アークナイツ界の汚物で有名なライン生命の実験体収容室。他の収容室よりも少し広くてちょっと違う作りになっているこの収容室には、二人の実験体(男)が暮らしていた(男が一つ屋根の下で二人きり……何も起きない筈も無くと思っていたけど事実何も起きなかった)
ベッドの上でコサックダンスをしているのはプーチン。頭の上で片結びにされた耳がチャームポイントだ。実験体ナンバーは541。そして、もう一つのベッドに寝転がり、何故か雑誌を読んでいるのはキレネンコ。所々継ぎ接ぎになっている体と、片方の耳にブッ刺さっている銀色の安全ピンが特徴だ。実験体ナンバーは04。
二人はコータス族であり、互いに歪み合う事も無く、かと言って積極的に絡む事も無く、静かに実験体人生を謳歌していた。
すると、壁の一部がスライドし、扉の様なものが現れた。その扉には覗き窓がついており、そこから誰かが覗いている。
それを見たプーチンが、勢いよく扉の前にやって来た。扉の奥にいる人物は驚いたのか、一瞬ビックリした反応をしたが、直ぐに元に戻る。
「朝食の時間だ。残すなよ」
扉の向こうにいる人物がそう言った後、少しして扉の下からお皿に乗せられた生魚(消毒液がこびりついたヤツ)が二人分出てきた。何故生魚なのかはわからない。他の実験体は水が入った紙コップ1個と、栄養満点カプセルなのだが、プーチンとキレネンコだけ何故か生魚なのである。きっとテラの海よりも深い理由があるのだろう。知らんけど。
「フンフフンフフ〜ン♪」
鼻歌を歌いながら生魚が乗ったお皿を手に取り、一つをキレネンコのお腹の上に乗せる。そしてプーチンは生魚を上に持っていき、大口を開けて豪快に食べようとした瞬間、生魚の尻尾による往復ビンタが炸裂。この魚、消毒液漬けにされて尚陸上で尻尾を元気に動かせる程ピンピンしているとは、並ならぬ生命力である。
一方、生魚の存在に気がついたキレネンコは、雑誌を読むのを中断すると、皿に乗っている生魚の匂いを嗅いだ。薬品と生魚特有のアレな匂いが混ざった、何とも言い難い酷い匂い。
彼の耳が中幅で折れる。わかりやすい拒絶反応だ、顔は無表情のままだが。
「………実験体04番、一体何の用だ」
キレネンコが扉を叩くと覗き窓が開き、扉の奥にいる人物が睨みつける。だが、その程度では怯まないキレネンコ、お皿に乗った魚を見える高さまで上げると、前を向いたままお皿を使って、生魚を何故か蓋が開いているトイレへホールインワン。そして何食わぬ顔で「別の寄越せ」と言わんばかりに、扉の奥にいる人物にお皿を突き出した。顔は相変わらず無表情だが。
「………ア゛?」
扉のおっさん、キレた。わざわざ消毒までして出した渾身の料理(生魚の消毒液添え)をトイレにボッシュートされたのだ。誰だってキレていい………かもしれない。
「話は聞いていたが、まさかこれ程だったとはな。君を見くびってたよ」
キレ気味になりながら穏やかな口調で話す扉のおっさん。そして、さっき魚を出した場所から、今度はお皿に乗ったカプセル1個が出て来た。
「テメェみたいな奴の飯なんざカプセルで充分だわ」
そんな捨て台詞を吐きながら、覗き窓を閉じようとした瞬間、腹に一瞬何が起きたかわからなくなる程の激痛が走ると共に、口に何かをねじ込まれた。
「ウゴフッ!ウゴァァァァォォァァァ!!!」
余りの激痛に床にのたうち回りながら苦しむ扉おじさん。これには横でデータを取っていた研究員もビックリである。
どうやら、目当てのものが出なかった事により、ちょっと不機嫌になったキレネンコが、扉越しにおじさんを殴り、覗き窓からカプセルを皿ごと口へねじ込んだのだ。
少し説明しておこう。この扉、ライン生命が作り出したデータ上天災にも耐えうると言われている扉である。それをメキメキと音を立てながら拳型の凹みを作る程のパンチ。この扉と防護服が無ければ、きっと扉おじさんはお陀仏になっていた所であろう。
「わ、私です。至急警備員と担架を……」
データを取っていた研究員が何処かに電話している。すると、さっきまで苦しんでいた扉おじさんが立ち上がった。
「ゴホッ!ゴホッ!……クソッ!もう許さねぇからなぁ!」
完全に怒りに染まってしまった扉おじさんが、横にあったボタンを力強く叩く。すると、収容室の方の壁から、警棒を持ったアームが現れた。警棒はバチバチと電撃を纏っている。この警棒を喰らえばただでは済まないだろう。
「聞き分けのないモルモットはお仕置きだァ!」
そう言って扉おじさんはアーム操作し、キレネンコの顔を思いっ切り殴った。キレネンコの顔は歪み、首があらぬ方向へと捻れる。
「ハァ…ハァ……ハハッ、やったか…なっ?!」
死亡フラグを即時回収するかの様に、キレネンコの首がボキバキベキッと言いながら元に戻る。そして、覗き窓越しに目と目があった瞬間………
ブチィ
何かがキレる音がした。
次の瞬間、扉おじさんの視界は眉間に皺が寄りまくったキレネンコの顔が埋め尽くし、いつの間にか扉を貫通して来た細腕がおじさんの胴体を掴む。そして突然始まった連続ボディブロー。収容室の入口にエグい音を響かせながら、成すすべもなくサンドバッグにされた扉おじさんは、全身から血を吹き出しながらノックダウンした。
その光景を近くで見ていた研究員と、丁度担架を持ってきた警備員複数人はこう語った。「何故か知らないが、自分も死ぬかと思った」と。
扉おじさん、もとい扉警備員が運ばれて行った後、優雅に人参ステーキなるものを口に頬張るキレネンコ。彼の深淵の様な無機質な目が写す光景は、未だ往復ビンタされているプーチンだった。
You Tubeのオススメに突然出てきて、懐かしいと思いながら見てたら、「アレ?こいつ等コータス族じゃね?」とか思った理性/Zeroドクターによる見切り発車。多分続きます。