変態ばかりの学園ものエロゲーに転生したからヒロイン全員清楚に調教する 作:ブラックカボチャ
1話 エンドロールなプロローグ
アニメオタクの高校生。
大した特技もなければ、自慢できる経歴もない。数少ない友人とアニメやゲームの話をすることだけが青春の暗い奴。
そんな奴に何の奇跡か彼女が出来た。
ぼくは努力した。少しでもカッコよく見られようとオシャレして、欲しいというものがあれば必死でバイトして買ってあげて、大切にしていた宝物のオタクグッズだってそのために売った。彼女のために、ぼくは何もかもを捧げて、それで幸せだった。
「はぁ?あんたとか財布だから財布!何、彼氏面してんのよ、鏡見たことあんの?オタクがいつまでも夢見てんじゃねーよ、キモいんだよ!」
奇跡なんてなかった。
初めて出来た彼女。
彼女が別の男と仲良さそうに歩いているのを目撃。問い詰めたら出てくる罵倒・罵倒・罵倒。
さらには彼女の本命であったらしい彼氏にボッコボコにされ、財布を奪われた。
あまりの絶望と、情けなさと、惨めさ。
人生最悪の日、ぼくはボロボロの体を引き摺り、朦朧とする意識の中、何とか帰宅しようとして――車に撥ねられた。
ああ、死ぬなこれ。
そう思った時、あまりにも精神にダメージを受けすぎたぼくは、死にたくないとかそんな人生に対してポジティブなことを考えられず、むしろこれで全部終わるとか、そんな風に思っていたと思う。
ただ、一つだけ確実に、何物にも変えられぬ程、強く思ったことがある。
「……ヒロインは清楚であれ……よ」
やっぱりヒロインは、浮気とかしないし、キープもしないし、清楚・清純・清廉潔白でな……い、と―――
◆
姉にパシられて、深夜にコンビニへ買い物に行く弟。悲しいことにそれがぼく、
「ポテチ食べたい、買ってきて」
深夜アニメのリアルタイム視聴のため、待機していたぼくの元へノックもせずにやってきた姉はそれだけ言って帰っていた。理不尽過ぎんか?
まあ、アニメまでまだ少し時間があるし、それならついでにぼくも何か夜食でも買おうと、財布をポケットに突っ込んで外へ出た。
この時代、深夜だからといって真っ暗ということはない。そこそこ明るいし、そこそこ騒がしい。
コンビニで買い物を済まして、深夜の散歩に少しだけ心地良い気分になりながら、鼻唄を歌いそうなのを堪えていると、通りかかった公園で何やら不穏な気配を感じた。
男女で何かを言い争うような声だ。
うわ、巻き込まれたくないな、と思いつつ、ここを通らないことには帰れないので、何食わぬ顔で通り過ぎようとするが、やはり少し気になってしまうのが人間の性。ちらっと目を一瞬公園へ向けるとそこに、特徴的過ぎる銀髪が見えた。
「会長と……用務員さん?」
ぼくの通う高校の制服を身に纏った銀髪の少女なんて一人しかいない。我らが生徒会長、二年生の
名前に掛けてか『聖女』なんて言われるほどに誰からも好かれる優しい人で、その美貌から崇拝レベルのファンも多く存在するくらい。文武両道、容姿端麗、羞花閉月、人を褒め称えるような言葉は大概の場合、彼女に当てはまる程。
確か、学園の理事長の孫娘で、当然ながらお嬢様。こんな夜中に、何にもない公園で、用務員さんと一緒にいるという状況は、まず考えられない人なのだ。
いや、まあ高校に入学してそう経っていない1年生のぼくからしたら、集会で見たことあるくらいで、当然ながら話したこともないわけだから、あくまでイメージでの推察なのだけど。
……なのに、どうしてか強い既視感を感じる。この
縫い付けられたようにその場に留まったぼくの耳に、二人の会話は夜の澄んだ空気を切り裂くように、鋭く正確に届く。
「まさか生徒会長が露出狂とはな」
その言葉がトリガーだった。
一瞬にして頭の中に記憶が駆け巡る。
それはまるで映画やドラマを見ているように、俯瞰した、しかし、己こそが主人公なのだと入り込むような、不思議な感覚。瞬間的にとんでもない量の情報を処理したぼくの脳は、混乱しながらも、得た知識から一つの結論を導き出した。
夜中に誰もいない公園で向かい合う会長と用務員。
ぼくはそこへ全力で駆け出す。
想いが溢れる。これまでの人生で、それこそ
「な・ん・で―――」
声を発すれば、流石にこの暗闇でも二人はぼくに気がつく。振り返る二人。その内、白髪混じりの髪がベタッと貼り付くようになった髪型の男、用務員に向けて拳を振り上げる。
そしてそのまま、下卑た笑みで固まったようなその醜く歪んだ顔面に拳を容赦なくぶち込みながら全身全霊で叫ぶ。
「―――よりにもよって!エロゲーの世界なんだよっ!」
吹っ飛んでいく用務員と、驚愕している会長の顔。視界に広がるそれらは、やはりどう考えても、ぼくが前世でプレイしたことのあるエロゲー(R18)のキャラクターのものだった。
どうやらぼくは、18禁エロゲーの世界に転生していたらしい。
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