突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ポスター。壁や柱などに貼り付けて使う広告媒体だ。
その特徴は大量に印刷、掲示が可能なことで、その表現も1枚の紙であることから絵画、イラストレーション、写真など様々な手段が利用可能だ。
また量産が可能なため、個人の部屋でのインテリアとして壁に貼り付けるなどの用途にも利用できる。
そのため、公私問わず日本のあらゆる場所で見ることができる掲示物だといえよう。
今回はそのポスターが出た話だ。
なんか兄がビデオカメラを持ち込んできた。
スマホの台頭で中古市場に流れて値段が下がったビデオカメラのようで、かなりしっかりした作りのものだ。
一方でストラップが千切れていたりする。
見立てどおり中古だな。
大体用途はわかっている。
発掘ダンジョンの記録のためだろう。
紙媒体とスマホを使ってこれまで記録をつけていたが、それだけだと物足りなくなってきたのだ。
もっと広範な記録がつけたくなったに違いない。
なにかと遺跡として情報量が多い場所なので、普通にいるだけでも圧倒される。
人とは異なる生物の文明の産物だろう。
ガチャを回しているとそういうのにぶち当たることが多いので麻痺している節があるが、このダンジョンには特にその痕跡が多いのだ。
そういう物に兄が興味を示すかはともかく、何かを見出しているのは間違いない。
対策チームとか立てかねないから警戒が必要そうである。
持ち出さずに済む予感がしない。
考えていても仕方ない。
今日の分のガチャを回しておこう。
R・ポスター
排出されたのは細長い筒だ。フィルムに包まれているところから見て、巻いた状態のポスターだと思われる。
下地の紙がすでに漆黒というほかない黒に染まっていて本当にこれはポスターか? という疑いがむくむくと立ち上る。
いやでもポスターって書いてるしな……。
とりあえず封を開けずにそのまま振ってみた。
普通の風切り音。
ここは普通のようだ。
固くもないし柔らかくもない、黒い紙の割には普通の質感。
開封してみると、そこに描かれていたのは荒野とガンマンの姿だ。
夕日をバックに芸術性の高い構図で描かれているそれはそのまま部屋に貼っても良さそうである。
タイトルは“紅の荒野”。マカロニ・ウェスタン、といった風情の映画のポスターだ。
“紅の荒野”。ささっとスマホでググってみてもヒットしない。
あー……。
存在しない映画のポスターなのかこれ。
想像以上に普通……いや、存在していることがおかしいとはいえ、これ自体は普通だと言える。
どこか適当に貼っておくか。
後日。実験室の扉に貼っておいた“紅の荒野”ポスターが、別のポスターになっていた。
しかもよりによって選挙ポスターに変化していたのだ。
自由共産党の杉浦吉敷という人物の物らしいのだが、そんな名称の政党は知らないし、そんな政治家はスマホでググっても出てこない。
それに表情が微妙にイラッとする。
なんだそのめちゃくちゃに胡散臭い笑顔は。
しかしこのポスター、印刷が日替わりで変わるポスターなのか。
想像以上にろくでもない景品だった。