バーチャルリング   作:群武

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静凛がレヴィ・ア・タンへ攻撃を仕掛けるのと同時に他の場所でも同様に戦闘が勃発していた。

その内の1つはとある廃墟で行われていた。

 

「おい〜。お前ら僕の城を破壊するんじゃないよ〜」

 

悪魔と呼ぶには可愛らしいフォルムと声。コアラに悪魔の衣装を着させた様な見た目のでびでび・でびると極普通の一般美大生である鈴原るるは目の前に居るナイフを浮かした少年と自身が浮遊している赤ん坊の2人と対峙していた。

この2人はつい先程でびでび・でびるが言ったように(自称)城の壁を壊して侵入してきたのである。

「本当にこいつらがリングを持っているのかいマーモン?」

 

「間違いないはずだよ。僕の粘写で調べたんだからね」

 

リングや粘写といった聞き覚えのない会話を繰り広げる2人に対してでびでび・でびると鈴原るるは身動きが取れずにいた。

一見隙があるように見えるが常に宙に浮いたナイフがこちらを捉えている。

 

「びだいせい逃げろ」

 

いつもの愛らしい声ではなく、真剣で遊びのない声はこの場の緊張感を表している。

 

「でび様を置いて逃げれませんよ」

 

信仰の表れなのか友を置いていけないのか1人で逃げることを拒む鈴原るる。

 

「いいかびだいせい?僕は悪魔なんだよ?びだいせいが居たら僕が本気を出せないんだよ」

 

日頃の言動で忘れがちだが、でびでび・でびるは悪魔であり一般の人間よりも頑丈で強い。それに加えて日頃の配信のおかげで信者は30万を超え、悪魔としての力も強大になっている。

 

「シシ。コアラか悪魔か何か知らないけど俺には勝てないよ。だって俺、王子だもん」

 

そう言いきった瞬間、宙に浮いていたナイフがでびでび・でびると鈴原るる目掛けて一斉に襲いかかる。

 

「「!?」」

 

スピードこそ無いものの一斉に飛んできたナイフをでびでび・でびるは自身の爪で打ち落とす。しかし、ベルフェゴールとマーモンが驚いたのはそちらでは無い。

 

「凄いですね。宙に浮いただけじゃなくて飛んでくるんだもん」

 

元々人外の姿をしているでびでび・でびるが反応出来ることは想定内ではあるが、戦闘経験を積んだ事が無いはずの一般人の鈴原るるは華麗なステップで全てのナイフを避けきる。

 

「シシ。これは刻みがいがある。マーモンはそっちのコアラを任せた」

 

「ぼ〜くのどこがコアラだ〜。どっからどう見ても立派な悪魔だろ〜」

 

でびでび・でびるはベルフェゴールのナイフを打ち落とした両方の爪を広げる。その姿はまるでアリクイが威嚇をする時のポーズにそっくりである。

 

「まぁ何でもいいけど。僕も悪魔に幻術が効くのか興味あったし」

 

その言葉を皮切りに、無数の火柱が床から生える。咄嗟のことで判断が鈍ったでびでび・でびるは火柱に包み込まれる。

 

「でび様!」

 

それを目の当たりにした鈴原るるはでびでび・でびるの名前を呼ぶが返事はない。

 

「シシ。コアラの丸焼きかんせ〜い」

 

「だから僕は悪魔だって言ってるだろ〜」

 

ベルフェゴールはふざけた口調で言い放つが、それに反応したのは鈴原るるでもマーモンでもなかった。声は火柱の中から聞こえてくる。

 

「なんだこれ〜?暖かいシャワーか?」

 

火柱の中から何事も無かったかのように出てきたでびでび・でびるは先程までの愛らしい姿ではなく、体が大きくなり悪魔らしい姿になっていた。

 

「でび様!」

 

「びだいせいは何を心配してるんだ?このくらい崇高な悪魔の僕なら余裕だよ」

 

「シシ。マーモンの幻術効いてないじゃん」

 

「ムッ。あんなの小手調べさ。タダで僕の必殺技を見せたくなかったから手加減しただけさ」

 

そう言うとマーモンは自身の首から下げたおしゃぶりに巻かれていた鎖を外す。今まで光っていなかったおしゃぶりが輝きだし、それに呼応するかのようにマーモンの上に居た黒いカエルが白い巻きガエルへと変化する。

 

「バイパーミラージュ!」

 

マーモンが技名を叫んだ瞬間でびでび・でびるは地面から突き出てきた槍で串刺しにされる。

先程と同様に直ぐに動くと思われたでびでび・でびるは鮮血を撒き散らしピクリとも動かない。

 

「いやー!!」

 

その残虐な光景を目の当たりにしてしまった鈴原るるはでびでび・でびるの元へヨロヨロと近寄り、無惨な姿を直視した直後、頭を抱え、叫び、膝から崩れ落ちる。

大きくなっていた体はみるみる縮み元の大きさになる。いつも周りに気を使っていた瞳に光はなく、ふさふさの毛は血でべっとりと濡れている。大きな爪を握っても何の反応もない。

 

これが死

 

鈴原るるもゲーム内では頻繁に死んでいるが現実で死に直面したのはこれが初めてだ。

目前の景色に絶望を覚え、自身に飛来するナイフを避けようともしない。否、逃げる気力が湧かないのである。

奇跡的にもナイフは狙いが外れたのか鈴原るるの両隣に突き刺さる。

 

「ムッ。何やってんだい。止まった敵くらい仕留めてくれないと追加で料金を請求するよ」

 

「シシ。どうせこいつ死んだも同然だし、ちょっと遊んでるだけだよ。まぁこれでおしまいにするけど!」

 

もう勝利を信じて疑わない2人は軽口を叩きながらベルフェゴールは最後にトドメのナイフを投げる。

 

「(そっか…。こいつらのせいで…でび様は……)」

 

心の中で目の前の敵を睨みながらグサッという音ともに心臓に1本のナイフが突き刺さる。




でび様の口調って戦闘時だとふざけてるように聞こえて難しいです。
でび様訛りの表現が出来なかったので想像で補完して貰えると幸いです。
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