突然部屋にガチャポンマシンが出現して、しかもめちゃくちゃ邪魔なんだが? 作:内藤悠月
ビーチチェア。主に海やプールサイドで利用される、寝転がって使用するタイプの椅子である。
主に水場で利用するために座面が乾きやすい布や、濡れても問題ないプラスチックのような素材で出来ている。
海やプールの店舗側で設置してある場合は完全な固定式のものが配置されているが、個人で購入できるものは持ち運びしやすいように折り畳めるようになっていることが多い。
通常、日差しを避けるためのパラソルと飲み物を置くためのテーブルとがセットで運用される。
今回はそのビーチチェアが出てきた話だ。
案の定というか、なんというか。
兄の23層攻略は行き詰まっている。
結局船で移動することを諦めて、固定拠点として島を改造する方向で行くようだ。
飛行能力のある戦力がいくつかあるため、そのモンスター達を島に派遣して調査していく方向に切り替えたようなのだ。
兄もサメのきぐるみを着込んで飛ぶことで島から島への移動をしている。
自身の護衛のために飛行能力のある
しかし生産コストが妙に高いらしく、実際に量産されたのは空飛ぶホオジロザメだ。
あれなら
兄もよくあんなのが飛んでる横を一緒になって飛べるね!?
さてと、ガチャを回しておこう。
ろくでもないものが出ませんように……。
SR・ビーチチェア
出現したのは椅子だ。
寝転がって使用するタイプの椅子で、主にプールサイドなどで置かれているものだ。
座面は布張り……というかメッシュ生地が張られていて、これまた弾力に富んでいる。
一方でフレームは完全に固定されており、折りたたんで運ぶなどの行為は不可能のように見える。
とりあえず座ってみる……が、特に変化はない。
身体を包み込むような包容力があるわけでも、座るのを拒絶してくるわけでもない。
普通だ。
固定式なのに座面が布、というのは珍しい組み合わせかもしれないが、そこまでだ。
しかし、まあ実験室のうららかな陽気の中で、それなりにいい椅子であるこれに座っていると眠くなるな。
小説でも読むか……。
私は、
そう、私が今確かにいるこの場所は夢の中だ。
眠りにつく前までに読んでいた小説の舞台であるイギリスの都市の中、カフェテリアの椅子で目を覚ました私は、ここが夢の中であると理解した。
結局あの後小説の読みかけのまま寝落ちしたのだが、その瞬間にここで目を覚ましたのだ。
いや、夢の中だから目を覚ましたという表現は不適当か?
まあいいか。
夢の中だと自覚していることと、夢の中なのに意識がはっきりしていること、このことがわかればいい。
視界の先に古い英国式の町並みが広がっており、その建物のあちこちに歯車がはみ出ている。
眠る前に読んでいた小説の舞台の特徴だ。
なるほど、あのビーチチェアは夢を見せる……のか。
ふーむ。
小説の舞台となっている場所に夢の中で行ける、というのはなかなか楽しい……のか?
ちょっと観光がてら、探索してみるか。
……あちこち歩きまわってみたが、人っ子一人いなかった。
マジ?
後日。兄が発掘ダンジョンの写真を眺めながらビーチチェアを使っていた。
しかもそれで23層から先に進むための階段を夢の中で見つけ出し、実際にその位置に下層に降りるための階段があったのだ。
夢の中では生き物が出現することはない。
どういう理屈かはわからないが、何度か試した結果そう結論づけるしかなかったのだ。
ということは、発掘ダンジョンの写真を使えば、安全にダンジョンの内部調査が行える。
と考えたであろう兄は、あっさりと実行した。
実際それで見つけているんだから相当である。
夢の中だとしても、出来る移動手段は徒歩しか無いから結構面倒なはずだが。
なに? 夢の中だと水の上を歩ける?
うるせえ。