突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
映画やゲームには、ビームやレーザーを剣の形に束ねたものが登場する。
昔の大作映画に登場したそれはSFのガジェットとして象徴的だったためにまたたく間に多くのSFに取り込まれそれぞれの作品で様々な理由付けを持って登場するのだ。
最も、そのどれもが悲しいかな、現実には不可能としか言いようがないものである。
光も量子も直進し、形を留めることはないからだ。
きっとそれが可能となったならば、おそらくその剣は光らない。
現実にはロマンの欠片もないな。
今回はその光の剣が出た話である。
兄が暇なのかわからないが、
チョコペンみたいな形状のものを使って、ヒヒイロカネを盛り付けながらデザインを弄っているのだが。
兄のデザインセンスがクソすぎるせいでたちの悪い宗教の絵か、あるいは子供が気合を入れて家中をインクまみれにした痕跡、と言った具合。
長時間見ていると気分が悪くなりそうですらある。
それを複数用意してやがるので完全に狂っている。
完全に奇行のそれである。
なんのためにそんな物を用意しているんだ。
問い詰めると返ってきたのは、かっこいいだろ? の一言。
こいつマジか?
クソダサいよ!
そう伝えると致命傷を受けたかのように動かなくなった。
10分後には再起動していたのでこれは特に弱点にはならなさそうである。
兄を仕留めそこなったからガチャを回しておこう。
SR・光の剣
出てきたのは金属製の筒だった。
長さ15センチ程度、太さは麺棒ほど。
親指あたりになにか電源のスイッチのようなものがあり、彫りの浅い握りに沿って握り込むとちょうどいい位置に来る。
……というか。
映画のアレだー!
4作目以降のほうが評判が良かったり、配給会社が変わったあたりから評価が怪しいことになったりしたアレに出てくる光る剣だ!
テンションが上がる。
上がるのはいいが、同時に警戒する。
これは科学的にありえないものの最たる物である。
電源を入れて振り回したら周囲一体を問答無用でズンバラリしてしまう可能性のほうが高いのだ。
うっかり確かめずに兄に渡してみろ。
ご近所様が廃墟と化すぞ。
どこまでも伸びることを警戒して、垂直に筒を構えながらスイッチを入れる。
ヴォン……という音と共に伸びる光。
その光は青白く輝いていて、そして1メートルほどの長さで先端が丸くなっている。
ただ持っているだけだと言うのに、その光は熱い。
見かけは長いわけではない。
だが……と思いながらゆっくりと振り下ろしてみた。
片手持ちで握りにくく、手を滑らせそうである。
振り下ろしきると同時にヴォンと音を立て、見かけどおりに接地した先の地面が焼き切れている。
あ、見た目通りなんだ……。
思わず振り回して遊びだしそうになる。
……が、これは危険物。
思いっきり熱線が出ていて熱いのだ。
うっかり身体のどこかに当たってしまうとそこで溶断されてしまう。
振って遊ぶだけならおもちゃでいい。
やはり現代社会は安全を突き詰めているな、とおかしなタイミングで実感するのであった。
後日。兄が光の剣を使って未来予知をし始めていた。
妖刀「鏡写し」を左手に持って、鍔をかちゃかちゃと鳴らす瞬間に光の剣を組みあわせているようで、その精度はかなり高い。
他にも、光の剣を持った右手から念動力のようなものを放つなど、流石に人外としか言いようがない能力を使い始めている。
いやおかしな使い方をして、妙な能力を会得するのはいつものことではあるのだが。
なお、兄はその能力で宝くじを買っていた。
数字を選んで買うタイプのやつである。
こ、こいつ……!