沢田綱吉、獄寺隼人、山本武の3人と別れいつもと変わらない日常の昼下がり、いつも通り校舎の屋上で昼寝をしながら今朝届いた物を眺める。
「この指輪なんなんなろ?」
そう言いながら自分と太陽の間に1つの指輪をかざす。
そこには爬虫類の様な生き物が象られている。
「トカゲか?やけに狂暴そうで羽っぽいのもあるしドラゴンか…?」
自分で言っていてもアホらしくなるが他に例えようが無い。
「やけに凝った装飾やし誰かからのプレゼントかな?」
もしその場合だとリアルバレを危惧しなくてはならないのでにじさんじ、もしくは他のライバーからのプレゼントと思いたい。
ライバーには多種多様な才能を持っている人が多いので誰かが作った可能性は低くない。
せっかくなので1度右手の中指にはめてみる。着け心地は予想以上に良く、まるで自分の指から象ったかのようにピッタリである。
「今日は活かした指輪をしてますね楓ちゃん」
校舎の屋上で指輪をはめた手を眺めていると聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
視線の先には今朝一緒に登校していた月ノ美兎が顔を覗かしていた。
「今日の朝ポストに入っててん」
「楓ちゃんもですか?私もですよ」
そう言って美兎ちゃんは自分の手のひらをこちらに見せてくる。
その手には多分私と同じ素材で出来た指輪がはまっていた。
「美兎ちゃんの所にも届いてたんや。誰から届いたか分かる?」
私の問に対して美兎ちゃんは首を横に振る。
「やっぱ分からんか〜」
「もしかしたら、世界に選ばれた証とかですかね」
「そんな役目はちーさんかエクスくんに任せるわ」
見た目が10歳くらいで魔法少女の勇気ちひろ。
鎧と剣を背負った異世界の英雄エクスアルビオ。
ずっと私より英雄や主人公に向いている人種はこの学園に在籍している。
生まれながらにして英雄の子供でも無ければ超能力もない極普通の女子高生である私達に世界の運命は重すぎる。
「そう言えば楓ちゃん。今朝のニュースは見ましたか?」
「今日は寝坊してニュース見てないや。なんかあったん?」
「実は昨夜も出たらしいですよ通り魔」
「また出たんや。これで7件目やっけ?」
「いえ、昨夜は2箇所同時だったので合計で8件ですね」
「怖いな〜。美兎ちゃんも夜道は気をつけな」
「私よりも楓ちゃんの方が心配ですけどね」
何かと巻き込まれがちな私に対する心配はご最も。しかし、厄介事に首を突っ込むという点では美兎ちゃんも変わらないくらい危なかっかしい
「よし。帰りが遅くならへんように早く帰るか」
「何を言ってるんですか楓ちゃん。まだ午後の授業が残ってますよ」
流れでサボろうとするが流石委員長堂々とはサボらせてはくれない。
まぁ元々サボる気も無かったので大人しく教室へ帰るとしよう。
「「お疲れ様でした〜」」
私はひと仕事終えたので収録現場を後にする。そんな私と入れ替わりで現場にはリゼ・ヘルエスタさん、戌亥とこさん、アンジュ・カトリーナさんの3人組通称「さんばか」がコラボ配信の為に顔を出していた。
いつもならゆっくり話してから帰るが配信時間が迫っていたので3人は少しだけ話したらすぐに配信準備を始める。
こうなってしまっては私が居ると邪魔になるので現場を後にする。
樋口楓が収録を行っている間、静凛はいつも変わらない日常を過ごしていた。
「ん?この反応は…」
静凛は手元にある家中時計の様な物を開ける。そこには中心に1つ、10時の方向に大きな点滅が1つとその周辺に小さな点滅がいくつも重なっていた。
「そろそろ隠すのにも限界ですが…、まだちょっと早いですね…」
懐中時計を確認し、反応のあった方へ向かう。
遠目から怪しげな12個の影が確認できたためバレないように物陰から双眼鏡で覗き込む。
そこには黒で統一された隊服を着込んだ人物が11人と傘のような物を8本背負った人物が1人。
明らかに一般人とは違う風貌にため息が出る。
「あの服装に8本傘…。もしかしてヴァリアーのレヴィ・ア・タン…?また厄介な人が来ましたね…」
今までにも色んなマフィアや暗殺者がにじさんじ地区に迷い込んできたがここまで大物が迷い込んだ事はない。
「やっぱり今朝の出会いが原因?」
今朝出会った3人の少年と1人の赤ん坊を思い出す。この世界の住人では無い彼らとの遭遇が起因しているのではないか?
「兎にも角にもこの辺で騒ぎを起こされたくないですね」
レヴィ・ア・タンという人物はかなり真面目な性格で女子供関係なく仕事を果たす事で有名である。
長時間滞在されてしまってはいつかにじさんじのライバーにまで被害が出かねない。
「彼らにはここで退場してもらいましょうか」
静凛は指に填めたリングから藍色の炎を出し、薄く全身を纏う。そしてもう1つのリングから青色の炎を出し、掌サイズの匣にはめ込む。
匣が開くのと同時にダネル NTWが出てくる。流石に持ち運ぶには大きすぎる為、出現させた場所からヴァリアーを狙う。
敵に気付かれないように雨の炎をダネル NTWに注ぎ込む。一撃で戦況を覆す為に編み出された技「マキシマムバースト」の準備を行う。
スコープを覗き1分ほど経ち射撃の準備が整う。敵はまだこちらに気付いてない事を確認し、引き金を引く。
その瞬間、青く光った弾丸が高速でレヴィ・ア・タンに向かって飛んでいく。弾丸は途中で分裂し11人の兵隊に直撃、隊長格であるレヴィ・ア・タンは直前に気付いたのか背負っていた傘を開いて被弾を避けたのが確認できた。
「流石にダメでしたか」
静凛は仕留めきれなかった事を確認して直ぐに武器をしまい場所を移動する。
スナイパーは1度撃てば場所がバレるため直ぐに移動するのは定石である。
いくら霧の炎で身を包んでいると言っても街全体を包みながら自身を完璧に隠すことは出来ない。
「誰か増援を…」
にじさんじライバーに持たされた連絡用スマホを取り出そうとした瞬間、嫌な予感が過りその場からすぐさま飛び退く。
その直後、先程まで居た場所には2本の傘が刺さる。
「誰だ貴様?」
「(流石に来るのが早すぎませんか…)」
相手から放たれる威圧感によって嫌な汗が背筋に流れるのが自分でもわかる。
下手な行動が直接命の危機に繋がるこの状況をどうやって切り抜けるか思考を巡らすが、いい案が出てこない。
霧の隠密は1度認識されてしまうともう一度隠れるには時間を空けなくてはならない。
ヴァリアーを相手に出来るとは思えないし、下手に動き回って他の幹部と鉢合わせる方が危険か。
「沈黙か…。関係の有無に関わらず見られたなら生かしてはおけぬ」
レヴィ・ア・タンは突き刺さった傘を抜き構える。その傘には緑色の稲妻が纏われており攻撃力が跳ね上がる。
「(雷の炎の性質は硬化。接近戦は不利ですね)」
静凛の持つリングは雨、霧、雲の3種類あるが、急ぎだった為武器は先程のダネル NTWしか持ってきていない。
「(さて、どうやって切り抜けましょうか)」
収録現場を出てから10分ほどした時、ふとお昼に話した内容を思い出す。
「バーチャル界も物騒になったもんやな」
私たちが生活を送っているバーチャル界は現実世界とは文字通り違う次元ではあるが現実世界の影響を受けてこういった事件は度々起こるし、事件の規模や多様性は現実を超える為、かなり危険ではあるが、にじさんじ地区に関しては今まで大きな事件は起きてない。その為、にじさんじ地区はバーチャル界一安全で安全じゃない地区として有名になっている。
「それにしても今日はやけに胸騒ぎがするな〜」
こういう時は十中八九悪い事が起きている。
「あんやあれ?流れ星か?」
暗い夜空に一筋の青い光が輝く。一体何が光ったのかは分からないが自分の中で不安が大きくなったのが分かる。
光が通った場所を眺め続けていると1つの影が発光元へ移動しているのが見える。
「(周りのみんなは何も気づいてないんか?)」
自分の周囲にはいつもより少ないが歩行者は確実に居るのに誰一人として気付いていない。
「(こんな事ある?私にしか見えてないとか…)」
今の状況に対して整理すれば何かと違和感を感じるが、今は気にするよりも先に不安のする方へ走り出す。
第2話も読んでいただきありがとうございます。
かなり見切り発車で書いているのでライバーの口調に違和感を感じた場合は教えて欲しいです。
ライバーの能力も募集中です。