ウサビッチナイツ   作:ゲルゲルググ

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実験の時間

 アークナイツ界の汚物で有名なライン生命にて、今日も二人のコータス族が比較的平和に暮らしていた。

 ベッドの上でコサックダンスをしているのがプーチン。そしてもう一つのベッドに寝転がり、何処から持ってきたかわからない雑誌を読んでいるのはキレネンコだ。実験体ナンバーは541と04。

 

 何時もの様に壁がスライドすると、覗き窓がついた扉が出現し、その覗き窓から警備員らしきおっさんが睨みつけて来た。

 

「実験だ。ついて来い」

 

 そう言うと共に、扉が開かれた。だが、扉の外にあるのは青い空でもお花畑でもなく、無機質な廊下と完全武装の警備員数名と言う暑苦しいものである。

 それでも外に出る事は結構嬉しいプーチンである。と言うか、彼は元々仕事熱心な社会人である為、誰かの役に立つ為の実験であれば、彼は無条件で付き合ってくれるのだ。まぁライン生命の実験なんて"いつか"人の為になる実験なので、プーチンがやってる実験が人の役に立つ保証は無い。世界は無情でありますな。

 

 そんな事を知らないプーチンは、何時もの鼻歌を歌いながら警備員達へ付いて行く。だが、己と一つ屋根の下で暮らしている同僚が何処にも見当たらないのに気が付き、チラッと後ろを向いた。

 

「ファッ?!」

 

 プーチンが見た光景は、コロがついたベッドごと移送されるキレネンコだった。少し前までは、無理矢理連れて行こうとしてボコボコになっていた警備員だった。今回もそうなっているのかなと思っていたプーチンにとって、ベッドごと移送されてるキレネンコは始めて見る光景だったのだ。

 因みにキレネンコは優雅に雑誌を読んでいるままである。本人に害が無ければ、キレネンコはキレない。そうやってキレネンコの扱い方は日々進化し続けるのだ。何とも必要性皆無な進化である。

 

 

 

 

 さて、むさ苦しい警備員達に連れて来られた所は、色々な機材と怪しい薬物などなどが置かれた広い部屋だった。まぁ簡単に言えば実験室である。

 

「コイツを被れ」

 

 そう言って渡された、なんかヤバげなヘルメットを被るプーチン。ヘルメットには様々な太さのコードがブッ刺さっており、それらは計測機らしきものへと繋がっている。

 

「計測開始」

 

 その言葉と共に、プーチンの目の前にマトリョーシカが乱雑に詰め込まれた箱が出て来た。プーチンはそのマトリョーシカの中から、大きさがそれぞれ違うものを迷い無く取り出し、整頓して行く。

 

「脳波の数値、以前よりも大きいですね」

「神経系の伝達速度を上昇させるアーツ……このまま行けば、精密機械の処理速度を上回るな」

 

 なんか専門的なお話をしている研究員達ですが、プーチンのアーツが有効活用される事は多分無いでしょう。

 その間にプーチンはマトリョーシカを綺麗に整頓し終わり、次の実験であるオリジムシを雄と雌で仕分ける実験に移った。オリジムシを鷲掴み、ちょこっと見てからそれぞれ♂と♀マークの書かれた穴に放り込む。雌雄の判別は慣れだが、見分ける速度が実に異常と言わざるを得ないだろう。

 どんどん上がって行く数値を見てニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる研究員達。だが次の瞬間、その数値が一気に跳ね上がった。

 

「なんだ?何が起こった?!」

 

 慌てた研究員の一人が、監視カメラを見る。プーチンは1匹のオリジムシを持った状態で固まっていた。それを見た研究員は、頭の上に?マークを浮かべる。

 

「脳波の数値、正常値に戻りました……」

「あぁん?………全く、驚かせやがって。オイ!実験体541!ぼさっとしてないで作業を続けろ!」

 

 実験室に取り付けられた放送機から発せられた言葉にビクッと反応したプーチンは、焦りながら作業を再開する。だが、今手に持ってるオリジムシをどっちに入れるかを決めなければならない。

 ライン生命に来てから何日もオリジムシを仕分けて来たプーチンだが、彼はこのオリジムシを見たのが始めてだ。全体的な特徴から見たら雌なのだが、このオリジムシ、なんと…なんと………

 

 青い髭の剃り跡があるのだ…………髭の剃り跡があるのだ(大事な事なので2回)

 

 意味がわからない。と言うか、オリジムシに髭は生えるのか?そんな事をアーツで強化された頭でずっと考えていたのだ。

 すると、手に持っていたオリジムシが顔(?)を赤くしながらくねくねと体を動かす。正直言って生理的嫌悪がオリジムシの形をしたナニカと言っても過言では無い。なんかホント、コイツを見るよりオリジムシの大群を見る方がマシかもしれないと常人は思うだろう。

 

 因みにプーチンは、このオリジムシを「恥じらう様な仕草をした」と言う理由で♀のマークが書かれた穴に放り込んだ。

 

「アバババババババ?!」

 

 そして頭の装置から電流が流れる。作業を少しでも間違った時に喰らうお仕置きの様なものである。最近喰らっていなかった為、久しぶりの電流でビリビリし、更にはロボットダンスをしだすプーチン。何故電流を頭から喰らって大丈夫なのかって?それはキレネンコがどうして頑丈なのかと聞いているようなものだ。つまりわからん。

 

「実験体04は?」

「準備に手間取ってます……」

「チッ、あのコータスめ」

 

 忌々しいとか思いながら、プーチンの横でなんかヤバそうなポッドに慎重に押し込まれているキレネンコ。ポッドの周囲には、2、3人の警備員がノックアウトされていた。既に犠牲が出てやがる。

 

 その光景を見ているプーチンのもとに、実験室の扉で小銭をピンハネして暇を潰していた警備員達がやって来た。ピンハネで暇潰しとか警備員にしてはガラが悪すぎる。

 

「………あっ」

 

 歩きながらピンハネしていたせいで、うっかり遠くの方まで飛ばしてしまった警備員。そして飛んで行く小銭を目で追うプーチン。そしてなんと、飛んで行く小銭を取ろうと、プーチンが大ジャンプを繰り出した。

 

「………おい、アレぶつかるんじゃね?」

 

 一人の警備員がそう呟く。警備員が言った通り、プーチンの落下予測地点はキレネンコがいるポッドの中。そして丁度キレネンコが押し込まれ終わった直後であった。キレネンコを押し込み終えた警備員と研究員はプーチンに気がついたが、既にポッドの入口は閉まり始めている。まぁ、このまま行ってもプーチンがポッドに激突するだけだろうとみんなが思ったその時だった。

 

 キレネンコが、自分に向かって落下してくるプーチンに気がついたのである。

 閉まり掛けていたポッドの入口をこじ開け、特に慌てる様子も無く外に出るキレネンコ。そしてポッドの入口がこじ開けられた事により、ぶつかるだけの筈だったプーチンはすっぽりとポッドの中に入り込み、入口が閉じてロックが掛けられた。

 

「「「………………」」」

「………………」

 

 ピッ!

 

「「「ゑっ」」」

 

 なんの躊躇いも無く、キレネンコは実験を開始するボタンを押した。

 こうして、事故とはいえプーチンはキレネンコの分の実験もする事になったのであった。因みに、キレネンコの行動には流石のライン生命の研究員共にも理解出来なかったらしく、プーチンが入っているポッドを全員がボーッと見つめると言う変な光景が出来たとか何とか。




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