突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R 液体経験値タンク

 経験値。RPGなどで見られる、戦闘や冒険の経験を数値化したものである。

 これが一定値まで上昇することでレベルが上昇し、能力が向上するシステムのものが多い。

 また異なるタイプとして、貯めた経験値を一定値支払うことでレベルを購入するタイプのゲームも有り、これはアクションRPGなどで見られる。

 どちらも共有して言えるのは、それがキャラクター個人に割り振られた経験であり、代用が利かないということだ。

 当然である。経験という形がないものを概念化したのが経験値なのだから。

 

 今回は液体の経験値を貯蔵するタンクが出た話だ。

 何を言っているのかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄がカヤックを使って発掘ダンジョン一層の壁に突っ込んでものすごい勢いで振動していた。

 不自然に壁の角に突き刺さったカヤックの上からにこやかにこっちに手を振る兄の胡散臭さがヤバい。

 その様と言ったら、ゲームのバグで壁にはまり込んだキャラクターのようで、下手に触るとおかしな方向に吹き飛ばされるような気すらする。

 というかなにがどうなったらそうなるのかわからん。

 

 元々サメ機人(シャークボーグ)にカヤックを牽引させることでより速度を出して移動する方法を模索していたらしいが、なにがどうして壁にはまっているのか。

 確かに発掘ダンジョンは描いた地図を見る限り、空間の接続の正しさに疑問がある。

 明らかに同じ地点に違う部屋が重なっていたりするのだが、微妙に上がったり下がったりしているだけだと思っていた。

 だがこのカヤックの挙動を見る限り、若干いびつな空間の拡張が行われいているようだ。

 

 サメ機人(シャークボーグ)にカヤックを引き抜かせた(その過程でサメ機人(シャークボーグ)は両腕がもげた)兄は即座にその壁の破壊を命令。

 破壊された壁の先には隠し階段が鎮座していた。

 なるほど……カヤックはこの階段に流されて空間の隙間に落ち込んだのか……。

 

 さて、兄が階段の先に探索へ行ったのでガチャを回そう。

 面倒事はさっさと済ませるに限る。

 

 R・液体経験値タンク

 

 出現したのは、昔ながらの牛乳を入れる缶に似た形状のタンクだ。

 外部から中身が分かるように側面の一部が切り取られ、ガラスと置き換えられている以外はほぼほぼミルク缶である。

 しかもその見かけに対してかなり重い。

 液体が大量に入っていればその重量も納得ではあるのだが。

 

 そう、液体が入っていれば。

 中身には少しだけ液体が入っているのだ。

 そんな重量があるようには見えないがなにしろ液体なのでそんな印象はあまり意味を持たないだろう。

 一応、傾けて重心を移動させてみても中身の液体が重い手応えはない。

 

 というか、中に入っている液体がこれがまた、毒々しい透き通った緑色なのだ。

 なんだこの得体の知らない液体は。

 絵の具を溶いたとしてもこんな透き通った緑にはならないだろう。

 それにわずかに光っているような気もする。

 

 見るからにヤバそうな液体だ。

 え、どうしよ。

 このタンク、蓋が歪んでいて放り出しておくとそのうち気化しそうで怖いんだが。

 

 本当にヤバそうだったときはダンジョンに埋めるか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。兄がサメ機人(シャークボーグ)に中身を飲ませた。

 こいつ正気か?! と思ったのもつかの間、飲み終えたサメ機人(シャークボーグ)の頭の上に「LEVEL UP!!」のエフェクトが出現。

 マジ? これそういう液体なの?

 

 それに機嫌を良くした兄が、タンクを担いだまま発掘ダンジョンに突撃。

 発掘ダンジョンに湧くスケルトンを蹂躙し、中身の緑色の液体を2倍にして帰ってきた。

 

 え?

 それ戦闘で増えるの?

 なにそれこわ。


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