突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R 詫び石

 特定のプロセスを経ることで、それ自体が変化したわけでもないのにその名や価値が変わる物がある。

 重要なのはそのプロセスを経ることであり、その名を冠することではない。

 特にそれが謝罪において使用されるものならなおのことだ。

 

 今回は何をしたいのかわからないものが出た話だ。

 

 

 

 

 

 ガチャを気に入っている兄から毎日のように回すことをせびられるのだが、私は可能な限り回したくないと思っている。

 基本的にろくでもないのだこれは。

 Nのブランド品でも微妙に役に立たず、実質ゴミが増えるだけであり、部屋に余計なものが増えるのを好まない私にとって害悪ですらある。というかそうなったのは兄のせいだ。

 しかし回さないと今度は兄は機嫌を損ねるのでそれはそれで面倒くさい。棒金まで受け取っている関係上、逆らいづらい。

 それがらぽん。出てきたカプセルからは、

 

 R・詫び石

 

 と書かれた紙とともに、虹色に光り輝く石が一つ入っていた。

 

 しかし何を詫びているのか全くわからない。

 本当に詫びる気持ちがこのガチャにあるのなら私の前から姿を消しているはずなのだ。

 ついでにいうとバグ修正などが行われた記憶もない。

 筐体が動かせるようになったのかと思って押してみたがやはりびくともしない。

 

 というか何の石だよコレ! 見るからにソーシャルゲームのガチャ石なんだけど!?

 しかも一つって! どうやって使うんだよコレ!

 

 混ざり合わない虹色に光り輝き、現実に存在しない奇妙な色彩を放つその石はただあるだけで奇妙な存在感がある。

 

 正直なところ、これがどういうものか検証する手段すら思いつかない。

 トンカチで叩いてみたり、ヤスリで削ろうとしたり、ノミで砕こうとしてみたのだが、びくともしないのだ。

 異常に硬度の高い石として大学にでも寄贈しようか……? いや、こんな得体のしれない石を渡したら面倒なことになるな。

 

 

 

 

 後日。私が興味を失ったあたりで兄が石を持ち出したことが判明した。

 兄が樹脂とストラップをつけて鞄にくくりつけていたらしいのだ。

 それっぽいデザインのため、何らかの“石”に心当たりがあるとそれのガチャ石に見えなくもない。話の種の一つのためにそんなことをしていたらしいのだが……。

 

 なぜ伝聞調かというと。これを兄の病室で聞いているからだ。赤信号を無視して突っ込んできたトラックに跳ねられた兄は、詫び石を“消費”。無傷で生還した。

 無傷だったとはいえ、兄はトラックに跳ねられたため体中を検査のために入院。

 その病室で石を勝手に持ち出したことを聞かされているわけだ。なんでだよ。

 

 兄に怪我がなくてよかったとは思うが。そうかぁ、それで、無傷、かぁ……。


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