突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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SR ホテル壷中天

 壺中天。いわゆる別天地や異郷、桃源郷なんかの類である。

 壺中天の場合は壺の中に世界が広がっているもので、天国のような場所であるとされる。

 また、長時間いると時間の速度の違いで時代に取り残されるという竜宮城のような話もあったりなかったり。

 今回はその壺……のようなものが出た話だ。

 

 

 

 危惧していたあの異能組織の動向だが、分裂しかかっている。

 現状抱えている魔法技術を開放するか、秘匿するか。

 組織を秘匿すべきか、解散すべきか。

 そういった諸々で内部紛争の状態にあるようなのだ。

 

 最大の存在意義を失った組織は、必然脆い。

 それまでにどれだけ腐敗しているかにもよるが、穏当に解散できる組織など存在しない。

 存続するために利権を貪ろうとするのが、組織というものなのだ。

 それが権利団体や政治団体であれば、特に。

 

 これ近いうちに分裂して異能的な内戦が始まるんじゃなかろうか。

 暴力ありきの世界の組織であるため、その手段も必然的に暴力になり得る。

 国内外の有力者にも関係者がいるからまとまらないだろうしなぁ……。

 

 裏でゴソゴソやってる分にはまだいいが。

 表に噴出すると洒落にならん……。

 

 まあそんなことはおいておいて、ガチャを回そう。

 

 SR・ホテル壺中天

 

 出現したのは、高さ2メートルほどのスノードームのようなものだった。

 台座は金に似た素材で作られているように見え、透明な球体の中に豪華な洋館のようなものが置かれている。

 その全体的な作りは工業品でない手作りのスノードームがこんな感じになるだろうか。

 ()()でかすぎるが。

 

 そしてガチャの景品である以上、ただのスノードームではないはずだ。

 そう思ってガラスに触れると、水面に沈むようにガラスの中にへと手が貫通した。

 

 あー……はいはい。

 そういうやつね。

 この間ボトルシップが出たばかりじゃねーか!

 

 まさかのネタかぶり。

 どうせ中に建物が広がっているパターンである。

 それに2メートルもあるとなれば、こちらのほうが劣化版だと言わざるを得ない。

 いや、船とホテルならホテルのほうがいいか?

 微妙なところだ。

 

 そう思って。

 ガラスの中にへと身体を潜り込ませるとそこには。

 

 ずらずらと並んだ美男美女のホテルマンたちの姿。

 彼ら彼女らは私を見て、こう呼んだのだった。

 

 ようこそいらっしゃいました、オーナー、と。

 

 

 

 後日。いや後日じゃねえな。

 あのあとホテルマンたちに誘導されてホテルの設備を紹介されつつそのまま一泊したのだが。

 ホテルから出たら1分も経っていなかった。

 スマホの時刻合わせもして日付を再確認したから間違いない。

 

 あのスノードーム状のものの中の時間は加速されていて、しかもホテルとしての完全な機能を備えているのだ。

 それは……まあ……つまり……なんだ?

 マヨヒガの類かなにかか? 鶯浄土かなにかか?

 しかも私にホテルの経営権があるらしい。マジか。

 

 いやまあでもネットも完全に繋がってたし、温泉も食事も最高だったし……。


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