突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
チャーハン。炒めた米の料理のことである。
中華の定番であり、家庭の定番であり、男飯の定番。
手軽に作れる割には、様々な方法が考案されていたり、いろんな具材が入れられていたり、奥深い料理だ。
今回はそのチャーハンが出てきた話だ。
件の異能を
精神系魔法による記憶捜査、痕跡追跡系スキルによる情報確認、過去視による直接視認。
これらを組み合わせることによって、通常の犯罪ならばどんなものでも暴き立てることができるだろう。
そう、普通の犯罪ならば。
だがそうではなかったのだ。
精神系魔法で記憶を探ろうとした
痕跡追跡を行ったものは、一切それを見つけることができず。
過去視に至っては、魔眼のようなものによって迎撃され、捻れて胴がちぎれた。
えっ……マジ?
一介の犯罪者程度が、このレベルの情報防御を行っているとは思えない。
つまりはまあ、この異能をばらまいている真犯人がいて、そいつが徹底的に情報を隠しているということだ。
ええー……。
また怪人じゃん。
困る。
これ以上は機神による支援か、さらに強化した個体を用意するか。
そもそも情報を手に入れるのが先か。
異能自体の解析は一向に進んでいない。
ただ、R・アワリティアとは別の代物ではあるらしい。
系統が近ければ話は早かったんだけどなぁ。
まあいいや。
今日のガチャを回してしまおう。
R・ラーメン屋のチャーハン
出現したのはチャーハンだった。
八角の皿に半球状に盛られたチャーハンである。
米がきれいなきつね色に染まり、細かく刻まれたチャーシューと卵が混ぜ込まれている。
鮮やかなネギが彩りを添えていて、見た目だけでもそれが美味であることを訴えかけているのだ。
だが。それらですらこのチャーハンにとって余分である。
それは、匂い。
強烈に本能に訴えかける匂い。
いまだかつて嗅いだことのないような、それだけでそれが人生で食べることのない旨さの代物であることがわかるような。
その香り高さ、眠っている人にかがせれば一発で目を覚ますだろう。
というか匂いが強すぎる。
あまりに強すぎて、罠を疑うほどだ。
ベイト剤、毒餌のようなものにすら思える。
皿を手にとって見れば、細かな湯気がくゆりと立ち上り、それがまだ出来立てであることをみせ、そしてそれによって更に匂いが広がる。
異常な匂い。
一切しつこくもなく、強すぎるわけでもない。
ただ強烈に感情と空腹を刺激する
絶対食べたらやばいだろこれ。
ただで済むわけが……わけが……。
気がつけば私の手はレンゲを握っていた。
だめだ、意識を持っていかれる……。
どこから取り出したのかもわからない。
影でいつの間にか作ったのかもしれない。
恐る恐る、チャーハンにレンゲを近づけ……そこで止まった。
自制心が働いたわけではない。
単に、固かったのだ。
まるでひとつのモノのように……というか、ひとかたまり。
そう、つまり。
これ食品サンプルじゃねえか!
後日。兄が
食品サンプルであるチャーハンを、である。
強引に分解してみせ、一欠片を流し込ませた。
その結果。
食べた
そう、あのチャーハンの匂いを。
ついでに言うと、その匂いのものは
やっぱ罠じゃん!