突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R タバコ

 タバコとはナス科のタバコという植物の葉から作られた嗜好品だ。

 葉を加熱し、葉に含まれる成分であるニコチンを煙として吸い込むことが最もポピュラーな嗜み方であり、現在それに最も最適化された形である紙巻タバコが普及している。

 またニコチンは中枢神経を刺激し、覚醒感や鎮静効果があり、これによって多幸感や認知能力の向上、アドレナリンの分泌などを促す。

 当然ながらそんな効果のある成分に依存性がないはずがなく、更には葉の燃焼によって生じる様々な毒性を持つ成分を煙として吸い込むのがタバコだ。

 刺激の足りなかった時代ならばともかく、今の時代ならば喫煙者の数は減り続けるだろう。

 

 今回はそのタバコが出た話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クソ。兄があの発掘ダンジョンの何に興味を示したのかわかってしまった。

 魔法だ。

 なんでかわからないが、あのダンジョンは魔法としか言いようがない技術で動いているのだ。

 あの壁や罠の殆どがその魔法技術によるものであり、兄はそれを調べ尽くそうとしている。

 

 たちの悪いことに兄はすでに魔導書を手に入れている。

 それがどれぐらい当てになるかわからないが、すでに利用法を見出しているのだ。

 兄なら、魔法の正体を暴くぐらいやりかねない。

 それがどれだけ危険かを理解せずに、妙に鋭い嗅覚だけで望む結果を得てしまう。

 

 いや望んでいるかどうかも怪しい。兄は楽しければそれでいいから。

 これは放置していると不味いような気がする。

 ヤバい人間に気まぐれで社会を変革して破壊する力が与えられてしまう。

 さりとて、人の話を聞くような人間でもない。

 マジでどうするかな……。

 

 考えていても仕方ない。

 とりあえず今日の分のガチャを回しておこう。

 

 R・タバコ

 

 出現したのは青いパッケージのタバコ1箱だ。

 パッケージ自体はコンビニなどで見かけるタバコと大差がない。

 いや、よく見れば違うだろうが、タバコとして平均的なデザインだと言える。

 最も銘柄はスマホで検索しても一つも出てこない。

 

 しかし、タバコかぁ……。

 年齢の関係上吸うわけにはいかないが、多分吸うことで効果を発揮するタイプだと思われる。

 えー? どうやって試そう。

 

 とりあえず一本取り出して火をつけてみた。

 ダメだったらサメもどきを借りて吸わせてみるつもりだ。

 ……ていうか、なんか煙多くない?

 目に見えて煙の柱が立ち上っている。

 太い上に、なんか濃い。

 

 けっむ!

 思わず顔を背けてくしゃみをしてしまう。

 何だこのタバコ!

 煙の量が多いぞ!

 もっと減れ!

 

 と念じたところ、煙の量が減った。

 は?

 煙が私の意志を汲んだ?

 

 頭の中で煙をくねらせるイメージを浮かべ、指を通してタバコへと伝える。

 そのイメージに沿って、煙がくねる。

 ああ、なるほど……。

 

 このタバコは煙を操れるタバコなのか。

 ヤバい量の煙も、そのためにある、と。

 

 ところで隣に置いておいたりんごジュースが茶色に染まってるんだけど、もしかしてこのタバコ相当毒性強い?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。兄が煙を球状に固めて持ち歩いていた。

 タバコの先に煙を球体のように溜め、それをスケルトンにぶつけて攻撃をしていたのだ。

 その膨大な煙の量から、実体を持つかのようにダメージを与えている。

 それにあの煙は相当な毒性があるようで、生き残ったスケルトンも毒に冒されたように倒れている。

 それに煙を縄のように編んでスケルトンを縛り付けるとかやっている。

 

 あぶねえタバコだな、おい。


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