変態ばかりの学園ものエロゲーに転生したからヒロイン全員清楚に調教する 作:ブラックカボチャ
「あれ?会長と副会長と……真白君?」
その少年のようなまだ幼さの残る声に振り返れば、そこにはぼくのクラスメイトであり、絶大な女子人気を誇るイケメン、
私服は初めて見たけど、やっぱり意味分からないくらいオシャレだし、首を傾げる仕草があざとく感じないくらいにその顔は整っている。
地毛なのか染めているのかは知らないけど、ショートボブのようなアッシュグレーの髪に、パッチリとした青い瞳がその整った顔を際立たせていて、なんというか男版聖歌さんみたいな美形っぷりである。
これでさらに、世界レベルでピアノが弾けて、成績優秀。指を怪我したら一大事だからと、体育は免除されていて参加していないから運動神経は分からないけど、今の所ぼくが勝っているのは背丈くらいだ。
ぼくもそんなに背の高い方ではないけど、そんなぼくよりさらに頭半個分程小さい。まあ、顔が良いので背が低くても女子からはそれはそれでまた良き、とプラス評価なので実質デメリットではないという。
さて、現実逃避気味に金剛の容姿を若干の劣等感を抱きつつ描写してみたが、そんなことをしても現実は変わらない。コミュ障のぼくにはこの状況を切り抜けられる言い訳なんて、咄嗟に思いつきはしないし、もう詰みである。
金剛の問いかけから、一瞬の静寂が生まれ、その沈黙の中、意外にも口火を切ったのは副会長だった。
「要じゃないか、どうしたんだ?」
その気安そうな口振りは、二人が浅からぬ関係であることを示している。聖歌さん曰く、副会長は男が苦手で攻撃的な態度をとりがち、とのことだけど、そんな素振りもない。まあ、ぼくにはガンガン噛み付いてきてましたけども。
「ボクは自分の商品の売れ行きを見に行こうかとお店に向かうところでしたけど、お二方こそどうしたんです?そちらにいるのはボクのクラスメイトの綾辻真白君ですよね?」
「ああ、実はそこの彼と聖歌はーー」
話題は逸れたりする余地もなくド直球でぼくへと飛んでくる。そりゃこの美男美女空間に取り残された哀れな陰キャぼっちは目立つでしょうよ。やはり正体を看破されていたぼくは自らの学園生活崩壊を覚悟した。
「ーーお友達なんですよ。つい先日、私の落とし物を届けて頂いたので今日はそのお礼ということで食事にお誘いしたんです」
副会長が言おうとしたのを遮って、聖歌さんが言う。
ぼくと聖歌さんが付き合っているというのは、あまりに突然過ぎるし、そもそも釣り合いも取れていないので、嘘にしては無理があった。
聖歌さんの咄嗟の誤魔化しだったとはいえ、もっと良い理由があっただろ、と思ったものだけど、どうやら聖歌さんもそう思っていたらしい。ぼくのことを気兼ねなく接することのできる友人として扱いたいのだろうから、その程度で丁度いいのだ。
副会長には恋人と言ってしまったが、金剛にはお友達で押し通す算段ということか。これが通じれば、ぼくの学園生活崩壊は回避できるかもしれない。
思わぬ光明に、ここで押し通せなきゃ終わりだ、と攻め時を確信したぼくは、混乱した様子の副会長が口を開く前に全力で頷いた。
どうやらぼくは嘘や隠し事が下手らしいので、変なことを言わないように弁解したりせず、頷いて同意をアピールするのがベストと考えたのだ。たぶんそういうのは聖歌さんに
「へー、会長がそこまでするなんて余程大切なものだったんですねぇ。あ、そもそも会長が落とし物なんて凄く珍しいんじゃないですか?」
「お恥ずかしい話ですが、私も落とし物くらいはしますよ」
金剛はずっとニコニコしてるから感情が読みづらい。疑っているのか、納得しているのか曖昧なラインだ。
何か決定打が必要、そう考えていると、矛先は副会長へと向かった。
「じゃあ、副会長はどうして?」
金剛に見えない位置で聖歌さんが副会長の腕を抓っている。合わせろってことなんだろうけど、副会長が冷や汗かきながら頭をフル回転させているのが分かる。
副会長は聖歌さんとぼくが恋人なんだと紹介しようとしてたんだろうからどう答えれば良いんだと大混乱らしい。
「せ、聖歌と男をいきなり二人きりになどさせられないからな!私も来たんだ」
ただ嘘を吐くのではなく真実の一部を切り取って伝える。
咄嗟の言い訳にしては良く聖歌さんの話と整合性が取れていて、納得できるものだ。どうにか捻り出したのか、心なしか副会長もほっとしている。
「相変わらず過保護ですね。もしデートだったら流石に嫌われますよ」
「うぐっ……ま、まあ私だって弁えている」
知らぬこととはいえ、早速トラウマを抉っていく金剛に顔を引きつらせる副会長。なんか今日この人ずっと可哀想だな。まあ、間違いなく一番可哀想なのぼくですけども!
「ねぇ!折角だしボクもご一緒して良いかな、あまりお二人と出かけることもないし、真白君もクラスメイトなのに遊んだことないから、ね」
クラスの中心でわちゃわちゃしているタイプの金剛と、ヒソヒソコソコソ過ごしているぼくとで遊ぶ機会などあるわけもなく、話したことさえあんまりない間柄だ。
なのにここまで金剛が食いついてくるのは、やはり聖歌さんとぼくの関係に納得がいっていないからなのかもしれない。
金剛の問い掛けに、三人は目を一瞬合わせるが、決定権は全て聖歌さんに自然と委ねられた。
あの、アイコンタクトにぬるっと紛れ込んでますけど、話の成り行きで最初から組み込まれてた感じになっただけで、副会長も立場的には金剛と変わらないからね?
「――そうですね、たまには良いでしょう」
聖歌さんの出した答えは同行の許可だった。
そりゃ断っても怪しまれるだけだし、ぼくと聖歌さんが友人である、という今の説明ならば立場的には嘘でもなんでもない。
それなら一緒に来てもらって納得してもらった方が今後の対応が取りやすい。
理由はどうあれ、同行を許可された金剛は嬉しそうに笑うと、何故かぼくに向き直った。
「それでは改めまして、真白君。ボクは金剛要、生徒会で書記を担当しているんだ。ちなみにーー会長とは親戚で、従姉弟同士なんだよ。
まあ、クラスメイトだし有名だから知ってたかな!」
勿論、知らなかった。
◆
要の合流によって四人となった一行は、まず要が元々行こうとしていた『お店』へと向かうこととなった。
綿密に計画していたデートプランが完全に崩壊したことで、行き先について何のやる気も無くなった聖歌。勝手に付いてきただけで目的地なんてない薫。聖歌に全部お任せで何にも考えていなかった真白。
と、最早行動の指針を見失ってしまっていた面々であるため、最初の行き先は目的を持っていた要へと委ねられたからだ。
聖歌と真白の集合場所であった駅前の広場から程近いその店へ向う道中、人混みの中ということもあり、自然と四人はそれぞれ二人ずつに分かれて歩いている。
「……何故、要に綾辻真白とのことを隠した?」
「私と付き合ってることが広まると真白君に迷惑でしょう」
歩調を緩め、あえて真白と要からやや離れたところを歩きながら、薫は聖歌へ訊ねた。
自らにはあんなにもはっきりと告げた真実を、同じ生徒会役員、それも従姉弟である要に伝えない、というのは妙だと思ったからだ。
「その程度の困難を乗り越えられなくて聖歌と釣り合うものか」
神宮寺聖歌という人間はいつだって人を魅了する。
彼女の元には、聖歌が望もうと望むまいと、人が集まり、信頼が集まり、彼女を『特別』とするのだから。
その隣に立ちたいというのなら、その程度の困難は乗り越えて当然。
聖歌の親友であるために努力を惜しまず、常に『特別』の隣に在り続けてきた薫からしてみれば、そう思うことは何も矛盾していなかった。
聖歌も、そういった薫の想いを理解しているからこそ、それを否定しない。
「
否定しないからこそ、薫の考えを変えさせようとするのではなく、『特別』である聖歌の隣に立てるのは貴女だけだと、肯定することで論点を逸した。
「そ、そうか!それなら仕方ないな!」
聖歌の言葉が薫を高揚させる。
従姉弟である要よりも、親友である自分を信頼してくれた。勝手に聖歌の言葉をそう解釈した薫は、手のひらを返して、秘密にすることを了承した。
友を裏切る。
それは薫にとって絶対にありえない、死んでもしないと決めたことである。それ故に、聖歌に秘密にすると約束した以上、もう薫はこれを自ら明かすことはないだろう。
「会長、副会長!はぐれちゃいますよー?」
「ああ、すまない。さあ聖歌、はぐれる前にいこう」
「ええ」
いつの間にか随分と距離が離れてしまっていて、要が振り返って二人を呼んだ。
聖歌達が離れていたことで、ほぼ話したことのない要と二人になってしまい、きまずかった真白が助けを求めるように手を振っている。
真白と要に追いつこうと歩を早めた薫とは対照的に、聖歌は一瞬、その場に留まった。
「……用心が必要なのですよ」
そして、はるか先を見通すような、極近くを覗くような、霞んでぼやけた過去を思い出すような、朧気な瞳で3人を視界に収める。
「……だって要はーー私を心底憎んでいるでしょうから」
雑踏に消えてしまう程の小さな声でそう呟いて、聖歌は3人の元へと急いだ。
金剛要。
神宮寺聖歌の血縁であり、生徒会書記にして、真白の言う『原作』においてーー
ーー『聖女』神宮寺聖歌を下し、生徒会を崩壊させた、『
感想・高評価・ここすき、本当にありがとうございます。
ありがたいことに、とても沢山の感想を頂き、返信が間に合っておりませんが、目は通しているので大変モチベーションになっております。
ここからさらにカオスで怒涛の展開(当社比)となりますので、次話もよろしくお願いします。