銀河を駆け抜ける騎士王 作:黒が好きな生き物
「おいアルト姫、喜べ今日の差し入れだ」
【誰がアルト姫だ!】
【やったぁ!】
【俺達にもあるのかい?】
「お前にはない、このナンパメガネ」
美星学園の上空、そこではEX-ギアと呼ばれるアーマーを身に着け三人の男子生徒が飛んでいた。
【はっはは! またバカにされてるよ、コイツ】
【おま! ミハエル!お前だってナンパメガネってバカにされてるじゃねぇかッ!】
【ちょ! 飛行中に喧嘩しないでくださいよお二人とも!】
そしてその光景を学園の屋上、そこからメイド服の様なエプロンを身に着けヘットフォンマイク片手に上空で起こっている喧嘩を笑っている彼女。
「さっさと降りて来い、私はお腹が空いているのだ、お前たちが帰って来ないと私も食べられない……最悪早く降りてこないと持って来たミッシェルとアルトの分を食べるぞ」
【っげ!?】
【なんで俺まで!?】
【あはは……】
「ッフン」
その彼女はミッシェルと書かれた袋に入った饅頭を笑顔で頬張りながら上空を眺めていたのであった。
※※※
どうも、マクロスフロンティアに降り立った場違いな騎士王こと転生者のアルトリアです、はい。
いや、ホントにどういう事だよ。
「さっさと受け取れアルト姫、出来立ての饅頭が冷えるだろう」
俺は持って来た饅頭をぶん投げて着陸してきた直後のアイツへと渡す。
前世では7のファイヤーボンバーの曲を聞きながらFGOのイベントをやっていたのですが……気づいたら死んでた。マジでどういうことよ。
「いつも言ってるだろう! 食べ物は投げて渡すなってッ!」
「お前にはそれで十分だろうが」
そんでもって俺の持って来た差し入れを雑ながらに受け取ったこいつの名前は早乙女アルト、俺の幼馴染だ。
「なんでいつも俺に対してはそんな雑なんだよ」
「お前とは幼馴染だからな、仕方ないだろ」
何気に腐れ縁でこいつが家から追い出された時もアイツは俺へと真っ先に相談に来たぐらいだ。まぁ、その結果俺の家に泊める事になったんだけども……それはこの際置いておくとしよう。
「あ、アルちゃん俺のは?」
「……?」
「いや、? じゃなくてね」
そんでもってアルトの後に降りて来たこの二人がアルトと同じクラスで友達である、ミハエル・ブランとルカ・アンジェローニだ。
「お前のは先ほど私が食べたが?」
「え、えぇ……」
ミハエルはミッシェルと言う愛称で俺達からは呼ばれていて簡単に言えばナンパ野郎だ。正直あんまり気に入らないことも無い事もない。まぁ、なんだかんだでいい奴なのは確かだ。
「本当にアル先輩はミッシェル先輩に対して当たりがキツイですね」
「毎度のこどく私をナンパする方が悪い」
ルカ・アンジェロー二はまぁ、アルトを先輩と慕う可愛い奴だ。今はクラスの女の子にお熱みたいだけど……実際は知らない。なよなよっとしていて男らしくない奴だが飛ぶ腕は確かだ。
「とほほほ……本当、俺には冷たい姫だよなぁ」
「お前は毎度の如く私をナンパする、だったら私もそれ相応の態度で示さないといけないだろう」
帰って来た三人を出迎えながら何だかんだと俺は言いつつミッシェルにもスポドリをぽいッと渡す。それを受け取ったミッシェルはすっごくムカつくぐらいにいい顔で笑顔になりながらそれを受け取った。こいつ俺が渡す事分かっててああ言いやがったな、ムカつく奴だぜ。
あ、アルトの髪、また乱れてるじゃん……髪はいつも整えろって言ってるだろうが。
俺は関係なぁ~いって感じで座って休んでいるアルトの元へと近づき手持ちの櫛でキレイに整え始める。こら、暴れるな!
「でもアルトには甘い」
「はぁ!? こいつがッ‼?っが!?」
「馬鹿め、いきなり立ち上がるな」
思わず立ち上がるアルトの膝を手刀で転倒させると素早く座り直させ続きを開始……クソが、せっかく整えた髪が乱れるだろうが。
「甘い? っフン、愚問だな」
「愚問?」
そうだ、愚門だ。何故なら―――
「コイツのご両親から墓に入るまで介護しろと言われてるからな、私は仕方なくやっているのだ」
あと俺はコイツの姉貴替わりだからな、一緒に住んでるのもあってコイツのお世話は俺の仕事だ。ほっとくと部屋がゴミやだらけになるから油断ならねぇ。……あと俺自身がアルトリア・ライダー気質な為に誰かを世話せてないと落ち着かないんだよなぁ。
「墓までって……マジか、姫が姫に介護って男として恥ずかしくないのか?」
「ほっとけ……それについては既に諦めた。本当に親父、なんでコイツにそんな事言い残して行っちまったんだよ……」
「いや、なんで皆さん介護って部分に突っ込みを入れないんですか!?」
「うん~流石あの店の饅頭だま、美味い」
まぁ、こんな感じが俺達の何時もの日常だ。まだ話してない事もあるがこんな平和な日々が永遠に続くと俺は何処かで思ってたのかもしれない。
「ところで次の飛行、何処を飛ぶ?」
「あぁ、次は―――」
そして忘れていたと思う、そんな平和は続かずにいつか変革の時が訪れるという事を。
「―――シェリル、シェリルノームの舞台で飛ぶんだ」
「大舞台ですよ、大舞台!」
「ミス、シェリルの近くを飛べると思うと胸が熱くなるな」
「……ほぉ、シェリルの」
そしてこの時の俺は気付いてなかった。その変革がもうそこまで、近くへと来ていることを。