変態ばかりの学園ものエロゲーに転生したからヒロイン全員清楚に調教する   作:ブラックカボチャ

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4話 襲撃の聖女

お怒りのお姉様に、会長を送った帰りに再度コンビニに寄って、買っておいた少し贅沢なアイスクリームを献上することで、何とか生き残って翌日。

未だ昨日の夜に何かあったのかと、疑いの目を向けてくる姉から逃れるように登校した。

 

あれだけの衝撃的な出来事があっても、平日ならば学校に行くしかない。幸いにも今日は金曜日、部活もやっていないぼくは明日から2連休を謳歌出来る。気持ちを落ち着けて、この世界がエロゲーであったことなど忘れてしまえば良い。そうしてしまえば、いつもの日常に戻るはずだ。

 

そんな風に考えながら至って平常通り、山も谷もない学校生活を終えて放課後。

 

「綾辻真白君いますか?」

 

神宮寺聖歌という人間が自身の人気、生徒の崇拝ぶりをどれだけ認識しているのか分からないが、そんな会長の放課後訪問でぼくの日常はあっさりと崩壊した。

 

ざわつくクラスメイト、突き刺さる男女問わずの、なんであいつ?という疑問の視線、中には嫉妬的なものまである。

 

会長がぼくを見つけたのか、ニパッと天使のような笑顔を浮かべ小さく手を振ると、その視線は殺意にすら変化していった。

クラスの陰キャ、教室の隅で静かに暮らしているぼくにはあまりにキツイ。

しかし、このまま教室にいては、会長が突っ込んできて、事態が悪化するのは目に見えている。とはいっても素直に会長の所へ向かえば、それはそれでとんでもないことになりそうだ。

 

静まり返った教室。

 

「真白君、呼ばれてるよ?」

 

爽やかなイケメン、たしかピアノの世界的コンクールで最優秀賞受賞だかの経験も持つ、成績優秀な優等生、金剛要(こんごうかなめ)がその静寂を破るように、笑顔で声をあげたことで、ぼくはいよいよ追い込まれた。悪意なんて一切ない笑顔で言われては、無視するわけにもいかない。そんなことをしたらクラスの女子から総スカンを食らうことは間違いなし。ぼくは死ぬ。大して話したことないぼくのことも下の名前で呼ぶような陽キャLv100と違ってぼくの立場は危うい。

 

会長と金剛、二人の悪意なき純粋なはずの行為が、正に、前門の虎後門の狼となってぼくを襲う。

 

 

「あー、そういえばあれの提出が今日までだったかー」

 

鬼の棒読みになっているかもしれないが、会長は事務的な用事で来たんですよ、という必死のアピール。これでも、会長の手を煩わせるんじゃねぇ、という視線が突き刺さる理不尽。生きづらい世の中である。

 

「ふふ、来ちゃいました」

 

全男子が言われただけで惚れてしまいそうな飛び切り可愛いことを言う会長。下から見上げるように小首を傾げているのがあざといが、極自然にそれをやって、嫌味なく可愛いから女子にも嫌われないんだろう。

 

「会長、一先ず場所を移しましょうか」

 

これ以上ここにいては、クラスメイトからの視線だけで死んでしまいそうだ。今後の平和のためにもこの場を離れるのが最優先事項。

ぼくの提案に、会長は愛らしく、曲げた人差し指を唇に当てながら思考し、そうだぁ!と笑顔を浮かべる。この人、いちいち可愛い動作をしないと死ぬんだろうか。

 

「今日は生徒会はお休みなので生徒会室が空いているんですよ。そこでお話しましょう」

 

美味しいお茶菓子もありますよ、とスキップでもしそうなくらいご機嫌で生徒会室へ向かう会長。ぼくはその後ろを連れだと思われないくらいに距離を空けて付いていく。

 

「どうしてそんなに遠くに?」

 

訝しげに会長が訊ねてくるが、ぼくは頑なに会長の後ろを歩いていた。この人は本当に自分の人気ぶりを理解して欲しい。1年生の異性がご機嫌の会長と並んで歩いたりしたら、次の日、スキャンダルを起こした人気俳優くらい人が群がってくることになる。

 

どうにか会長の追及を回避し続け、生徒会室に到着。尾行している者がいないか入念に確認してから部屋に入る。

 

生徒会室は会社のオフィスのような雰囲気の中に学生らしい温かみのある部屋で、時折可愛らしいクッションやらマグネットやペンなどの小物が、女の子らしさを感じさせる。生徒会役員は大半が女子であるため、自然とそうなったのだろう。

 

「えっと、それで何の御用でしょう?」

 

あまり長居はしたくないので、紅茶を用意している会長を待たずに話し始める。美味しいお茶菓子があるとか言っていたのでここで話を切り出さないとお茶会になってしまいそうだ。会長と二人きりでお茶会だなんて、他の生徒にバレたらどんなことになるか想像したくもない。ここはぼくの平和な学園生活のためにも用件だけ聞いて、さっさと退散しなくては。

 

「後日お礼をするといったではないですか。それに、その言い方だと用がなければ話しかけてはいけないみたいで嫌です」

 

プンプン、という擬音がぴったりな、正に頬を膨らませたような怒り方は大変に可愛らしくはあるが、どうやらこれは長くなりそうだと、ぼくに確信させる妙な迫力があった。

 

「後日って昨日の今日ですよ?早くないですか?」

 

「お礼なのですから早い方が良いでしょう?」

 

その通りなのだが後日という表現から数日後くらいを想像して、何ならこのまま有耶無耶にならないかなーとすら思っていたぼくとしては、心の準備が出来ていないのだ。連絡先を特に教えていなかったとはいえ、まさか教室に突撃してくるとは。

普通に考えたら同じ学校に通っているのだから極自然なことと言えるが、『聖女』『優等生』として振る舞っている会長の行動としては、1年生の男子を訪ねて教室までやってくる、というのは不自然だ。

それこそ、教室がお祭り騒ぎになるくらいには一大事件。ぼくの華麗なる誤魔化しがなければ危ういところだっただろう。

 

 

「あの後どうなったのかも、お伝えしなくてはなりませんし」

 

「あんまり知りたくないんですが」

 

「そういうわけにはいきませんよ」

 

 

怖すぎるので事の顛末はそのまま闇に葬って欲しい。

ふふっと何故か楽しそうな会長であるが、なんかもうぼくには色々バレてしまっているからって取り繕わな過ぎじゃないか?

 

「それに、私が早く貴方とお話したかったのですよ。やはり、ありのままの自分でお話するのは楽しいですね」

 

子供っぽいくらいに屈託なく笑う会長。

そんなことを言われてしまうと、このお茶会から逃れることはもう不可能だ。狙ってやっているのだとしたら、会長は聖女どころか希代の悪女だと思う。




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