突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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サメもどき

 ダンジョンから生まれるモンスターもまた生態系を形成する。

 植物のようにエネルギーを生み出すモノ。

 そのエネルギーを生み出すモノを運び、版図を広げるモノ。

 そしてそれらを喰らい、より強大な存在にへと成長し、脅威を退けるモノ。

 ダンジョンが形成するそれはいささか無機的で工場のそれを思わせるが、確かに総体として生き物の営みなのだ。

 

 今回は兄のダンジョンが次の段階にへと進む話だ。

 

 

 

 

 

 

 ついに兄が目標とする数のヒヒイロカネを揃えた。

 というのもヒヒイロカネが増えればそれだけ生産設備に使えるヒヒイロカネが増えるのであとはサメもどきを大量に用意してひたすら生産し、生産したヒヒイロカネで生産設備を用意し……を繰り返すだけでどんどん生産速度が上がったのだ。

 現在ヒヒイロカネを生産するサメもどきが5000体。うち半分がロボサメもどきに置き換えられているためとにかくにぎやかである。

 

 というか、サメもどきと呼んできたが実はあれには正式名称があるのだ。

 サメ亜人(シャークゴブリン)という亜人系のモンスターとサメ妖精系のモンスターの最下層モンスターだそうだ。

 その能力は最下層にふさわしく愚鈍。

 優れているところがあるとすれば妖精種らしくなにかモニュモニュすると分裂して増えるところだ。

 それも最下層のモンスター故に一度に10倍になる。

 

 増えることにコストが殆どかからないがダンジョンの戦力としてもかなり微妙な上、普通はほとんどダンジョンに利益をもたらさない。

 あくまで兄は人海戦術の人員として使えているだけで、個としての性能が要求される場面ではどうあっても足手まといにしかならないのだ。

 

 話を戻して。

 兄がヒヒイロカネを揃えてまで手に入れたかった商品とはこれだ。

 「冒険者のトーテムポール」だ。

 

 ダンジョンは理屈はわからないが地脈と侵入者を餌とする。

 これまではちょくちょく私を呼びつけて必要なだけの何かをかき集めていたのだが、それではサメ亜人(シャークゴブリン)を数匹生産することしか出来ない。

 そういう意味では雑に落とし穴の上に配置しておいた湧きスポットはかなりの量の餌を稼ぎ出していたらしいが、冒険者の石像を必要とするほどの量は稼げなかったのだ。

 

 冒険者のトーテムポールは、どういう原理かは全く不明だが、ダンジョンの中に配置すると今回兄が必要とする何かを生産し続けるのだ。

 何かって言い方分かりづらいな。ダンジョンポイントとか魔力とかとでも呼ぼう。

 冒険者の石像はとりあえずエントランスに雑に並べておくだけでダンジョンポイントをもりもり生産する。

 

 エントランスに雑に積み上げられた322体のトーテムポールが異様な存在感を放っている。

 これによってあのサメもどき達が次の段階に進化が可能になった。

 これは今夜あたりに兄はやるな。

 

 

 案の定私が寝ようと思った時に兄に呼び出された。

 ダンジョンの心臓部である砦の天守部分に怪しげな機械が絡まるように配置されている。

 というか創作でもめったに出ないめちゃくちゃ太いパイプが根っこのように広がっているあのタイプの機械だ。

 何であるんだよ。

 

 また天井部にはダンジョンのコアと思しき、あの罠作成キットの宝石がむき出しになっていた。

 くそ、あそこじゃリムーバー届かないじゃないか。

 

 兄は準備が整ったという。

 不敵に笑う兄だが、こういう表情をしているときはだいたい周囲の人間はろくな目に遭わないのだ。

 おそらく今回は……。

 

 外に配置されていたサメもどきがどんどん削除されていく。いや、回収か。

 これから行われるモンスターの進化のための薪にされるのであろう。

 その証拠に、目の前にある円筒状の……今日日創作じゃ見ないタイプの円筒状の機械の中に謎の液体が溜まっていっているのだ。

 そして、その液体の中心にどんどん光が集まっていく。

 それは心臓の鼓動のように明滅し、どんどん光が強くなっていく。 

 

 光の中から現れたのは、機械の体を持つ2mほどのモンスターだった。

 ワイヤーを束ねたような筋肉が全身を強烈に締め上げ、尋常ならざる怪力を生み出していることが一目で分かる。

 身体のいたる所にヒヒイロカネと同一と思われる金属の鱗がその身を強固に守り、そのままでも魔剣の一撃を防ぎそうなほどだ。

 そして鋭いブレードアンテナの生えた頭部は凶悪なサメの造形をし、これまでのボンクラな目をしたサメもどきとは明らかに違う目をしている。

 知性を感じさせる目。 

 

 サメ機人(シャークボーグ)の誕生だ!

 

 ……、サメ機人(シャークボーグ)

 訳がわからない事になっているが、これには理由がある。

 これまでの合成種の情報によって、より優秀なモンスターを生み出されたのだ。

 ツタが生えたやつ! ロボサメもどき! サメ鬼人! お前らは無駄じゃなかったよ……!

 いや、どうしてその情報がこうなるのかわからないが、出来たものはかなり強そうである。

 

 現状戦力がないと、発掘したダンジョンの調査もままならないから仕方ないけどさぁ……。

 なにかまた1つ、取り返しのつかない状況に進んだような気が私はするぞ。

 ガチャポンマシンが出現したあの日のような……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。まあ案の定というか、そうなって当然というか。兄が発掘したダンジョンの第二層を蹂躙した。

 自己判断能力を獲得したサメ機人(シャークボーグ)たちは、トラップを自ら踏み抜き破壊することで第二層の機能をほぼ無力化。

 配置されていたボスと思しき巨大なスケルトンをその怪力で引きちぎることによって撃破した。

 

 あれ~? そいつらそんなに強いの……こわ……。


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