親友がある日突然病気でTSしたけど、性格が男の時から変わらなさすぎる上に、見た目が結構長身で巨乳美少女なせいで、貧乳派な俺には全然好みじゃないからひたすらにそそらないのでムカつかれている件について   作:味音ショユ

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人間、中身も大事なんて月並みだけど真理だなって話

 あと一月とちょっとで高校一年生も終わりになる二月のある日。

 授業を適当に聞き流し、友達とくだらないことをダベってすぎる。そんな変わり映えのない日々がまたやって来た。

 しいて最近変わったことあげるなら親友が一人、一週間ほど学校を休んでいることだろうか。

 連絡も取ってみたけど、返事は『大丈夫大丈夫。詳しいことは次学校行ったとき説明するから、全然気にしないで』という曖昧なものだった。

 いや曖昧もクソもねえよ。何も説明してねえよアイツ。

 でもまあ、大丈夫って言ってるのに俺がわざわざ食い下がるのもなんか違うと思うし、本当に困ってるなら助け求めてくるだろ。中学校の時に夏休みの宿題手伝わされたのは許してないけどな。

 

 そうこうしていたらホームルームの時間になった。

 いつもの通りさえない担任教師のおっさんがやってきたが、今日はなんだか難しい顔をしている。

 そのままの表情で先生は俺達生徒に向けて話始めた。

 

「あ~……今日はちょっと紹介しなければいけないことがある」

 

 そう言って先生は教室の外に呼びかける。どうやら誰か入ってくるようだ。

 え、何? 転校生? このクソ中途半端な時期に?

 俺が訝しんでいると、教室のドアが開き、この学校の制服であるブレザーを着た見知らぬ女子が入ってきた。

 どうでもいいけどブレザーってなんでブレザーって言うんだろ? フレイザードが好きだったとか?

 軽く転校生(推定)を見る俺だったが、すぐに俺の目は見開く。

 

 まず女子の身長は俺より少し低いくらい。大体167くらいか。結構高いな。

 次に胸。とにかくデカい。目算でカップ数なんて測れないけど、おそらくFとかGはあるんじゃないか? ってくらいデカい。

 そして顔。俺は一目見た瞬間、自分の正気を疑った。

 トニカクカワイイ、という感じにどっかのラブコメ漫画みたいな感想しか出てこない。

 テレビで見るアイドルが霞む、どころかこいつがテレビに出るなら、昨今言われている若者のテレビ離れも一瞬で解消できそうな気さえしてくる。

 長身も巨乳も正直俺の趣味じゃない。にも関わらずここまで思わせるんだ、俺以外の男子は皆、今教卓の横にいる女子に見惚れていた。

 

「ほら、自己紹介しなさい」

 

 先生がそう言ったので、俺達は先生の横にいる女子の自己紹介を待つ。

 早くしてくれ。俺も他の男子も恋に落ちそうな相手の名前も知らないなんて嫌だぞ。

 そしてついに、当の女子が口を開く。

 

「ウイイイイイイイイッッッッス!! 一週間ぶりの浅野凪だよ! 心配かけた上にこんなとんでも美少女になっちゃってビックリした!? 恋に落ちるのは許すけど、エロい目で見たらただじゃ済まさないぞっ!!」

 

 恋に落ちる手前で心底良かった。いくら顔が良くてもこんな言動の女とラブストーリーしたくない。

 というかあれ、ここ一週間くらい休んでいた俺の親友だ。

 名前は凪の癖に中身は大時化そのものな親友が、女になって帰ってきた。

 

「いやどういうことだよそれ」

 

 そして気づけば一時間目が終わっていたので、俺は凪を問い詰めていた。

 授業に集中しないのは良くないって? お前一週間ぶりに友達に会って、そいつが性転換してても平常保てんのか? 保てるっていうならすげえな。

 

「どういうことってそりゃ――」

 

 一方、凪は男の時と変わらずヘラヘラしている。ぶっちゃけムカつく。

 

「見れば分かるだろ?」

「分かんねえよ。工事でもしたか? 一週間でそんな完璧に仕上がんのか?」

「人工物じゃなくて天然だよ」

 

 そう言って凪は女になった理由を説明し始めた。

 

 凪曰く、急性性転換症候群。通称TS病という病気だそうだ。

 俺は聞いたことなかったが、世界だと数百例くらい確認されている、ある日突然性転換し容姿も変わる謎の奇病らしい。

 厄介なのは、現状TS病には治療法が存在しない。

 なので、元の性別に戻りたければ医者を頼って性転換手術を受けるしかないとか。

 

「おかげで大変だったぜ。戸籍の切り替えしたり、服だの下着だのを買ったり、偉いお医者さんの所連れてかれて血液サンプル採られたりさ。あ、今思い出したけど休んでた分のノート移させてくんない?」

「ほらよ」

 

 とりあえず次の授業の教科のノートを俺の机まで取りに行って貸してやると、凪は大慌てで書き写し始めた。

 だがすぐに終わったのか、凪はノートを写す手を止め、真剣な顔をして俺に語り始める。

 

「オレさ……今、めっちゃ美少女じゃん」

「ん? ああ」

「それでいて、形のいい巨乳じゃん。乳袋レベルじゃん。もう童貞どもが見たら理性を消し飛ばされてモンキー化するようなナイスバディなのよオレ」

 

 そういって凪が辺りを見回すと、実は胸をチラ見してたのか、クラスの男子達が気まずい表情でそっと俺達から目をそらす。

 

「そうだな。で?」

 

 俺がその状況に特にツッコミも入れず流すと、凪は力強くこう言った。

 

「男ってキモイわ」

「いきなりどうした」

 

 お前一週間前まで男だったろうが。

 

「いや、女は視線に敏感っていうじゃん。胸とか見られたらすぐ分かるって奴」

「ああ、聞いたことあるな」

「アレマジだわ。オレも胸見られたらすぐ分かるもん。そして視線の主の眼球抉り取りたいレベルでキモイ」

「怖っ」

 

 あんまりにも心底忌々しそうに言うものだから、眼球抉り取りたいが本気の発言にしか聞こえない。

 こいつ、こんなに殺意高かったっけ?

 だが俺の疑問などどこ吹く風とばかりに、凪の話は続く。

 

「でもエロい目で見られるから、オレも変な気持ちになってくるのよ。性欲を持て余すって奴」

「何、溜まってんの?」

「溜まるっていうか、循環するって感じかな。女になるとそんな気分になる」

「ほーん」

 

 正直、そのへんの話はちょっと聞いてみたくはあったが、凪の次の発言の衝撃度が高すぎて全部吹っ飛んでしまった。

 

「お前、オレを抱く気あるか?」

「何でだよ!?」

 

 話のぶっこみ方唐突過ぎんだろ!!

 性欲持て余すにしてもその誘い方はねえよ!!

 

「エロいことしたいならそこらで滾ってるクラスメイトでも誘えよ!」

「『 や ら な い か 』って?」

「もうそれでいいだろ別に。さっさとクラスの男子達にそう言えや」

 

 そんな初めてのセックスがくそみそに終わりそうな誘い方は俺だったらごめんだが、周りを見ると「それでもいいから!」と言いたげな男子の目がそこらにあった。つーか血走ってた。これは確かにキモイかもしれない。

 そして、そんな男子達の目線を凪はバッサリ切り捨てる。

 

「やだよ、あいつらキモイし。そんな『TS巨乳美少女浅野凪 ~快楽に敗北した元男~』みたいな絵面になるのはゴメン被る」

「二次元ドリームノベルスみたいに言うんじゃねえよ」

 

 後、クラスの男子達を陵辱ものの竿役みたいに言ってやるな。流石に可哀そうだから。

 ほら、凪がTSする前はちょこちょこオタ話をしたことある木村とかマジで凹んでるし。

 

「木村なら純愛ルートありそうじゃね?」

「普通に好みじゃなくて……」

 

 凪の言葉で木村の凹みが倍になった。

 ゴメン。マジゴメン木村。本っ当に申し訳ない。俺のせいで余計な藪蛇を出しちゃって。

 この埋め合わせは必ずするから。

 

「でもお前ならそこそこイケてるからいいかなって。お前、クトゥルフの探索者ならAPP15くらいありそうな顔してるし」

「褒めてんのかそれ?」

 

 いや、実際15なら結構高い部類ではあるけども。

 まあ、俺も一瞬恋に落ちそうになるくらいには、今の凪は可愛い。APP18ある。そんな奴から誘いを受けているのは、男としては中々誇っていいことだとは思う。

 でもな……

 

「中身が凪だと思うと起つもんも萎えるわ……」

「ここまで袖にされるとちょっとムカつくけど、そういえばお前ペドだったな」

「ぶっ殺すぞ」

 

 俺は気持ち貧乳派で、どっちかっていうと背が低い方が好きなだけだわ!! あれこれペドじゃない!?

 俺が内心で葛藤していると、凪はしょうがないと言わんばかりに代わりの注文を俺に出す。

 

「じゃあ、バリタチのレズの知人を紹介ってできないかな?」

「お前まだ女に興味あったの!?」

 

 いきなり男である俺に抱かれる気満々だったから、性癖なにもかも変わってるかと思ってたわ。

 

「いや、男としての性癖と女になって新たに生まれた性癖が合わさってる感じ。言うならば、バイセクシャル」

「バイなのか……」

「顔以外は一切合切凡庸なあなたじゃ分からないかもね」

「うっせぇわ」

 

 モロ流行に乗っかりやがって。

 俺がちょっと抗議しようかと思うと、そこで無情にも二時間目の始まりの合図が鳴り響く。

 凪からノートを返してもらい、自分の席に着きながら俺はこう思った。

 

 とりあえず、木村を慰める方法考えるか……。

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