ありふれるはずのないホムンクルスが世界最強 作:オーシャンビューバー太郎
「お前は…」
普段の状態へと戻ったアタランテ。正気を取り戻したようだ。
彼女の視線の先には剣で体を支えている少年の姿。
「…アタランテ、俺は、貴女の願いを美しく思う。だから、貴女の夢を、俺なんかでは不安と思うかも知れないが、俺に手伝わせて欲しい。一度は明確な悪となった俺でも、やり直したいんだ。」
そう言って彼は手を伸ばす。肩で息をしながら言うことではない。
「全く…韋駄天小僧も、お前も、…」
そして、彼女はその手をとった。
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「アタランテ。」
「なんだ?ジーク?」
「その…すまない…」
「む…?なんのことニ ゛ャッ!!」
とひとつの拳がアタランテの上に落とされ呻く。
「何奴!?って、あ…」
その彼女の真後ろには…
「何を、やっているのだ?アタランテ。」
何やら顔をひきつらせたヘラクレスが後ろに立っていた。
「いや…これには深い、深い訳があってだな…」
そして彼は溜め息を吐き、
「お前のその在り方は私も肯定するし、そう言うところを見てあの旅を共にしていた。…まぁ、今回はこの拳骨(筋力A)で許してやる。」
「ハハハ…サスガハダイエイユウ…」
流石のアタランテも同郷の知人には弱いようだ。
「何はともあれ、被害を最小限に抑えられてよかっt…」
言葉の途中でジークの足がふらつき、
「ジーク!?」
「…ふむ、疲れて気を失っただけの様だ……安心しろ。マスター。私が運ぶ。」
「よかった~お願いね、ヘラクレス。アタランテも行くよ?」
「あ、ああ。」
(アルゴノーツ以来だが、案外、この旅も、楽しいものかもな。)
アタランテは微笑みながら、彼らに着いて行く。今寝ている彼にまたお礼をしなくては、なんて思いながら。
…まぁ彼女にとって頭を抱える事態は少し控えていたりするのだが…これはまた別の話。
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(ここは…)
美しいオーロラの景色。色とりどりの星が瞬く美しい空。
「気が付いたか。」
その声の男は、オーロラの下に佇んでいた。
「貴方は…ジークフリートか?」
男はそれを首肯し、微笑み、
「ああ。元気そうで何よりだ、ジーク。」
英雄。百人に聞けば百人そう答えるであろう、勇ましき立ち姿。
竜殺しの英雄 ジークフリート
奇跡の再会だった。
「剣を振るう理由は、願いは見つかったか?」
あの時とは違う。
「ああ、俺は…」
大切なものが増えすぎたかもしれない。けれど、俺は、あの時よりも成長した。心も、体も。あの時は、ただ必死に、”誰かを守るための力を”と答えた。だが、俺はもう決めた。この信念を、通す。
「俺は、大切な人たちの為の“正義の味方”になる!それが辛い道だなんて分かりきっている!あなたの望むものにならないかもしれない!それでも、こんな子供じみた願いを持ったとしても、この心臓に、貴方に誓う!”守るための英雄”になってみせる!」
「…そう言うと思ったさ。ああ、それでいい。……すまない。お前に、苦労をかけさせてしまうな。」
「そんなことは無い。これは、俺の願いだ。俺の誓いだ。最初はただの義務を感じてやっていただけだが…色んな人と触れ合い、話し、笑いあって、今、俺はここにいる。…貴方の恥にならない英雄に、なってみせるさ。」
「お前は、俺の誇りだ。…テストも合格だ。この力は余すことなく、お前に渡そう。他の英雄達も力を貸してくれるらしいがな。……正直物凄く面白そうな旅なので時々顔を出しに行くかもしれないが、」
英雄は、ちょっとだけ軽口を叩きながらも、次の英雄に手を差し出し、
「では、頼んだぞ。神を名乗るものを殺すことになるだろうが、お前ならきっと俺よりも上手くいくさ。…良き旅路を。」
そして新たな英雄は、その手を取る。
「俺は、もう、迷わない。止まったりなんかしないから。見ていてくれ。たとえ、本質が邪竜だとしても、正義を翳す!…万が一間違えていたら止めてくれるとありがたいが。」
「はは、そうするとしよう。あの時、君を助けていて、本当に良かった。……行ってらっしゃい。」
「ああ、行ってきます!!」
美しい空に、邪竜が正義を抱えながら羽ばたく。明日へと、愛しい人たちを、救うために。
感想乞食してます。何でもいいので。よろしくお願いしまぁぁぁす!