突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ミートハンマーとは、肉を叩いて筋を切り、柔らかくする調理器具である。
最もハンマーであるため叩けば叩くほど肉は薄く広がっていくのが難点だ。
繊維をほぐすことが目的のため、叩く面がギザギザとしている場合が多いが、ギザギザにあまり効果がないのか、そのまま平たいモノもちょこちょこ存在する。
今回はそのミートハンマーが出た話だ。
兄が冒険者ギルドを使って何かを企んでいる。
というのも、冒険者ギルドには雇用と呼ばれる機能が存在していることが判明してから、冒険者ギルドでなにか怪しい作業をしているのだ。
雇用機能は、一口に言えば冒険者NPCを作り出す機能で、王道RPGの3作目にあった酒場のシステムから来てるんじゃないかと思われる。
いや、RPGから来ていると考えないとあまりにゲーム然としすぎていてそんなのありえないだろとしか思えない。
兄が怪しい作業をしているというのは、その冒険者NPCの作成と削除を繰り返していることだ。
一回行うたびに相当の金額が持っていかれるが、使い道のない金貨が大量にあるためにそんなことは気にしていない模様。
目の前で金貨の入った袋が消えていくの相当怖いんだが。
しかし冒険者ガチャをすることでなにか特定の能力を持った冒険者を作ろうとしている。
一体何の目的のためにそんなことをしているのかわからないが、どうせろくなことではなかろう。
さてガチャでも回そう。
これ、一日一回は回さないといけないのに回しても何も気分転換にならないのほんと詐欺のようなガチャだ。
R・ミートハンマー
出てきたのは金属製のハンマーだ。柄まで一体に金属で作られたもので、大きさから見ても調理用のもの。
うん? これで兄の頭をやれと?
いや、そういうわけではないはずだ。
このガチャにそういう“思考”と呼べるものは存在しない。
くだらないジョークを飛ばしてくることはあるが、それはあくまで景品の範囲だ。
つまりこのハンマーは普通の調理器具。
いや、普通ではない。
すでに普通ではなかった。
ミートハンマーは、基本的に肉を柔らかくするために使われる道具だ。
叩くと繊維が千切れてやわらかくなる、そういう乱暴な理屈の調理器具であるが、それをこのガチャが解釈するとどうなるか。
結果は見てのとおりだ。
テーブルの天板が柔らかくなって垂れてしまっている。
試すために適当にテーブルに振り下ろした私が悪いけどさぁ。
こんなでろんでろんにしなくても良くない?
これがさぁ。
グミかって勢いでちぎれる。
もうぶっちぶちよ。
ヒレ肉より柔らかくなるの、逆にミートハンマーとして使いづらくないかこれ。
まあ私の家でミートハンマー使うほど分厚い肉を調理することはないんだが……。
後日。兄がドラゴンの肉をシチューにするのに使った。
冒険者ギルドへの依頼で手に入れていたドラゴンの肉だが、これが鋼のように固く、妖刀でしか切断出来ない上、薄切りにしても歯では噛み切れないという恐ろしい肉だったのだ。
兄はこれをミートハンマーで滅多打ち。
でかい塊肉を、殴る面が麻雀牌ぐらいしかない小さなハンマーでポコポコしながら柔らかくし、シチューの材料にしていたのだ。
最も、これで叩いた肉は柔らかくなりすぎるのでステーキには出来なかったのが残念なところなのだが、兄はそこをカバーするためシチューにしたのだ。
ドラゴンの肉がトロットロに解けたシチューの味はというと。
鉄臭かったです……。