜けな動きになったが、それで正解だったらしい。
影からその黒いもやが飛び出し、人型になって私に向かって傅いたのだ。
それは喋らない。
言葉を持ち合わせていないのか、発声器官がないのかわからないが。
それは少し逡巡したあと、どこからか取り出した紙を私に手渡した。
我々は貴方の忠実なしもべ、ニンジャです。
そう書かれていた。
ニンジャ。
……そうか。
ニンジャか。
え、ニンジャ?
この黒い靄が?
人ですら無いものがニンジャとして私に仕える、と?
困惑が強い。
私はどうすれば良いんだ。
こいつらをどう使えば良いんだ。
後日。兄の直感が冴え渡り、彼らの使い方を暴き立てた。
まず彼らは私の命令に忠実に従う。
影のような体は、私に取り憑いたのと同じように影に溶け込める。
そしてこいつらが最も得意とするのは。
忍術である。
そう、諜報や撹乱に利用される道具や知識群……ではなく。
創作なんかに出てくる魔法みたいな技術の方だ。
火遁を命じると口から火を吐き。
水遁を命じると口から水を吐き。
土遁を命じると周囲の地面を操ってみせる。
それにそれらを利用して姿を隠したりも出来る模様。
影から影へワープしたり、影を濃くすることで見つからないようにしたり、だ。
つまりこいつらは……黒いもやのような姿をしているくせに、創作のニンジャのような能力を持っているのだ。
だからこれは言っておこう。
Oh……ニンジャ……。