突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R スピーカー

 スピーカーは電気信号を音声に変換する装置だ。

 元が電気的な信号であるため、電気的に大きさを変更でき、小さな音を大きな音へ変換することができる。

 その構造は単純極まりなく、コイルに電流を流すことで中に入れられた磁石が振動するというものだ。

 この振動を張り詰めた紙などで受け取ることで音に変化するのだ。

 構造が単純なだけに、スピーカーはその音を拾って反響させる筐体など、様々な工夫が施されている。

 

 今回はスピーカーが出てきた話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄が魔法の杖を銃型に改造していた。

 銃と言っても、杖に粗製の銃床(ストック)をつけ、ハンマーとトリガーをつけただけという構造ではある。

 しかしハンマーで杖の底につけられた火薬を叩くことで振動によって魔法を発振、射撃するという構造だ。

 火薬は100均で売っているキャップをつけているだけではある。

 だが杖を機能させるにはそれで十分だったようだ。

 

 杖から発射された魔法はまっすぐ飛ぶ。

 弾速こそ私が全力で投げた野球ボールほどでしかないが、飛ぶのは魔法。

 炎の塊や当たると凍りつく何かや、電撃の球だ。

 危ないったりゃありゃしない。

 

 で、この魔法の杖銃がすでに4本出来ていてサメ機人(シャークボーグ)が装備を固めている。

 再装填は火薬キャップを交換するだけ、最悪振り回しても使える。

 雑な作りの割には性能がいい。

 杖を振り回すよりも命中率もいいあたり、兄の嗅覚の鋭さが伺える。

 

 魔法の原理も、なんで杖を使えば飛ばせるのかもわかっていないのにこんな改造を食らわせるあたりも、嗅覚が鋭いのがわかって嫌になるな。

 

 まあいい武器があれば兄がヤバい怪我するリスクも減ろう。

 それはいいことだ。

 だが魔法技術は捨てろ。

 

 さてガチャガチャ。

 回したくね~。

 

 R・スピーカー

 

 出現したのはアンティークな雰囲気の大型スピーカーだ。

 木製の筐体がでかく、重い。

 またコンセントケーブルと音声の 3.5ミリのステレオミニプラグが伸びている。

 なんで3.5ミリミニプラグなんだ……?

 イヤホンなどに使われるプラグではあるが、大型のスピーカーで使うには電圧とかの関係で採用されないもののはずだ。

 

 まあいいか。

 とにかく機能を試すためにスマホに端子を繋いで音を流してみる。

 

 ……?

 あれ? 鳴ってる?

 全く音が聞こえない。

 しかしスピーカーの表面は振動しているようで、指で軽く触れると振動のようなものが伝わってくる。

 動いていないわけではない、はずなんだよな……。

 

 頭をかしげる。

 振動はしている。

 だが音は出ていない。

 どういうことなんだ……。

 

 そう、頭を抱えようとして手で耳を覆った時だ。

 わずかに音が聞こえた。

 ええー……?

 

 そっと耳を両手で塞ぐ。

 すると先程よりはっきりスピーカーからの音が聞こえるのだ。

 え?

 どういうことなの?

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。あのスピーカーは「マイナスの音量」で音を出すスピーカーだった。

 何を言っているのかわからないが、私にもよくわからない。

 なんでも、音を妨げた状態だと聞こえる音になっているようだ。

 ようは耳を塞いだり、扉を閉じたり、隣の部屋だったりすると音が聞こえてくるということだ。

 

 兄は出力を改造して、音響爆弾にした。

 そして発掘ダンジョンのモンスターハウスとなっていた部屋をスピーカーの最大音量で破壊。

 スピーカーから発せられるマイナスの轟音によって部屋の内部にいた大量のスケルトンを粉砕したのだ。

 

 なおスピーカーはそれで壊れた。

 兄ぃ……。


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