バーチャルリング   作:群武

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「なぁ舞元。アレヤバくない?」

 

そう言ったのは白いスーツにピンクのシャツ。とかなり目立つ服装にも目がいかないようなメイクと髪色が特徴のにじさんじライバージョー力一

 

「絶対ヤバいだろ」

 

そう答えたのはいつもの私服とは違い黒のスーツを見に包み屈強な体格に若白髪と一見ヤクザの小市民舞元啓介

その2人の視線の先には長い銀髪に左手に括り付けられた刀身が剥き出しの剣。そしてその後ろを漂う体調6mを超えるホホジロザメ。

 

「逆に安心出来る材料が欲しいくらいだよ!」

 

気付かれないように少し離れたところから様子を見る2人。後ろ姿は長髪という事もあり女性と勘違いしそうになるが、振り返り鋭い眼光が見えた瞬間、男性しかもかなりヤバいやつという認識で統一される。長髪男性が振り向いた瞬間姿を隠す。

 

「ゔおぉい!そこの白黒スーツ!」

 

しかし、どうやら視認されていたらしく、離れた位置にいた舞元啓介とジョー力一でも鼓膜が壊れるかと思うくらいの声量をぶつけられる。

 

「やっべ!気づかれた!」

 

「逃げろ!」

 

2人は長髪男性の叫びを気にも止めずにすぐ様逃げ出す。

 

「てか!何でサメが宙に浮いてるんだよ!」

 

「そんなの知らねーよ!シャー〇ネードの特撮とかじゃねーか!?」

 

シャー〇ネードとは駄作と言われながらも全6シリーズまで続いた名作。その時活躍した生物が舞元らを後ろから宙を泳ぎ追いかけてくる獰猛な魚類の鮫である。

 

「やべぇ!追いかけてきやがった!」

 

猛スピードで追いかけてくる鮫を背に持てる限り全力で走る2人。農家で鍛えた足腰の舞元啓介と運動神経の良いジョー力一は勢いよく変わる景色に目もくれず迷路のような裏路地を走り抜ける。

 

「巻いたか!?」

 

「ゔおぉい!待ちやがれ!」

 

「まだ追っかけてくんのかよ!」

 

どれだけ走ろうとも追いかけてくるロン毛と鮫を相手に一瞬立ち向かう事を考えたが、キラリと光る刃と歯に戦意が失せる。

 

「てかさっきからおかしくないか?」

 

「何が!?市中で鮫に追われるほどおかしな状況とかなくね!?」

 

何かに気づいたのかジョー力一は辺りを見回す。

現在は逃走に逃避を重ね街中から裏路地とありとあらゆる所を走り回った。刀を振り回して鮫に乗ったロン毛に追われていれている白スーツのピエロと黒スーツの一見ヤクザ。どう考えても周りの視線を独り占めする様な集団にも関わらず笑い声も叫び声すら聞こえてこない。

 

「人がいない?」

 

「そんな事どうでも良くね!?力一!そこ右!」

 

舞元啓介の掛け声に合わせて同じ角を右へ曲がると先程の違和感とは裏腹に1つの人影が見える。

その人影は舞元啓介とジョー力一の2人を見ると大きく手を振る。

 

「おーい。力一に啓介ではないかの〜」

 

2人の名前を呼ぶのは四尺半程の身長に額から生えた2本の角が特徴の竜胆尊(りんどうみこと)

 

「尊様逃げて〜!」

 

「え?え?」

 

大の男2人が必死の形相で迫ってくる。一瞬何事か分からなかった竜胆尊だが、その直後に2人が曲がってきた角から巨大な鮫が姿を現す。

状況は理解できなくても危険を感じ取り、2人の方へ距離を詰める。

 

「「なんでこっち来んの!?」」

 

逃避を呼びかけた相手が逆の行動を取ったため困惑する2人。竜胆尊はそんな2人を無視し手に持った刀で迫り来る鮫を一刀両断しようとする。

舞元啓介とジョー力一は二人の間を通り抜けた友人を助ける為に切り替えし、来た道の方を向く。するとそこには餌を飲み込もうと大きく口を開けていた鮫が上下の二枚おろしになっていた。

「何やってんの尊様!?」

あまりの出来事に突っ込む舞元啓介と驚きすぎて顎が地面にめり込みそうなくらい口を開けたジョーカー。

 

「切ったらダメじゃった!?」

 

ツッコミの勢いに負け、自分が悪い事してしまったのではと顔を青くする竜胆尊。

 

「全然いいけど!」

 

「取り敢えずまずは逃げろ!」

 

2人は竜胆尊の両手を取って再び走り出そうするが、威圧的な声に身動きが取れなくなってしまう。

 

「ゔおぉい!これはどういう事だ!?」

 

声の主は予想通り剣を片手に巻き付けたロン毛だった。

 

「チッ、マーモンの奴不良品を渡しやがったな」

 

先程までの声量と打って変わってぶつくさと小さな声で何か言っているが聞き取れない。

 

「まぁこんなもんに頼らなくても俺なら一瞬で3枚に下ろせるがな。おい!お前ら!1つ聞きたいことがある!」

 

ロン毛の声量と威圧感にビビりながらも舞元啓介とジョー力一は竜胆尊を隠すように1歩前へ出る。

 

「あぁ?何だてめー?」

 

舞元啓介は両手をポケットに入れ高圧的に対応するが、背中には冷や汗をかき両足は震えてさっきの1歩より前に動かない。1歩踏み出しただけで先程まで受けていた威圧感が殺気へと変わり火照った体が一気に冷たくなる。

 

「さっき俺様の匣兵器を斬りやがったのはどこのどいつだ!?」

 

匣兵器とは何か分からない3人だが、何を指しているのかは検討は着く。大方先程の鮫の事だろう。

 

「アレを切ったのは妾じゃよ」

 

竜胆尊は舞元啓介とジョーカーの間から顔を出し自分から名乗り出る。

 

「は!そんな小娘が俺様の暴風鮫( スクアーロ・グランデ・ピオッジャ)を切れるわけがねー!」

 

そう叫び突っ込んでくるロン毛に対して、竜胆尊は右手に持った刀で迎え撃つ。

 

「小娘扱いされたのは久方ぶりじゃの」

 

見た目こそ幼く見える竜胆尊ではあるが、実際は9900歳と彼女以上の年齢はにじさんじの中ではベルモンド・バンデラス、モイラ、雪汝の3人しかいない。

年齢だけでなく力も人間とは比べ物にならない程強く、油断していたロン毛は押し返される。

 

「意外とやるじゃねぇか!」

 

「うぬこそ人の子にしてはやるの!」

 

2人は互いの刀を弾き距離をとる。

1度の打ち合いで何か感じ取ったのかお互い構えていた剣を下ろす。

 

「俺様はボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー所属!スペルビ・スクアーロ!」

 

「妾はにじさんじ所属竜胆尊じゃ!」

 

双方名乗りを上げ終えるのを待ち、名乗り終えたのが開戦の合図となり激しい打ち合いが始まる。

最初の太刀筋は辛うじて目で追えたが、徐々にスピードは上がり直ぐに常人では追えない剣戟になる。そんな激しい戦闘に周囲は巻き込まれる形で被害が出る。

スクアーロと名乗ったロン毛の攻撃を竜胆尊が受ければ、衝撃で足元が割れ、竜胆尊が刀を振れば剣圧で木々が揺れる。

幾度となく打ち合い続けた両者は大小様々な傷を作りながらも辞める気配はない。傷の増えたスクアーロは獰猛さを増し、竜胆尊は逆に足取りが悪くなる。

 

「おい力一。尊様の様子おかしくないか?」

 

「こんだけ激しく動いてたら体力が減るのは仕方が無いだろ」

 

2人の心配を他所にスクアーロと竜胆尊は未だに激しく剣と刀をぶつける。

 

「ゔお゙ぉい!てめー!まだ何か隠し持ってるだろ!」

 

何かに気付いたらスクアーロは竜胆尊の袖を斬る。そして中から出てきた物体を器用に弾き手元に収める。

 

「なんだこれ?」

 

スクアーロはそう言って手の中にある物体を眺める。周りが暗くなって色は分からないが形からその物体が瓶である事が分かる。瓶の中にはまだ液体が入っているようでチャプンという音がする。

 

「妾の酒に触れるんじゃない!」

 

血相を変えた竜胆尊はスクアーロが反応出来ないスピードで肉薄し、瓶を取り返す。そしてそのスピードのまま舞元啓介とジョーカーの前に移動し、瓶を渡す。

 

「お主らこれを持っておいて欲しいのじゃ」

 

「尊様これは!?」

 

手渡された瓶のラベルには「Vノ酒」と記載されている。

とある酒場とライバーがコラボした時の商品で発売はもう少し先である。

これを見て舞元啓介は何かに気づいたのか少し焦ったように問いかける

 

「もしかして尊様結構飲まれてます?」

 

「ちょびっとだけ」

 

指を少し広げ少量を表すが 手渡された瓶は軽く竜胆尊の頬は薄ら赤く足元がおぼつかない。

 

「絶対嘘じゃん!もうほとんど残ってないし!」

 

「だって!寂しかったんじゃもん!折角今日届いたのにアンジュはリゼ達とコラボじゃしお主らとは連絡が着かぬし…」

 

「それはアイツに追われてたから…」

 

「もういいもん!アイツ3枚おろしにしてフカヒレを酒のつまみにするもん!」

 

飲酒状態での激しい動きのせいがお酒に強い竜胆尊に酔いが回り、若干支離死滅な内容を口走る。

 

「ゔおぉい!別れの挨拶は済んだか!?」

 

どうやら礼儀正しく待ってくれていたスクアーロも我慢の限界がきたらしく、容赦なく突っ込んでくる。それに対し、竜胆尊は今まで以上に鋭い踏み込みでスクアーロの剣を弾き返す。

先程までの覚束無い足取りから思いもよらない一撃に体勢を崩したスクアーロへ間髪入れずに追撃を行う。

袈裟斬りからの鋭い横一線への切り返し、少し空いた距離を一瞬で詰め鳩尾へ掌底を打ち込む。スクアーロは咄嗟に掌底を避ける為、体を半分ズラすが、掌底は脇腹にヒットし、バランスを崩す。

スクアーロがバランスを崩したのを機に竜胆尊は怒涛の攻撃を仕掛ける。見たことない技からとある漫画に出てくる技を模倣しての連続攻撃を繰り広げる。

多種多様な剣技を見せる竜胆尊に対してスクアーロは絶妙な剣さばきでそれらの攻撃を全て受け止める。

 

「もうお前の剣技は見切った!」

 

スクアーロの言葉は現実となり、竜胆尊の攻撃を受け止めるだけでなく攻撃に転じ始める。

 

「これヤバくないか?」

 

「かなりヤバいな…」

 

先程とは打って変わって目の前で繰り広げられる防戦一方の攻防に舞元啓介とジョーカーは身を隠しながら冷や汗をかく。

人間よりも遥かに強い鬼を圧倒する剣士。漫画ですら見ることの少ない景色を目の前にジョーカーは自身の脚に力を入れ直し立つ。

 

「Hiジョー児!」

 

ジョーカーが立つのを合図に摩訶不思議な曲が流れ出す。

足は肩幅より広く広げ、腰は落とし手を上、左手を下にしてひじを曲げ、胸の前で平行に保つ。流れる音楽に合わせ両手で両膝を2回叩く。次に胸の位置にある両手を頭より上に振り上げる。この動作を複数回繰り返す。同じ動作が3回目に差し掛かったタイミングで動きのなかったスクアーロは我に返ったように猛然と突っ込んでくる。

一瞬で距離を詰められ、振り下ろされた剣がジョーカーに当たるよりも先にスクアーロが横へ吹き飛ばされる。

 

「よっしゃー!どうじゃわれ!」

 

そこにはドロップキック後の受身を失敗し横たわる舞元啓介がガッツポーズを決めていた。しかし、そんな声を嘲笑うかのように大ボリュームの声が返ってくる。

 

「ゔおぉい!テメーら!中々やるじゃねーか!」

 

吹き飛んだはずのスクアーロにダメージはなく、標的がジョーカーから舞元啓介へと変わる。敵とすら認識していなかった者からの不意の一撃にも関わらず自分で横へ飛ぶことで衝撃を受け流した事を理解した時には舞元啓介とジョーカーは走り出していた。

 

「ゔおぉい!何逃げてやがる!」

 

「当たり前だろーが!」

 

「あんなヤバいやつ相手してられっか」

 

そもそも舞元啓介とジョーカーは先程の攻撃で相手にダメージを与えられるとは微塵も思っていない。

 

「尊様も!」

 

「ほいなのじゃ」

 

竜胆尊は地面に攻撃を当てスクアーロの視界を塞ぐ。しかし、そんな小細工は直ぐに破られる。

視界が晴れた先には竜胆尊でもなくましてや舞元啓介やジョーカーでもなかった。

 

「虚空」

 

その視線の先に居た1人の男子高校生は中指に填めたリングから紫色の炎を灯しながらその一言でスクアーロの周りに突如紫色の雲が増殖し始める。

 

「ゔおぉい!これは何だ!?」

 

スクアーロは次々と増えてくる雲を斬るが、全く効果はなく飲み込まれる。姿が見えなくなると雲の増殖は止まり質量を感じる球体へと変形する。

 

「取り敢えず時間が無いので逃げましょう」

 

男子高校生の制服に身を包み竹刀袋を背負った青年は「こっちへ」というと走り出す。

 

 

しばらく走り紫色の球体が見てなくなったのを確認すると、我慢の出来なくなった舞元啓介は走りながら剣持刀也へ問いかける。

 

「これはどこに向かってるんだ剣持?」

 

「そう慌てないでくださいよ。もうすぐ着きますから」

 

そう言われた3人は頭に?を浮かべる。すぐに着くと言われても周囲は木々が生い茂る森の中。建物所か人すら見当たらない場所で一体何処に着くというのか。

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