銀河を駆け抜ける騎士王   作:黒が好きな生き物

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歓迎と驚きの第一話

「ハンカチは持ったか? 鞄は? 飛行経路の書いた空図は―――」

「俺は子供か!」

「前にもこの確認を怠って弁当を忘れただろ」

 

早朝、俺がいそいそと特製のお弁当を用意してアルトへ持たせる。前回も忘れてたのをもう忘れてたのか……まったく、これでは子供じゃないか。

 

「っげ! た、確かに」

 

アルトも俺の言葉に苦い顔を浮かべながら弁当を受け取る。

 

「まったく、私に注意されたくなければ普段から気を付けていることだな」

「あぁ分かったよ……まったく、お前は俺の母親かよ」

 

俺はお前の母親じゃなくて幼馴染何だが、何か? そんな風に考えながら俺はアルトを送り出した。

 

俺の今の名前はアルトリア・ペンドラゴン。先日も話した通り転生者と言う奴だ。まぁ、前世の事は娯楽以外にはあまり思い出せないから男だったのか女だったのかも不明、俺と言う一人称が最初から定着してる事から男だと思うが…‥正直分からないがな。

そんなこったで今世での新たなる生を受けたんだけども……最初はこの場所がマクロスの中だとはビックリしたものだ。

 

 外を見てみると空が宇宙へとなってるんだもの、普通に度肝抜かれたわ。そして生活していくうちにここがマクロスの世界だと知ってさらにビックリ。俺はこの世界を知りながら自身がゼントランだったりお家の事情、お家騒動と言う奴に巻き込まれ嫌になり家を飛び出た。その後は逃げるように一人暮らしを始め生活費を稼ぐ為にコネを使ってある企業へと就職。幼馴染であるアルトを家に引き取って今に至る。

 

「さて……アルトも送り出したことだし、私自身の準備を始めるか」

 

仕事の内容的に生傷が絶えない仕事だけども何とかやってるよ……あ、そういえば今日って俺用の機体の受け取りの日だったよな、急がなくてわ。

俺は素早く仕事場へと向かう準備を整えると家を後にする。ってか、帰ったらアルトの部屋を掃除しないと……そういえばアルトのエロ本、最近やけにメイドやら家政婦やら系の本が増えて来たけど何か性癖が変わる切っ掛けでもあったのか?

 

 

 

 

仕事場、俺の仕事場は基本戦場だ。

 

「遅いぞアルトリア! どこで油売ってやがった!」

 

比喩表現とかではなく、文字道理の戦場だ。

 

ここマクロスフロンティアには軍隊として駐屯している新統合軍以外に軍組織が存在する。それがSNSという民間軍事会社だ。

民間軍事会社と言うと傭兵のような物騒なイメージを想像するだろうがそうではなく、すっごく強い警備会社みたいなもんだ。金を払えば防衛・戦闘を行うのが主な事業となる。

 

「油ではなくお弁当を拵えていた」

「俺のか?」

 

そして今俺がいる場所はSNSの待機室兼休憩室として使われている場所だ。テーブルとイスの他にBARなどが設置されてある。

 

「……妹に言うぞ」

「それは勘弁してくれ」

 

そして俺の一言によりすぐさま頭を下げるこの人、俺の所属する部隊の隊長オズマ・リーさんだ。

オズマさんは何と言うか……妹命って感じの人でいい人なんだけどこういうジョークをよく言ってくる。

 

「勘弁はしてやろう、慈悲は無いがな」

「な!?」

 

俺は妹さんへのメールを隊長へ見せつける、そこには一言。

 

【ランカちゃんへ、今私はお兄さんからナンパ受けてまーす。助けてくださぁ~い】

 

そして既に送信一歩手前の状態。これを見て隊長はさらに青ざめ始めた。はっはっはは、射撃戦じゃ一本も取れないが今回は一本取ったぜ。

 

「そこまでにしてくれねぇか、だんだんと隊長が可哀そうに見えてくるから」

 

そうやって俺の方に手をやるナイスガイ、ヘンリー・ギリアムさん。ここでは俺の先輩にあたる方で正直オズマさ、隊長よりも尊敬が出来る方だ。

 

「しかし先輩、隊長ったら私に向かってお弁当はないかと聞くんですよ」

「お弁当って……あぁ、彼氏さんへのお弁当か?」

「彼氏って、アイツは彼氏ではなく介護対象であり幼馴染なので正直彼氏にはちょっと……」

「……同居してどれぐらい?」

「今年で4年目になりますね」

「彼氏として見る事は?」

「正直無理ですね」

「……彼氏さんが報われねぇな」

 

先輩はそう言ってまるで頭の痛い物を見るかのように頭を押さえる。横で聞いていた隊長も何かこう、人外を見るようなめでこっちを見てくる。

いや、確かにゼントランではありますがそんな目で見られるのはちょっと……流石の俺でも傷つきますよ。

 

「なんですか、二人してそんな目を私に向けてきて……」

「いや、ちょっと‥‥な?」

「あぁ隊長、リアルでこんな人っているんですね」

 

その後、って言っても一時間ぐらい後のことなんだけど俺は格納庫へと足を延ばした。なんで格納庫なのかと言うと―――

 

「これが私の新しい機体か」

 

真っ黒のメタリック色とダークレットのツートーンへと染められたその機体、新品の印かのようにキャビネットにはカバーが付けられておりエンジンノズルには蓋がされている。

 

「VFー19のリペア品なのですが……あんなボロボロな状態からよくここまで整備出来たものですよ」

「SNS本部の整備班には感謝しかないな、これは」

 

他の機体と違い翼が逆方向へと設置されていてカナード翼と呼ばれる羽も設置されている。その姿はまさに異様な姿であり他の機体を整備していた整備員の人達もこちらへと注目している。

 

「エンジンは買い上げ時に付いていた物をリペアしたモノを使い機体としてはかなり足の速い物となっていて足りなかったパーツなどは既存の物を使用してそれを代用しています。しかしながら一部パーツが規格に合わない物や試作品の装備を多数使っている為にかなり操縦性がピーキーな機体となっていますね。特別な空戦用システムも相まって人間に扱えるか分からない機体になってますが……統合軍に使用されている機体を無茶な操作で乗り潰した貴方になら十分使いこなせるでしょうが」

 

俺はキャビネットへと飛び移りカバーを外す。そして素早くコックピットを開いて中へと乗り込んだ。中にある機械を立ち上げ各部を入念にチェックしていく。不具合があったら死に直結する、だから入念にチェックしないと。

 

「システムは……よし、注文道理の物になってるな……前の機体のデータは!」

「データ持ってきました!」

 

整備員からデータの入ったメモリーをもらいそれを反映させていく―――これで俺好みの機体になったはずだ。

 

「ヨー、ロー、アップ、ダウン……まぁそこらへんには問題ないよな」

「新品同然の機体ですから!」

 

俺はコックピットから降りるとデータの入ったメモリーを整備員へと渡す。ほんと良い腕してるよ。

 

「セッティングは前の物と同じでいい。後は頼んだ」

「わっかりました!」

 

笑顔で敬礼してきた整備員へと敬礼を返すと隊長の元へと向かった。うわぁー、早く乗りてぇ~。先輩の新機体の自慢返しがやっとできるわ~

ルンルンな気持ちで休憩室へと到着して、いざ自慢をしようと思ったんだけど……警報が部屋に鳴り響いた。

 

【大統領府から出動要請、ビクター3.繰り返すビクター3】

 

「ビクターって……マジかよ」

 

ビクター、有体に言えは緊急の度合いを示すコードだ。そしてこのコードって事はフロンティアに敵対する何かが向かって来ている事を意味する。

そしてこのコードは長らく…っと言うか船団始まって以来初めて発動された要請だ。だからこそ先輩は驚いていたと思う。

 

「ギリアム! ミシェル達にもコールを! カナリア出るぞ!」

 

隊長はあわてた様子も無く冷静に俺達へと指示を飛ばす。流石隊長って感じだな、俺と違って冷静だ。そう考えながらも俺はスーツを着るために更衣室へと走っていたのだった。はぁ……正直新しい機体の馴らし飛行ぐらいはしたかったな。

 

 

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