突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
割引クーポン。主に集客のため、配られるチケットである。
小冊子についていたり、チラシとして折り込まれていたり、レジで手渡されたりするものであり、利用することで通常よりお安く買い物できるというものだ。
一見お得に見えるが、企業側が集客のために無料で配布しているものなのでそんなにお得じゃなかったりするアレである。
今回はその割引クーポンが出た話だ。
どこで使えるんだよ。
週末の3連休で、兄が発掘ダンジョンから帰ってこなかった。
というのも、寝袋という究極に近い休息具と、不眠不休で動き続けられる
目指しているのはおそらく20層。
論理的に考えれば、そこにショートカットとなる階段が見つかるはずであり、そこを利用して戻ってくるつもりなのだ。
しかしその計画で本当に連休明けに戻ってこれるのかという疑いはある。
12層以降は未だ未踏の領域であり、層をまたぐごとに領域が広くなっているのは間違いないのだから。
いや、私が心配しなくてもそういうのは考えている人、のはず。
考慮した上でアクセルを踏む人間なので巻き込まれる方は本当に大変なのだ。
まあいいか。
どうせちゃんと帰ってくるだろ。
あの人、死線だけは絶対に超えないからな。
異常なほどに見極めのセンスが鋭く、引き際は鮮やかである。
ガチャでも回そう。
R・割引クーポン
出現したのは、ホチキスで留られた紙束である。
細長い形をしていて、たまに見るクーポンの束とそっくりである。
というか、中身をパラパラとめくってみると割引クーポンの束だ。
えっ、なんのクーポン……?
紙に書かれている企業のロゴは全く身に覚えのないものばかりであり、どこで使えるのか全くわからない。
なんだよWに人魚が絡み酒してるみたいな形状のロゴは。
それに、クーポンの内容もやばすぎる。
人魚バーガー、4万5000円。
正直これだけでめまいがしそうだ。
こんなもの食べたら一口で不老不死になってしまう。
というか、半端に人型をした生き物を食べるのは倫理的にどうなんだ。
しかもクーポンの割引で90%オフしてその値段だ。
それにショゴスフライ、3800円。
神話生物を揚げ物にしようとは恐れ入る。
本当に食っていいものか疑わしすぎる。
切り分けて揚げられているために見た目はオニオンフライに似ているが、その内側にあるものの黒さが衣に滲み出ていてろくでもない色彩を生み出している。
他にも世界樹のかき揚げバーガーとか、火の鳥ナゲットとか、ファフニールブラッドドリンクとか……。
あまりにもアレなラインナップに絶句する。
しかも高い。
誰向けの商品だよ……。
どこで使えるんだよ……。
後日。発掘ダンジョンから帰ってきた兄がデリバリーオーダーした。
は?
クーポン束の裏に電話番号が書いてあり、試しにかけてみると実際に繋がったそうなのだ。
正直なところどうしてそんな危険そうな電話をかけたのかと小一時間問い詰めたいところだが。
目の前でショゴスフライを食われるとその気も失せる。
よく食えるなそんなもの。