突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが?   作:内藤悠月

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R 盾

 盾。攻撃を防ぐ防具の1つである。

 基本的に盾は攻撃を受け流すために使われる。

 真面目に正面から攻撃を受けてしまうと、持っている腕がイカれてしまうためだ。

 そのため構造が工夫されていて、武器をいなすことが出来るようになっている。

 二重の素材で出来ていたり、そもそも攻撃を受けたら割れることを前提に薄く作られていたり、だ。

 また大きく紋章を入れることが出来るため、騎士の誇りとして掲げられることもあったという。

 あと担架としても使われた。

 

 今回はその盾が出た話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 発掘ダンジョン11層は、もはや異世界である。

 抜けるような空が広がり、また端が見えない平原が広がっている。

 ところどころに森が見える程度で、地平線の先まで獣道のような街道が続いている。

 地平線が見えていることから崖のような壁があったそれまでの層とは一線を画する広さだと言えよう。

 

 この広さをどうにかするために兄が用意した物がある。

 自転車とそれ用のキャリーである。

 ごつい体をしているサメ機人(シャークボーグ)に自転車を漕がせ、自分や荷物はキャリーに乗せるという手段だ。

 キャリーのスペースの狭さには実質アイテムボックスとして扱われている宝箱を乗せることで強引に解決。

 サメ機人(シャークボーグ)は乗る用の自転車は廃棄自転車から調達してサメ機人(シャークボーグ)に修理させるという徹底ぶりだ。

 

 と、ここまで良い手段のように書いているが。

 実際は1回でダメになったのだ。

 問題はシンプルで、サメ機人(シャークボーグ)の重量に自転車が耐えられなかったのだ。

 行って帰ってくるだけでフレームがひしゃげ、タイヤはスポークが断裂する始末。

 まあ金属の塊だからなサメ機人(シャークボーグ)

 

 さあてガチャを回そう。

 

 R・盾

 

 出現したのは、円形の盾だった。

 地面に少しだけ突き刺さり、その盾は直立していた。

 金属を重ねて作られているのが見て取れる作りで、装飾からもこれが高級な盾であることが分かる。

 また縁に何らかの留め具と思しきパーツが付いていて、妙に不安になる。

 強引に作り上げたが、売れなかったので装飾を足して高級路線にした、みたいな雰囲気があるのだ。

 いや、作りはしっかりしているので元もいいものではあろうが……。

 

 とりあえず持ち上げてみるか。

 私は正面から両脇を掴んで持ち上げ……普通に重い。

 私の貧弱な……いや一般的な学生の筋力では持ち上がらない。

 まあ金属製の円盤だ。そういうこともあろう。

 昔の騎士も筋力おばけだしな。

 

 しかしここに放置しているのもどうかと思うし、そもそも盾である以上、使い方は構えることだろう。

 せめて持ち手を持って試す必要がある。

 

 裏に移動し、持ち手を握ろうとして。

 私は前につんのめった。

 持ち手がすり抜けたのである。

 まるで幽霊のように。

 

 あ、ヤバ……、と思った矢先。

 そのまま身体が盾をすり抜けて、前転する形になった。

 

 うん?

 裏からかがみ込んで手で触れてみる。

 すり抜ける。

 はじめからそんな物品そこにありませんよ、と言わんばかりに手がすり抜けるのだ。

 幻覚かなにかを触っているような虚無を掴むような手応え。

 

 えっ。

 持ち手側から接触したものを透過する盾?

 まじで?

 超技術だけど、持てないじゃん!

 盾構えられないじゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。兄がサメ機人(シャークボーグ)に構えさせた。

 強引に盾の両脇から掴ませることで、フリスビーかなにかのように握らせているのだ。

 確かに円形だからフリスビーのように持てば持てなくもないが、盾としての役割を果たさないのでは……?

 と思っていたら、盾を透過して杖で魔法を撃ち出す、パンチさせるなどの動作をして盾の使い方を模索していた。

 兄がぼそっと、これ、せめてサメ機人(シャークボーグ)に遠隔武器があればそこにかぶせて使えたのにな……とぼやいていたのが印象的だった。

 こいつ……。


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