とわを送った後、俺は自分の家に帰っていた。
家に着くとすぐさま道場に行き修練を始める。
とわに言っていた野暮用なんてものは無い、あるとしたら日暮神社の人達に晩御飯に誘われた事ぐらいだろうか。
幸いな事に家の蔵にある書物には妖怪や一族の事以外にも世界各地の武術や今は継いだ者もいないであろう古流武術などが記されている物もあった。(殆どの物は傷んでいて読めなくなっていたが)なんにせよ無形を完成させるには十分な量の資料がある、後は俺自身の技術を上げそれ等を使いこなせるようになれば何かを掴めると考えていた。
「無形は決まった型を持たず、それを扱う者によって形を変え続ける……か。」
そう独り言を言いながら修練を続ける。完成系は見えているがそれに至るまでどれだけかかるか………。
「必ず完成させる、今はもう1つの方を使うしかないか……」
修練を終えた俺はいつもより早く蔵に篭り軽く整理をしながらいつも通りに書物を読み漁る。そんなことをしていたらいつの間にか夕方になっていた。蔵から出た俺は外に出かける準備をし日暮神社へと出かける。
頭の中で新しい訓練を考えたりしながら歩いていくと直ぐに着いてしまった、だが何か様子がいつもと違う。
「人の気配が多いいな、それに騒がしい何かあったのか?。」
嫌な予感を感じた俺は階段を駆け上がる、嫌な予感は的中したようで複数人の不良共が神社にいてその内の1人がとわに木刀を振り下ろそうとしていた、その奥の御神木には芽衣ととわの祖母である大ママそれにひいじいちゃんが縛り付けられている。
それ等を見た俺は考えるよりも先に体が動いていた。
不良の1人がとわに木刀を振り下ろす寸前に龍牙は間に割り込みそれを掴んで止めた。
「なんだてめぇは!?」
「龍牙!?」
「……喧嘩をしかけるだけにしておけばいいものを、女子供に老人を縛り付け人質にし、女1人を数人で囲み襲うとは………今度は腕の1本でも折られる覚悟はできているんだろうなぁ!!」
龍牙は叫ぶと同時に目の前の不良を殴り飛ばす、殴られた不良は凄まじい勢いで吹き飛び芽衣にナイフを突きつけていたサングラスをかけた不良をも巻き込み更に後ろの柵にぶつかる。周りの不良達はその光景を見ると怯えた表情をし逃げ始めその隙にとわが3人を解放する。
「これが最後の警告だ……とっととここから失せろ!」
龍牙は鬼のような形相で怒鳴りつけそれに怯えた残りの不良達も逃げ出した。
不良共が逃げ出したのを見た俺はとわ達がいる方向に目を向けると、芽衣が泣きながらとわに抱きついていた。
「お姉ちゃんのバカぁ喧嘩しないって言ったのに!」
「ごめんね芽衣」
どうやらとわが喧嘩をした事に怒っているのかな、とわと芽衣の近くに俺も行くとそっと芽衣の頭を撫でる。
「龍牙お兄ちゃん…」
「怪我は無いか?芽衣。ごめんな、俺がもっと早く着いていれば怖い思いはしないですんだろうに。」
「ううん、龍牙お兄ちゃんが助けてくれたから怖くなかったよ」
「とわも怪我は無さそうだな。」
「うん、龍牙が庇ってくれたからね、ありがとう。」
「気にするな、皆に何かあったら必ず俺が助ける。…そう決めたからな。」
俺がそう言い終わると不意に風が吹いた。それと同時にとわが何かを感じとったかのような表情をする。
「どうかしたのか?とわ」
「なんだか……懐かしい臭いが…」
「臭い?」
辺りが暗くなった頃、唐突に御神木が光始めた。
何かが……来る!俺は芽衣ととわの手を引き御神木から急いで離れる。
そのすぐ後に妙な格好をした女の子2人と下半身が百足の化け物が光から放り出された。
百足の化け物はとわの方を見るとうねうねと体を動かすとやけに嬉しそうな声で喋り始める。
「うふふふふ、歓喜、歓喜、大歓喜〜銀の虹色真珠も揃ったぞよ!、これで我が三つ目全てに瞳が宿る!。」
とわはその近くにいる青い服と鎧を纏った少女を見ると「せつな!」と叫び刀を抜き百足の化け物に斬りかかる。
「馬鹿!無闇に突っ込むな!」
それを見た俺はとわを追いかけるように駆け出した。