突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
割符。それはいわゆるパスワードのように唯一性を証明するために使われる代物だ。
名の示すように、2つに割った板を片方ずつ所有し、確認時に組み合わせることでそれが偽物でないことを証明するようになっている。
物理的なトークンであるため、合言葉のような情報漏洩などの問題を回避できるのだ。
今回はその割符が出てきた話だ。
お手伝い妖精のシャチくん(サメ)が「シャークメイド」に進化していた。
ちょっと目を離したスキに、というかどれが原因でそう変化したのかまるでわからない。
自動生産される液体経験値やら、機械サメの神やら、クラスシステムやら、モンスターの類が変化するには理由付けするのに十分な代物がゴロゴロしているせいだ。
それに、なんだこの美少女は。
ほっぺたもちもちである。
青い髪の毛サラサラである。
サメめいたしっぽはつやつやである。
でも美少女になったからって食性変わらないんだよな……。
こいつの主食インチネジなんだよな。
まあ、人型になって手伝えることが増えたのを喜んでいるからまあいいか。
それはおいておいて、今日の分のガチャを回そう。
R・割符
出現したのは大きなお盆ほどもある巨大な割符だった。
円盤状で中央に分割するための複雑な線が入っているのが見て取れる。
そして、その線で分割されるためか精密な筆致の彫刻が彫り込まれていた。
飾っておくだけでも芸術作品として評価されそうなそれは、割符としてガチャから出てきたものである。
と、いうことはなにかに使う道具というわけで。
でも割符。
普通は合言葉代わりに半欠けづつを複数人で分けて持ち歩くようなものだ。
完全に揃っている以上、その役割も果たせまい。
とりあえず分割してみるか?
そう思ってひっぱってみるが、なかなか外れない。
固定されているというより、なにか磁石のようなもので張り付いているのだ。
私の筋力では引き剥がせない。
魔法使えば剥がせそうだが、そこまでするのは癪だな。
なのでシャークメイドに進化したシャチくんに引っ張らせた。
ジリジリとその割符の距離は離れ、そして磁力が途切れると同時にパリンと音を立てる。
シャチくんが手に持っていたのは2枚の割符だった。
2つに分割された割符、ではない。
完全にくっついた状態の割符が2枚、である。
割符としての役割果たせねえじゃねえか!
なんのためにあるんだよこれ!
後日。兄は割符を分割し続け……その結果、分割するごとに絵が変わることがわかった。
分割されるたびに生成される側の割符の彫刻はどうも元々の彫刻と同一ではないようなのだ。
引っ張った側の彫刻にぴったり合う造形になっているが、その文様は様々。
表現される四季が入れ替わっていたり、ドラゴンが犬になっていたり、そもそも生き物の造形がなくなっていたり。
兄はそれを分割し続け、気に入った造形のモノを自分の部屋に飾ったのだった。
ああ……うん……たしかに美術品ではあるな……。