今回天夜くんは若干出番少なめです。
スタート直前
プルプル
ピッ
「おー修。いまどこだ?」
「ボーダーの作戦室で、次の対戦相手の対策を練ってましたけど…、」
「遊真も千佳ちゃんもいる?」
「は、はい。全員揃ってます。」
「んじゃ、ランク戦の第3ブースこいよ。今からバトルロイヤルすっから。」
「はい…?バトルロイヤル…?」
「おう。相手は迅とタチウオ、ニノに蒼也、んでもって弓場っち。」
「す、凄い面子じゃないですか!一体なんで…?」
「詳しい説明は後だ。もう始まるからな。んじゃ、しっかりみとけ。」
プッ
ふぅー。
…正直言うと負けるかも知らん。
オペレーターが付いてねぇ今回、基本的にカメレオンやらなんやらの奇襲系を警戒するやつが多い。
しかも一対一においてそれぞれが特化したやつが多すぎるのと、同じタイプのサイド・エフェクト持ち…。つまり迅がいる。
基本的な俺の攻め方としては相手が攻撃手なら攻撃手寄りの万能型で攻める。相手が射手なら射手寄りの万能型。ニノは例外だけども。
今回、一番めんどくせぇのは何を隠そう、迅と弓場っち。
なぜなら、この二人に
弓場っちに関しては乱戦で落とす、もしくは落とされるのを待つしかねぇ。タイマンでよーいドンになると
迅に関しては、タイマンでやっても乱戦でやってもしょーじき変わらん。それほどあのサイド・エフェクトは驚異だ。てかそれ抜きにしてもアイツの
それほど駒としては、
天夜が見る彼らへの評価は大衆の評価…、A級部隊が見る評価とさほど相違はない。
しかし、何を隠そう。この場で最も驚異なのは神島天夜。
自身は全く思っていない。が、周りの下馬評においては
『神島天夜の勝利』
この結果が揺るぎないものとなりつつある。
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「さぁ!始まりました。バトルロイヤル形式で行われる混合戦!!今回、MAPの選択権は神島隊長にありましたがって…、こ、これはっ!!」
「森林地帯…。しかも、環境状況…、濃霧ですね。」
「そんな環境状況あったのね。」
「神島隊長が昔からよく使うMAPの1つですね。環境状況濃霧とは初めて見ますが…。」
「しかしこのMAP…、なるほど!そういうことか。」
「気づいた?嵐山くん。」
「ええ…!これは中々にいやらしいというか…。」
「どういうことでしょう!東隊長!説明をお願いできますか!?」
解説陣3名は天夜の考えを大方読み取る。
「…基本的に森林地帯というMAPですが、最大の特徴として、
「しかし…、今回のMAPですが…、環境状況が濃霧という理由から、神島隊長は、その遭遇しづらさを増幅させた…ということでしょうか?」
桜子の推測は正しい。元々癖のあるMAPがあまり選ばれないランク戦において、B級のオペレーターである彼女がその答えを見出だしたことは、彼女の普段の勤勉具合が見てとれる。
「考え方は合ってるわよ?桜子ちゃん。でも…、天夜さんは、ああ見えて、かなりの戦闘狂よ?ね?嵐山くん?」
「…あの人は凄いです。ほんとに…。はい。」
「それはどういう…?」
「ま、今は置いときましょ♪」
閑話休題
迅がかなり前に言っていた《地獄のポイント稼ぎ》というのは覚えているだろうか。
あれを説明させてもらうと、
天夜が個人戦ブースの一室を占領し、ネカフェ状態*1にした。それが忍田本部長にバレ、ペナルティとして一週間の防衛任務、ソロランク戦禁止と、5000点の罰点が課せられた。
その処分期間を終えた瞬間、正確には1時間と43分という驚異的な速さで、天夜は個人のポイントを罰点前まで戻した。
何を隠そう、嵐山准もその被害者である。
というか、ソロで上位の実力を持つ者たちは全員一回はポイントを貪られている。
今回、参加している天夜を除く五名もそれにあたる。
若干…、いやかなりそれを根に持っているのが二宮。
という裏話を知るのは被害を受けた者と東さんのみ。
「と、いうことは…、環境状況を濃霧にした理由は、遭遇しづらさの増幅ではない?」
「…半分正解…と言ったところですね。まぁ、見ていれば分かるでしょう。」
あの頃の天夜が帰ってきたのか?
そう思う東の表情は、少し微笑みを持っていた。
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ザッザッザッ
戦闘狂、太刀川慶は堂々と歩いている。
濃霧を意に介さず、いるであろうという直感のみで歩を進める。
「さーて、誰と最初に逢うかな~。」
「それは…、分かっていて言っているな?太刀川。」
彼の眼前には、二宮隊隊長、二宮匡貴。
彼もまた、戦闘狂である。
「お、二宮か~!お前とやんのも久々だな~!」
「…レーダーを見れば分かるはずだが?」
「いや~。あんまり普段見ねぇからよぉ。」
「…よくそれでA級一位の隊長を名乗れているな。」
「まぁな~。強いからな、俺。二宮よりもランキング上だから。」
「…あ?」
「…ん?」
「アステロイド」
「旋空弧月」
「あーっと!?ここで太刀川隊長、二宮隊長!戦闘開始!!唐突に始まってしまったぁー!!」
「完全に太刀川が変なこと言ったんでしょうね。」
「聞いてなくても分かるわ。」
犬猿…、と言うには些か語弊がある。
しかし、仲良しこよしではないというか、そもそもの相性があまり良くない2人は
目の前の強者に対し、笑みを浮かべる。
2人の戦いの肝はシンプル。
太刀川が二宮との距離を0にすることができれば太刀川の勝ち。
二宮が太刀川との距離を保てれば二宮の勝ち。
勝敗を決めるのはこの一点のみ。
「さぁさぁ!太刀川隊長の猛攻!時折、旋空弧月を交え、怒濤の猛攻!!これには二宮隊長、距離を取る!!これは二宮隊長、若干不利か!?」
「いえ、互角…、少し二宮に分がありますね。」
「ええ、そうですね。」
「今、攻めているのは太刀川さんですが、もう少し距離を取られてしまうと、二宮さんの攻撃に、一切手を出せない状況に陥ってしまいます。それに、一対一ではないこの状況、取られやすい駒なのは、継続的に攻撃しなければならない太刀川さんなので、二宮さんは、ただ回避に徹すれば良い。」
太刀川の戦法は基本的に攻めだ。
相手の初動を見て取り、迎撃するのも悪くはないが、自らが攻める方が己に合っている。そう考える。
対二宮においてそれが悪手では無いことは確かだが、あと他に4人、相手取るには骨が折れる相手がいる。
自分の攻撃の不意をつかれ、風間の奇襲を喰らう。
それは危惧はしている。
しかし、想定の範囲を越えることはない。
故に彼はひたすらに目の前の敵を追う。
二宮はそれを見て、
理由は単純。
置き弾による擬似的な多対一を引き起こす。
「もう少しか…。ふん、やはり鋭い…がもう遅い。」
「うおっと!!置き弾か!!」
「あーっと!?ここで爆発!!二宮隊長の置き弾、メテオラが炸裂したかー!?」
「チッ!(発動が早かった…。致命傷には至らんか…。そもそも、当たっているのか…?)」
…?…なぜ疑問にした。
なぜ疑惑と感じた。
あの置き弾が当たっているのか当たっていないのか。
それを
なぜ確認出来ていない?
簡単だ。濃霧により、視界が悪い上にメテオラによる爆発。
このメテオラも1発目のメテオラに過ぎない。こんなものに当たるヤツではない…。
そう踏んでいた二宮とは裏腹に、
緊急脱出の光が1つと
聞こえてきた報告に驚きを隠せない。
「あーっと!!ここで太刀川隊長、緊急脱出!!撃破したのは…、えっ!?か、神島隊長!!」
「…!」
「うそっ!ほんとに!?故障じゃなくて!」
「…。」
嵐山、加古は驚きを隠せない。2人の戦いだったはずが突如別のベクトルからの攻撃に、1人が緊急脱出したからだ。
だが、東は、驚愕の表情を浮かべつつ、2人とは違う観点を考察する。
「まぁ、詳しい話は試合終了まで置いておきましょうか。」
「どういうことだ…?」
バカな!何故、あの人の名が出てくる?
二宮は、たった今起きた現象に驚きを隠せない。
しかし、すぐに切り替え、敵を捜索する。
「ふぅ…。きついなぁ…。けどまぁ、まだまだ行くぜ。」
神島天夜は不敵に微笑む。
はい、以上です。
ちょっと短めですが、区切り的にここでね…。
ということで、また次回ー。