突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
クラウドシステム。ネットサービスの一種で、サーバーサイドで処理を行うことでどの端末からでも同じサービスを受けられるシステムである。
ネット越しにサービスを利用できるようになり、端末の性能に縛られない展開が可能になり、ネット回線の向上にともなってその利便性も拡大し続けているのだ。
今回は、もっと困るものが出てきた話だ。
基部の街で魔法を研究しているグループのメンバーのうちの一人が、VRMMO内の魔法スキルの一つ、錬金を現実で再現した。
この錬金という魔法、めちゃくちゃ単純で石を別の金属類に変換するというものすごい雑な魔法で作りも荒い魔法なのだが。
なんと変換先を指定できないのだ。
石をランダムに別種の金属類に変換するという代物であり、ゲーム的にはあまり有効ではないものではある。
もう魔法の出現から資源の価値は下がりつつあるが、これの存在はもっとヤバいと言えよう。
ほとんど無から資源を作れてしまう。
つまり暗殺者だ。
研究を潰すために暗殺者がダース単位で送られてくる可能性が出てきた。
この街、治安維持が大変すぎる。
街の研究室のそこかしこで現在の政治バランスを粉砕しうる技術が開発されてるの、まともなら気が狂う。
現状でもディストピアレベルで巡回させてるのにさぁ……。
また警備を増やす必要がありそうで困る。
さて、今日のガチャを回そう。
SSR・ARクラウドエンジン
出現したのはあのVRMMOと同型に見えるサーバーだった。
私は即座に身構え、スマホのカメラを向けて挙動を探る。
写真……反応なし。
動画……反応なし。
スマホに不可解なアプリ……なし。
VRの時は、後から確認したがサーバーを写真に取るだけでもアプリが配信されていたが、これはそうではない模様。
調査系の魔法でも使いたいが、対象となったものの情報を全部脳にブチ込む仕様の魔法しか持ち合わせがない。
ガチャの景品に使うと死ぬ。
死にかける。
回復魔法で復帰できるけどまともに情報が取れないから使えない。
とりあえず触ってみるか……と、サーバーに触れた瞬間。
サーバーの表面に光が走り、私の目の前に、ウインドウのようなものが開いた。
ホログラムのような、ARのような。
感覚的にこれはARだな。
視点を揺らしてみてもゆるく追従する仕様、視野に余計な光が入ってこないことから、なんらかの方法で脳か意識かに投射されている。
あと名称もARとなっているし……。
で、なんだこのウインドウは。
おそらくはそのサーバーの操作コンソールなんだろうけれども。
いくつものアプリアイコンのようなものが並んでいる中に、一つ見覚えのあるものが混ざっている。
VRMMOのゲームアイコンじゃねえか!
え、なに?
これでもはやスマホにすら縛られなくなるの!?
後日。兄がいじくり回した結果。
なぜかあのコンソールからVRMMOの管理権限を取得した。
現状、機神によるバックドアからの制御・管理だったため、使えない機能がいくつもあったのだ。
どうも完全にサーバー間で情報をやり取りしているようで、このARウインドウからゲームを弄って新規イベントやら新スキルの追加やらマップの拡張やらが行えるようになっている。
というか本来はこれとセットで運用する代物だったのか?
それに……このサーバー。
クラウドの名を冠する通り……と言っていいのか。
指定した利用者の意識に対して、ARのアプリを配信できる。
何を言っているのかわからないって?
簡単に言おう。
誰でもどこでも、特別なモノなしでAR表示のスマホが使えるようになるんだよ!
しかもアプリで機能拡張できてしまう代物。
VRMMO内の魔法スキルもアプリとして一部実装されている始末。
なおVRMMOはプリセットアプリとして入っていた。
う、うわー……。
真面目に起動できねえ。
VRヘッドギアはまだモノがあるからマシ、とかそういう評価になってしまう程度にヤバい。
データも処理もすべてサーバー側で行っているから全配信してしまえば世界を牛耳れる。
代わりに人類はほぼ無限の演算力を手に入れる。
うぃんうぃんで世界は幸せに包まれる。
もちろんダメだな。
ヤバすぎて封印するべき。
そうするべき。