転生ハドラーは魔王軍を辞めたい   作:友親 太一

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誤字脱字報告してくれた方、ありがとうございますm(_ _)m


第九話 大家族スペシャル

「あー、憂鬱だ」

 

 今日は月イチのバーンへの定期報告の日、俺はこの日が大嫌いなんだよね。

 

「ハドラー様、嫌なのは分かりますが態度には出さないで下さいね」

 

 その為に俺達はバーンパレスにわざわざ来てる、わざわざと言うがルーラで一瞬なんだけどね。

 ちなみにメンバーは俺、アルビナス、ミスト、そして何かとバーンに気に入られてるヒュンケルの四人。

 ザボエラの奴も参加したがったがアイツが居ると只でさえ面倒くさい報告が更に長引く。

 だからアルビナスが魔力空にしたうえでザムザ監視の元に鬼岩城で留守番&書類仕事をさせてるよ。

 

「……良いでは無いかハドラー、アルビナスが加わってからバーン様の無茶振りはほぼ無くなったのだぞ?」

 

「ミスト、俺は大魔王様に会うだけで気が滅入るの」

 

 よくミストは何千年もバーンの部下をやってられるよな、マジ尊敬するわ。

 話題を変えるために俺は後ろを歩いてたヒュンケルに話しかける。

 

「ヒュンケル、ラーハルト達との修行は順調?」

 

「……まぁ悪くない。ラーハルトもフレイザードも強者だから学ぶ事は多いし」

 

 この前ダメ元でラーハルトにヒュンケルの相手を頼んだから意外な事に二つ返事でオッケー貰えたよ。

 もう少し気難しい奴かと思ったが結構いい奴だったみたいね。

 それから俺が仕事中は三人で、俺がフレイザードと修行してる時はヒュンケルとラーハルトの二人で修行してる。

 パワーに長けて近距離からの剣術を得意とするヒュンケル、スピードに長けて中距離からの槍術を得意とするラーハルト、魔力に長けて遠距離からの魔法を得意とするフレイザード、とタイプがバラバラだから良い鍛錬になってる様だ。

 

「よかよか。三人とも若いんだし仲良くしてくれよ」

 

「……チッ!」

 

 だからといって俺への態度は相変わらずだけどね。

 

 ▼▼▼

 

 んでもって、こちら魔王の間。

 

「ふむ、皆のもの面を上げるが良い」

 

 ちなみにバーンは薄い垂れ幕の向こうで謎の影(笑)の状態です。

 どうもバーンは俺、ミスト、キルバーン以外には素顔を見せる気は無いみたいなんよね。

 だったら呼ばなきゃいいやん、と言いたいが悲しきかな、上司の命令には逆らえん宮仕えな俺達なんよね。

 

「……久々に余の出番が来たな」

 

「……バーン様、本編でメタな発言は控えて下さい」

 

 あら珍しい、ミストがバーンにツッコんでら。

 

「……ふむ、では本題に入ろう。ハドラーよ、この前の報告書を読ませて貰ったぞ」

 

 あー、アレね。

 あの無駄に時間掛かった奴か。

 

「そして読んで気になったのだが、何故お主は親衛隊を持たぬのだ?」

 

 え、そこ気になったの? 

 

「は! 私は司令官故に前線に出る機会は少なく、親衛隊を作る戦力を他の部隊に割り振る方が軍全体の戦力を上げられると思い、敢えて親衛隊は作りませんでした」

 

 そんなん当たり前だよね、バーンは平和ボケし過ぎて頭もボケたんか? 

 

「なるほど、お主の意見も一理あるな。だが今後本格的に地上侵攻するのに護衛は必要であろう?」

 

「まぁ……」

 

 あ、このパターンはマズイ。

 

「お主は魔王をやってた時から自身で前線に出るのが好きであろう?」

 

 そいや原作ハドラーはそんな感じやったね。

 俺は御免こうむるけど。

 

「なら今後の為に親衛隊を持て」

 

 はいキター、ひっさしぶりの無茶振り来ましたよー。

 いや、今回はバーンの言う事も間違ってないが。

 だが断る、今更親衛隊なんぞ持ったらマジで前線に出なかんやん。

 元一般人の俺はそんなん嫌だ。

 ここは一つ、またアルビナスに助……

 

「なるほど、大魔王様の仰る通り確かにハドラー様を守る為にも親衛隊は必要ですね」

 

 ……からねぇ! 

 え、何アルビナスもバーンに同意してんの!? 

 なら今度はミストに……

 

「……アルビナスが一人でハドラーの補佐を続けるのは負担も大きいでしょう。そういった意味でも親衛隊を作るのは悪くないですね」

 

 裏切られたー! 

 なんでアルビナスもミストも珍しくバーンに同意してんの!? 

 俺、人殺しなんてやりたくないんですけど! 

 ここは最後の砦、バーンに可愛がられてるヒュンケルが否定したらバーンも意見を変えて……

 

「……大魔王様のお言葉は全てに優先します」

 

 ……くれる前にヒュンケル本人の肯定貰いました。

 つかそれ、ミストの決め台詞ですから。

 いやぁ流石ミストの弟子だぁね、無感情な感じが原作のミストとそっくりだなぁ。

 ……ちくしょう、ヒュンケルめ。

 さっさと帰りたいから適当に返事してるな。

 ヒュンケルはバーンのご機嫌取りの為に毎回連れて来てるからか、最近は感情殺してバーンの話を流す術を習得してるからなぁ。

 

 この四面楚歌な場面、挽回は不可能だよね。

 はぁ、これ否定するの無理だよね。

 

「はい、ご命令通り親衛隊を作ります(泣)」

 

 もう諦めたよ。

 

 ▼▼▼

 

 さぁて、嫌々ながら親衛隊を作ることになった俺。

 問題はメンバーを何処から連れてくるかだ。

 百獣魔団と妖魔師団に割り振った悪魔系モンスターを回収するのは当然無し、そんな事したら両軍からひんしゅくを買うのが目に見えてらぁ。

 

 ……しゃあない、またフライング禁呪法を使うか。

 原作からズレるリスクがあるが、そんなん今更やし気にするのも面倒だ。

 問題が起きたらそんときに対策考えるさ。

 

 んで前回と同じくモシャスでキルバーンに化けて宝物庫から材料を失敬しました。

 流石に二回も鎧の魔剣からパクるのは気が引けたので、今回は鎧の魔槍からパクったよ。

 今回も試しにアムドってみたら肩パーツが無くなっただけだし問題ないやろ。

 つかスピード自慢のラーハルトには余分なパーツは無いほうが軽くなるから合理的だよね? と自分に言い訳しとく。

 ……やっぱ心が痛むからラーハルトには俺特性のフルーツタルトを作って持ってこう、ラーハルトは以前作ったフルーツゼリーをえらく気に入ってたし喜んでくれるでしょ。

 

 んでパクった鎧の魔槍のパーツに、前にアルビナスを作った時に余った鎧の魔剣のパーツ(キラーマシンに使おうと思って取っておいたのにチクショー!)を合わせてチェス駒を四つ作って、後は禁呪法って完成と。

 

「おーいオヤジ、用ってなんだ?」

 

「ハドラー様、言われた通りフレイザード兄様を呼んできましたよ」

 

 と、丁度タイミング良くフレイザードとアルビナスが合流してくれた。

 

「おーきたきた、今お前達の兄弟を作ってるところだぞ」

 

「兄弟だぁ?」

 

「なるほど、私達と同じ禁呪法で親衛隊を作る事にしたんですね。流石ハドラー様」

 

 フレイザードは首を傾げながら、アルビナスは感心した様子で俺の作業を見つめる。

 そして錬金釜が強い光を放ちその光が収まると4体のメタリックカラーな戦士達が姿を表す。

 

「オレは忠実なる兵士(ボーン)、ヒム!」

 

「私は戦場を駆ける疾風の騎士(ナイト)・シグマ! 以後お見知りおきを」

 

「我が名は僧正(ビショップ)フェンブレン! 完全無欠の狩人よ!」

 

「……城兵(ルック)……ブロック……ブローム!」

 

 おー、色んな意味で上手くいったわ。

 流石に三回目となると俺も慣れたもんだな。

 今回、俺は禁呪法を使う時に色々実験したんだが見事に全部成功したわ。

 

 実験内容を説明しよう。

 まず一つ目、複数の禁呪法生命体を同時に作れるか。

 二つ目は予めチェス駒に情報を刻んでおく(今回は各々の名前を駒の底に書いといた)と、その情報は禁呪法生命体の記憶に反映されるか。

 三つ目は原作で殆ど喋れなかったブロックを喋れるように出来るか。

 実験の成果は見ての通り大成功、いやぁ良かった良かった。

 

「おぅ、よろしく。俺はハドラーだ。んでコッチの二人は……」

 

「オレはお前等の兄貴のフレイザード。よろしく!」

 

「私は女王(クイーン)アルビナス。貴方達の姉にあたる者です。皆様、ハドラー様の為に誠心誠意尽くすように!」

 

「「「「御意! (ブローム!)」」」」

 

 おー流石アルビナス、一瞬でコイツ等をまとめ上げてるわ。

 

「お前達はこのアルビナスをリーダーとした『ハドラー親衛騎団』の隊員だ。みんな頑張ってくれよ!」

 

「……あれ、オレは?」

 

「……フレイザード、お前は氷炎魔団の軍団長だろ」

 

 フレイザードのボケにツッコミつつ俺は子供達の顔を見て考える。

 ……もう後戻り出来ないな。

 守るべき部下達がいる、可愛い子供達がいる。

 本当は怖いし嫌だが、俺は……地上を……人を……破壊する……魔軍司令……なんだ。

 覚悟……決める、しか……ないか。

 

 ふと自分の拳を見ると血が滲んでた、魔族の、青い血が……

 

 ▼▼▼

 

 〜アルビナス視点〜

 

 何やら考え込んたご様子でハドラー様は執務室に戻られた。

 少し顔色が悪かったから心配ですわ。

 

「……で、オレ達は何をすればいいんだ姉御?」

 

 ヒムと名付けられた新たな兄弟に呼び掛けられて私は思考をやめる。

 

「今、説明します。我々ハドラー親衛騎団の主な任務はこの鬼岩城の警備となります。それ以外に司令部の一員としての雑務もありますがソレは追々説明します。そして何より大事な任務は、ハドラー様の剣となり盾となりハドラー様をお守りすることです!」

 

 そう、それが何より重要。

 その為の親衛騎団なのです! 

 

「お、おう(姉御、すっげー気迫だな)」

 

「ふむ(姉上の言うとおりだ、その為にこのシグマは生まれたのだからな)」

 

「行意! (何か姉者に逆らっては気がするのはワシの気のせい?)」

 

「……イエス……ブローム(姉ちゃんコワイ)」

 

 おや、何やら気後れしてますね。

 いけませんね、ハドラー様の名を冠する親衛騎団とあろうものがそんなんでは。

 ここは弟達を鍛える必要がありますね。

 

「ではこれより我等、親衛騎団は訓練を行います。みんな私についてくるように!」

 

「へ? (いきなり?)」

 

「了解した(望むところだ!)」

 

「御意(何故ワシは姉者に逆らえんの?)」

 

「ブローム(手加減してくれますように)」

 

「あー、お前等の兄貴として一つ警告しとくわ……命が惜しかったら死ぬ気で頑張れよ、マジで」

 

「「「「へ? (何、その不吉な警告!?)」」」」

 

 あら流石フレイザード兄様、よくご存知で。

 ふふふ、覚悟して下さいね弟達。

 

 ▼▼▼

 

 〜訓練所〜

 

「ほらほら、そんな事でハドラー親衛騎団が務まりますか! ニードルサウザンド! サウザンドボール! オマケでベギラゴン!」

 

「いやオレ等生まれたばかりだってぇの!」

 

「く、フレイザードの警告はこの事か!」

 

「てか姉者、最初から足出して本気モードではないか!」

 

「……姉ちゃんテカゲンして」

 

「まだまだ! ここからが本番ですよ!」

 

「「「「マジですか!? (ブローム!?)」」」」

 

 ▼▼▼

 

「ほら次は筆記テストしますよ。席についてください」

 

「いやさっきも言ったがオレ達は生まれたばっかだよ! それでテス「あ゛? 文句ありますか?」……ありません」

 

「ヒム、諦めろ。フェンブレンもそう思……って居ない!?」

 

「……ニゲタ」

 

「全く無駄な事を。チェンジ本気モード!」

 

「グハッ! ワ、ワシに一瞬で!?」

 

「おしおきです、テァッ!」

 

 ドスッ! バキッ! 

 

「……すげー、一瞬でフェンブレンを捕まえてパイルドライバー(※プロレス技、日本名は脳天杭打ち)をキメたよ」

 

「……あぁ、無駄の無い完璧な技だったな」

 

「……姉ちゃん、コワイ……フェンブレン、バカ……」

 

「さぁさっさとテストを始めますわよ。フェンブレン、何時まで寝てるんですか!」

 

「り、理不尽じゃ……」

 

 ▼▼▼

 

 〜テスト後〜

 

「ヒム、何ですかこの点数! 何で貴方だけ0点なんです!?」

 

「だから生まれたばっかでテストが出来るかよ!?」

 

「お黙り! 我々禁呪法生命体は生まれながらにハドラー様の知識を受け継いでます、それを確かめる為のテストなのに何で貴方だけ0点なんですか!?」

 

「え、オレだけなの!?」

 

「ふむ、私は90点だぞ」

 

「ワシは20点だ」

 

「……ブロックは60点。ヒム、バカ……」

 

「裏切り者ーッ!」

 

「これは補習授業の必要がありますね。ヒム、フェンブレン、この問題集をやりなさい! 終わったら再試します!」

 

「ワシも!?」

 

「当たり前です。ヒム程じゃないとはいえフェンブレンも赤点です。今日は終わるまで帰しません!」

 

「「姉御(姉者)、それは厳し過ぎるよー!!」」

 

「さてブロック、我々は補習授業も無いしハドラー様の手伝いをしよう」

 

「……サンセイ」

 

「「待って! オレを(ワシを)置いていかないで!!」」

 

「さぁ二人とも、ビシバシいきますわよ!」

 

「「ヒエーッ!!」」

 

 愛しのハドラー様、見ていて下さい。

 アルビナスが必ずこの愚弟達を鍛え上げて立派な親衛騎団員にしてみせますわ。

 

「弟達、覚悟しなさい!」

 

 ▼▼▼

 

 オ・マ・ケ

 

 〜数日後、魔王の間〜

 

「ヒュンケル、ラーハルトよ。くるしゅうない、面をあげるがよい」

 

「「はっ!」」

 

「……良かった、オマケにも余の出番があった」

 

「「はぁ?」」

 

「いやこちらの事だ、気にするな。さて、そなた等を呼んだのは他でもない。そなた等が魔王軍きっての戦士と認め、その証を授ける」

 

 〜ヒュンケルの前に鎧の魔剣、ラーハルトの前に鎧の魔槍が亜空間から現れる〜

 

「おぉ、これは見るからに禍々しい(だがデザインが悪いな、大魔王様の趣味か?)」

 

「これは一目で名品と分かります(でも先が重くて使い難そうだ)」

 

「ふむ、それは魔界の名工、ロン・ベルクの傑作『鎧の魔剣』と『鎧の魔槍』だ。二人とも手に持ち鎧化(アムド)と叫ぶが良い」

 

「「鎧化(アムド)!」」

 

「二人とも良く似合っておるぞ(ん? 何やら鎧のデザインが記憶と違うような、余の気の所為か? 光魔の杖の出来に満足して、この二つはそのま宝物庫に放置して忘れてたからな、記憶違いもあるか)」

 

「ありがとうございます、大魔王様! (でもやっぱりデザインは微妙だな、剣は間違いなく名刀だから使うけど)」

 

「必ずやこの槍を持って大魔王様に勝利をお約束します(でもオレはスピードで避ける戦闘スタイルだから鎧は余り意味はないな、槍は間違いなく名品だから使うが)」

 

「ふむ、二人とも期待しておるぞ(ふふふ、まぁ良い。久々に余の存在感を示せれて満足よ)」

 

 ▼▼▼

 

 オ・マ・ケ・そのニ 

 

 〜ヒュンケル、ラーハルト、バーンパレスからの帰り道〜

 

「そういえばヒュンケル、昨日ハドラーからフルーツタルトを貰ったんだが一緒に食わないか?」

 

「いいのか? ハドラーの作る菓子は今や魔王軍では取り合うほどの人気なのにオレに分けて」

 

「構わんよ、正直いきなりなんの脈略も無く渡されてどうしようかと戸惑ってな。あとアホみたいにデカいタルトで一人で食いきれそうにないんだ」

 

「……ハドラーは時々そういう事するからな、オレも以前あったよ。正直オレもハドラーの菓子は好物でな、ありがたく頂くよ」

 

「よし決まりだ、鬼岩城に戻ったらオレの部屋に来てくれ」




補足 ヒム、フェンブレンにもちゃんとハドラーの記憶は反映されてます。
ただ今回のアルビナスのテストは事務能力があるかどうかを確かめるテストで二人は事務能力に関する記憶は反映されなかっただけです、これは個体差なんで実は仕方ないんですけどね。
その証拠にヒムはパイルドライバーの事を生まれながらに知ってます、つまりヒムは戦闘に関する知識は受け継いでる事になります。
ちなみにフレイザードが仮に同じテストを受けたら70点位です。
フレイザードは身体の構造上、ペンが持てないだけで事務能力はハドラーから受け継いでますよ。
更に言うならアルビナスなら余裕で100点です、秘書させる為に作られたんで当り前ですがね。

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