突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
多くのRPGには、ステータスがある。ステータスがないRPGはかなり珍しい。
そして、それを補助する要素として、装備アイテムがある。
ゲームの中に登場する装備アイテムの殆どがそのステータスに数値を加算する仕様だ。
すなわち、キャラクターのステータスと装備のステータスを足し合わせたものがキャラクターの最終ステータスであると言える。
この数値の比率はゲームにもよる。
だが、装備による加算ステータスが僅かで、つけてもつけなくても誤差でしかない、ということはないはずだ。
今回はそのRPGの装備アイテムが出た話だ。
実験室内で、ついに村落が誕生した。
それだけでなく、砦を中心に伐採した木材で小さな家を建てて生活のようなことをしている、らしい。
らしい、というのはサメもどきから自我のようなものが感じられないからだ。
大方、ダンジョンで作れるアイテムの調査をさせているのだろう。
だがその光景がどんどん村に近づいているのはどういうことだろうか。
環境を村に近づけることで、より道具の環境に近い状況で実験できるからだろうか。
兄の考えることはわからない。
なにかのシミュレーションをやっているつもりかも知れないしな。
ただ遊んでいるだけなら放っておいたほうが静かで良い。
さて、今回の開封だ。
最近気がついたことだが、2日以上ガチャを回さないでいるとあの筐体は異音を立て始める。
ろくに睡眠も取れないので回すしか無いのだ。
なんだこの二重苦は。
するするとカプセルを開ける。今回もRの記号のものだ。
R・素早さの指輪+2
カプセルを開けると、足元に落ちたのは青い宝石の嵌った小さな指輪だった。
精緻な銀細工で出来ているように見えるが、微妙に質感が違うから銀ではないかも知れない。
宝石の方はラピスラズリのようだ。
しかし、素早さの指輪……? しかもプラス修正値がついている。
こういう時ゲームみたいにデータが閲覧できればどういう数値なのか一発で分かるのだが、残念ながらここは現実。
そんなマネは出来ないのであった。
もしかしたらガチャから出てきてできるようになるかも、と脳によぎる。
できるようになってたまるか。
まあ、普通の指輪だ。つけてみれば効果は分かるだろう。
そう思って、左手の人差し指に嵌めてみた。
……うん?
なにかが変わったようには感じない。
試しに手を振ってみる。
なにも速くなったようには感じない。
もしやと思って、軽くダンジョンまで走ってみたが全く差がわからない。
指輪を外して同じように折り返してみたが、全くわからない。
……どういうことだ?
後日。兄を使って正確な測定を行った。
やり方は単純。一定の距離を走らせるだけだ。
その結果、わかったのは、この指輪を身に着けたものは大体5%ほど素早くなるということだ。
実際タイムがそれぐらい縮んていた。
……ほとんど体調差で消えるな。
やっぱり誤差じゃないか。これ。