突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
傘。雨や雪、日差しなど、頭上から降り注ぐものを遮り直接浴びないようにする道具だ。
一般的には雨具として使われ、雨で頭や身体が濡れないように利用される。
元々日傘として使われていたのが技術開発の結果雨除けとして使われるようになったとされている。
和傘、洋傘、また用途によって構造が異なることはなく、持ち手とそこから伸びる中棒、傘布、それを支える骨で構成されている。
今回はその傘が出てきた話だ。
青い光を放つコーラだが、どうも飲むと動作を加速する効果があるようだ。
今も倍以上の速度とキレでカサカサと動いている兄を見るとそういう効果があると考えるしかない。
自販機から出たジュースの中にもそういう効果を持ったポーションがあり、サメもどきで試した時にこういう動きをしていたような気がするのだ。
自販機から出ていたものと比べると加速する効果の強さが高いようで、それによって異様な速度で動いている。
こういうのをなんというんだっけか。
RPGだと、ヘイスト効果? だったかな。
行動順が変わるせいで戦術が大きく変わってしまうやつだ。
あと兄の身体が青色に光ってるけどまあ大丈夫だろう。
さてガチャでも回して面倒事を終わらせてしまおう。
R・傘
出現したのは一般的なビニール傘だ。
割としっかりした作りのもののようで、コンビニに売っている安いビニール傘と比べても生地が分厚い。
持ち手は普通のプラスチック製で、青色をしている。
総じて、ホームセンターで売ってそうなビニール傘、といったところだろう。
開いてくるくるといろいろな角度で眺めてみるが、おかしなことは見当たらない。
てっきり、ビニール越しになにかおかしなものが見えるとか、違う世界が見えるとか、虹色に光り輝くとかそういうのを想像していた。
あとはあれか。
傘の内側から水が滴るとかそういう、存在を否定するようなの。
この間N・ナイフで全く切れないのが出たからそういうものを疑ってしまう。
しかし、待てど暮らせど効果が現れることはない。
推測が間違っていたのだろう。
傘だから、開けば分かると思っていたのだが。
だって傘って開いて使うものであるから、当然開いて使っていればそのうち異常な動きをするだろうと。
だが結局なにも見えてこないわけで。
やっぱ雨が降らないとダメかな。
ここのところ、雨は夜にしか降っているところを見ていないからいつ試せるか、といった感じもある。
そう思いながら、傘をさしたまま一歩踏み出した。
ふわりと浮かび上がる身体。
焦りから空を漕ぐように足をばたつかせるがどんどん浮かび上がっていく。
へ、あ、は?
浮かび上がるどころか、空中で静止すら出来てしまう。
なんというか、水の中に浮かんでいるような。
不思議な手応えで空中を浮かんでいる。
歩くよりも遅く、水を泳ぐよりも遅く。
しかしそれでも空中を浮き歩いている。
なんと説明していいかさっぱりわからない。
さしていると、空中を歩ける傘ァ~~~?
なんだよそれ!
どこから来たんだよ!
後日。兄が傘を持ったまま平泳ぎをしていた。
そうはならんやろ……そうは……。
微妙に心もとない浮力を分割したスリッパで強引に補って空中を泳いでいる。
最も、その泳ぎの中、片手に傘を持ったままというアンバランスな状態を強制されているため、フォームは崩れまくっている始末。
いつものむちゃくちゃだな……と思っていると。
突然ドローンを掴んで高速移動し始める。
浮力によって兄の身体から重さが失われたために、ドローンの推力を速度に使えるようになったのだ。
ハチの如く機敏で気持ち悪い動きをする兄。
こいつめちゃくちゃだな……。