変態ばかりの学園ものエロゲーに転生したからヒロイン全員清楚に調教する   作:ブラックカボチャ

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22話 対立と追憶

 

 

「25分13秒……想定していたより随分遅かったですが」

 

姉さん(・・・)の策にまんまとハマったのはボクだからね。サービスだよ」

 

要は聖歌によって真白が誘拐されたことを悟ってすぐに追跡を諦めた。正確には諦めざるを得なかったのだ。真白を誘拐した聖歌の邪魔をするための作戦(プラン)を練ってみたものの、全てにおいて副会長(二階堂 薫)が邪魔だったのである。切り札を切る気はなかった要は、ここは無駄な抵抗は止め、聖歌が目的を達した後に、それがどのような意図で行われ、どのような結果になったのかを知ることに特化した。その結果、邪魔になる薫を撒きここへ現れたため、聖歌の想定よりも辿り着くのが遅かったのだ。

そう、遅かったが故に真白は既にこの場にいなかった。聖歌が残っていたのは要がここへ来るはずだと考えていたからだろう。

 

「真白君なら華彩音に家まで送ってもらっていますよ」

 

「副会長なら適当に撒いてきたんでその辺で彷徨ってますよ」

 

「そっちも華彩音に拾うよう伝えておきますね」

 

行間が吹き飛んだかのようなテンポの会話はこの2人独特のものだろう。要は強く否定するだろうが根本的なところが似ているのである。その会話はお互いに相手の回答や考えを予測しているため傍から聞いていると少々おかしな会話に聞こえる。

 

「……相変わらず、紅茶だけは美味しい」

 

「相変わらず、そこだけは素直ですね」

 

聖歌が手ずから淹れた紅茶は真白ですら味の違いを感じるほどの出来栄えだ。昔から紅茶好きな姉に付き合ってきたために舌が肥えている要も、当然ながらそこに不満はない。素直に称賛を口にしつつ、舌鼓を打つ。聖歌はそれを少し懐かしそうに微笑んで眺めていた。

 

「――綾辻真白には関わるな。あれはボクのなんだ」

 

「無理です♡」

 

一通り紅茶を楽しんだのか、突然口を開くなり辛辣な言葉をぶつけた要に、聖歌は笑顔で即答した。ピキリッと要が顔を引きつらせる。

 

「なんでそこまで真白に執着する?平等に公平に人と接するのが神宮寺聖歌だろ」

 

いつだって平等だった。要が神宮寺家を出るときでさえ、そのスタンスは崩れなかった。なのにそれを覆そうとしている。

 

「『神宮寺聖歌』はそうでしょうね。あなたの『キャラクター』と同様に与えられた役割を果たしているに過ぎませんから」

 

「アンタはそれに忠実だったはずだろ。そうでなきゃいけない。今更、役割を放棄するのか」

 

神宮寺家の次代当主という聖歌の未来は変えようのない決定事項。そのための役割を聖歌は忠実にこなしてきた。

神宮寺聖歌が生まれる前と後では、日本の勢力図がガラリと変わったほどに彼女の存在は大きい。『聖女』に課せられた使命は運命は常に誰かに影響を与え続ける。

 

「放棄はしません。私は『神宮寺聖歌』を受け入れ、その上で『私』として生きることを決めたのです」

 

「御託はもういい。姉さんは、『神宮寺聖歌』はいつもそうだ。いつも、いつも……全く理解できない」

 

次元が違う。同じ世界に神宮寺聖歌はいない。

憧れたことも、慕ったこともあった。恨んだことも、憎んだこともあった。しかしその全ての感情が『神宮寺聖歌』に届いたと思ったことはない。

 

「そうですね。誰も『私』を理解してくれなかった……今までは」

 

悲しそうに聖歌が笑う。そう、悲しそうに、だ。なのにどうしてか要にはそれが恋をする乙女の表情に見えた。

イライラが募る。神宮寺聖歌はそうじゃない。完璧で平等で公平、正しく聖女なのだ。そうでなければ――なんで自分が捨てられなくちゃいけなかったのか。

 

忠告(・・)。これからも真白にちょっかいをかけるなら……()も本気で姉さんと戦うことになる」

 

これ以上奪わせない。自分の何もかもを否定し、捨てたくせに、さらに奪うなんて許せるはずがない。

 

唯一の生きる道標、真白がいるから生きていて、真白のためだけに生きている。

 

この手に残ったこの希望(真白)だけは何があっても奪わせやしない。

 

 

切り替わる。自分の中の『キャラクター』が。

 

神宮寺聖歌の従兄弟、爽やかなイケメンで、ピアノが得意で、成績優秀な優等生・生徒会書記――金剛要から。

 

我儘・傲慢・毒舌・気分屋・自己中・理不尽の性格最低、外見美少女の綾辻真白の親友――早乙女歌成へ。

 

それを聖歌は敏感に感じとった。自身の知らない要の『キャラクター』。それから向けられる敵意・悪意・害意に体が震える。ああ――なんて心地良くて楽しいのだ、と。

 

「おや、ちょっと遅めの反抗期ですか?姉としてはそうした成長もまた嬉しいものですねぇ。ですが――」

 

また昔のように遊べば良い。鬼ごっこをしたときのように、かくれんぼをしたときのように、チェスや将棋をしたときのように。但し。

 

「あなたが私に勝てたことなんてありましたっけ♡」

 

勝つのはいつでも神宮寺聖歌である。

 

ボク(・・)は貴女のことが嫌いだよ」

 

「私はあなたのことが好きですよ」

 

2人は正反対の表情で正反対の言葉をぶつけ合う。

嫌悪感を隠そうともしない歌成と、無邪気に微笑む楽しそうな聖歌。沈黙が続き、先に口を開いたのは歌成だった。

 

「帰る」

 

「おや、良いのですか。何か言いたいことがあったようですが」

 

「ない」

 

「残念です。私としてはもっとお話をしたいのですが……本当の(・・・)あなたともね」

 

聖歌の言葉に押し黙る歌成。自身の『キャラクター』が聖歌の言葉によって乱れているのを感じる。

歌成としては、ここでは何も言わずに帰るのが正解なのは分かっているが、やられっぱなしで亀のように耐えているだけでは終われない。少しでもこの溜まったフラストレーションを吐き出してやろうと、ニッと笑った。

 

レストランのドアを開け、外へ踏み出すと、歌成は聖歌の方へ振り向き、要のときには見せることがないであろう、僅かに頬を高揚させた艶めかしい表情を隠そうともせず、ちろりと舌を見せて言う。

 

「追伸。ボク(・・)は真白と一緒に寝たことがあるぞ。知ってるか?真白は寝ている時、抱きつき癖があるんだ」

 

言うだけ言って、そのまま閉まっていくドア。

静まり返った静寂の中、バタンッ、とやけに大袈裟に閉まる。

 

……は?

 

神宮寺聖歌の観察眼が、今の発言が嘘でないことを見抜く。そう、嘘でないということは真白が歌成と一緒に寝たのは覆しようのない事実であり、真白と一緒に寝るなんてそんなことはまだ聖歌は達成していないわけで。

 

「……とりあえず真白君は監禁でもしましょうか」

 

聖歌が一瞬、危な過ぎる思考に堕ちかけたのを止めたのは、彼女の良心か、常識か、はたまた口にしてる紅茶の効能か。

 

とにかく真白は全く知らぬところで監禁の危機を脱していた。

 

 

 

 

要を見失い泣きそうになりつつ街を彷徨っていた薫はなんとか華彩音に保護され、自宅まで車で送ってもらうことになっていた。

 

「要のやつ、私を置き去りにしたんだぞ!あいつには先輩への敬意というものがないのか!」

 

「まあまあ、薫ちゃん。要君が遠慮せずに接してきてくれるのも、それはそれで良いことだと思うなぁ」

 

そもそもにして、聖歌にゲームセンターで置き去りにされたことは完全に忘れているらしく、その怒りの矛先は要にのみ向けられていた。そんなことは聖歌と共謀して真白を誘拐した華彩音も分かっているはずなのだが、華彩音のルールでは聖歌こそが正義であり法律であり聖典であるため、微妙にズレたフォローとなった。当然、そんなフォローでは薫の怒りは収まらない。諌めようとしてくる華彩音に共感してもらうため、さらなる燃料を投下する。

 

「華彩音姉さんは要が聖歌にナメた態度を取っても許せるのか!」

 

「えっ、それは殺しますよ?」

 

「いや、殺すなよ!?」

 

大炎上した。

神宮寺聖歌信者の中でも過激派の華彩音には行き過ぎた燃料だったのである。いくら生意気な後輩とはいえ流石に死んで欲しいとまでは思わない。この思想が強すぎる従姉妹の前では大人しくしていてくれと願うばかりである。華彩音の目茶苦茶な炎上を見て要への怒りは収まったものの新たな心配事が出来てしまうのだから、薫の苦労体質も中々だ。

 

「では、私は聖歌様の元へ向かいますのでここで」

 

華彩音は現在、大学への通学と神宮寺家への出勤がしやすい立地のマンションで一人暮らしをしているが、幼少期をずっと過ごしてきた実家が、現在も薫の住む二階堂家本家だ。

木造の日本家屋と美しい庭園は夜の暗い中でも月明かりによって照らされ、妖しい独特の雰囲気がある。その玄関で話をしている2人からすればただの実家でしかないのだが。

 

「行ったり来たり申し訳ないな」

 

「いえいえ。あ、そういえば――」

 

何かを言いかけた華彩音だったが、護衛用の携帯端末が震えたことで、はっと意識を移した。この端末には基本的に聖歌からの連絡しかこない。つまりは聖歌から連絡があったことを示す合図だからだ。即座に端末を操作しメッセージを確認した華彩音はピシッと姿勢を正す。

 

「聖歌様の用事が終わったみたいなので、続きはまた今度で!では!」

 

その高い身体能力で薫が何やら口を開こうかとした頃には遥か先にまで走り抜けていた。全速力で車まで向かっている様なので薫が何を言っても振り向きもしないだろう。

 

「お礼を言う間もなかった……相変わらず慌ただしい人だな」

 

戦闘面においてはこの上なく頼りになり、昔から尊敬してはいるのだが、どうにも慌ただしく心配になる薫。歳上の従姉妹を心配しつつも、まあ聖歌に従えている分には悪いことにはならないだろう、と絶大な信頼を寄せる親友に問題を丸投げして薫は実家へ帰宅した。

 

「何か言いかけていたが結局何だったんだろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、聞きそびれちゃったけど、やっぱりあの子、真白君って――昔、薫ちゃんといつも一緒にいたお友達よね?

 

車を走らせながら華彩音は昔のことを思い出していた。

思い返してみれば、いつも誰かの影に隠れているような大人しい女の子だった薫が、今のような生真面目で堅い性格になっていったのも、その友達と離れてからのように思える。

いつも一緒で、無二の親友だった様に思えた。所謂幼馴染みという関係だったろう。それが突然、全く話を聞かなくなり随分経つ。

 

「あんなに仲良かったのに、喧嘩別れしたって聞いてたけど仲直りできたのかなぁ」

 

そんな華彩音の疑問は道を間違えて迷子になった瞬間に消し飛んで消えてしまった。





感想・高評価・ここすき、本当にありがとうございます。
すごくモチベーションになっております。

では、次話もよろしくお願いします。
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