菊十文字を抜いたとわは百足の化け物・三つ目上臈に切りかかるもののその刃が当たった瞬間に刀身が折れてしまいその刀身は赤い服の少女もろはの近くに突き刺さる。
「嘘、折れた国宝の菊十文字が…」
「菊十文字だぁ!?刃紋が全然違うじゃねか、偽物に決まってんだろうが!」
「無闇に突っ込むなってのとわ!」
「龍牙、でもせつなが!」
「あの子を助けるにしてもその刀じゃ無理だ、下がってろ!」
龍牙はいつでも迎え打てるようにファイティングポーズを執る。三つ目上臈は龍牙達の方を向くと「銀の虹色真珠を寄越せぇぇぇ」と叫びながら突っ込んでくる。それに対して龍牙は避けるでも、距離を取るでもなく真っ直ぐ三つ目上臈目掛けて走り出した。こちらに走ってくる龍牙を見た三つ目上臈は捕まえようと腕を龍牙に向けて伸ばすがその瞬間に龍牙は加速しあっさりと顔の近くまで接近され拳を喰らわされる。直撃を喰らった三つ目上臈は仰け反りながらも絞め殺そうと百足の下半身を龍牙に向けて伸ばすがそれを避け、更に踏み台にして高く飛び上がった龍牙に更に拳を打たれる。
たったの二発の攻撃、それも妖力で強化した武器でもなくただの素手による打撃をたったの二発受けただけだというのに大きなダメージを三つ目上臈は受けた事に戸惑っていた。
『二虎流金剛・火天の型瞬鉄・砕&金剛の型鉄砕』
瞬発力を生かし一気に間合いを詰める火天の型烈火と当たる部位の筋肉を締め威力を増したパンチを打つ金剛の型鉄砕、この2つを合わせた二虎流独自の複合技。
龍牙はこの2発を三つ目上臈に打った、幼い頃から鍛錬を欠かさず行い今や中学生のレベルの実力とは程遠いい場所にたっているのだ、ただの素人が放ったパンチとは訳が違う。
一方で龍牙は思いもよらない事に喜びを感じていた。
(普通の人間なら良くても気絶ぐらいの威力で打った筈なんだがな………姿も人間離れしていれば耐久力も人間離れしているのか………なら全力で打っても問題無いな!!)
その顔はおおよそ人ができる表情には見えない獰猛な笑みを浮かべていた。
龍牙は笑いながら更に追撃をしようとするが寸前で三つ目上臈が暴れだし地面を叩きつける。激しく暴れた事で地面が弾け咄嗟に顔を腕で防ぐと目の前に三つ目上臈はいなくその後ろのとわに迫っていた。このまま龍牙と戦うよりも刀が折れ戦う術を持たないとわを狙おうと考えたのだろう。それに気づいた龍牙はあとを追うもたどり着くよりも先に三つ目上臈がとわに襲いかかる。
「とわ!逃げろ!」
咄嗟に叫ぶがとわは逃げずに刀を構える。
「よくも菊十文字を、よくもせつなを!」
とわがそう言うと同時に左目が銀色に光り始める。
その光に反応するかのように折れた筈の菊十文字が蒼い刀身が形成される。とわはその刀を三つ目上臈に向けて突き刺した、今度は三つ目上臈の腹部を貫通し、刺された三つ目上臈は悲鳴をあげる。
「あいつ妖気の刀を自分で作りやがった。」
(妖気の刀?)
刀から蒼い刀身が消えると解放された三つ目上臈は地面をのたうち回る。
「おい、何やってんだ、早くトドメをさせ!」
「いや…無理でしょそんなの」
「そんなこと言ってる場合か!」
自分がやったことをまだ理解出来ずにいるとわとトドメを指すように催促するもろは、2人がそんな会話を続けているうちに三つ目上臈はまた方向を変え今度は芽衣達に襲いかかる。咄嗟に間に割り込み今度は逃がさないように意識を集中させるが三つ目上臈の動きが突然止まる。なぜならその頭部に蒼い服と鎧を纏った少女せつなが薙刀を突き刺しているからだ。
「悪く思うな。」
「助かったよ、ありがとう」
「あ、ありがとうお姉ちゃん」
「礼はいい」
三つ目上臈からせつなが飛び降りるととわが駆け寄り、そのあとに続くようにもろはも集まる。
3人が集まると三つ目上臈の頭蓋骨から赤と金色の虹色真珠がそれぞれもろはとせつなの元に戻る。
俺はその光景を少し離れた所で見ていると風が吹いた、普段なら特に何も感じることは無いのだが、その時だけは何故かこれから何か大きな事が起こる前触れのように感じていた。