それは先月のことだった。学校の帰り途中で、ある男と待ち合わせをしていた。
その男は、僕の元親父だった黒木蒼汰。
2年生の秋に会って以降、週に一回ほど連絡をすることがあった。
嫌いだった親父だったのが、いつの間にか嫌いな人にならなくなった。
理由は、母さんが自殺した後の絶望的なことになった僕を少しでも支えてくれたことだ。
品川駅の改札口で僕のことを待つ元親父、顔が見えた瞬間笑顔で迎えてきた。
「よっ!元気そうだな」
「本当に来たんだな」
「何だよその言い方、まっ、とりあえず行くか」
「行くってどこに?」
「お前の住む家だよ」
親父の言う通り、僕が住むマンションに連れてやった。
この日、妹の明里は外出中だったため、ちょうど二人で話すことができ「それで、話って何?」と僕は言って湯吞にお茶を入れそれをテーブルの上に置いた。
「絵、まだ描いてるか?」
「たまにしか描いてないけど、賞は取っているよ」
「ほほう、すごいなお前!じゃあ、あの大学には行けるな」
「大学って?」
「美術系の大学、お前行きたいって言ってなかった?」
「誰に聞いたんだよ」
まあ大体予想は付くけど、大学行くにはやっぱ東京の何処か…でもお金かかるし色々と悩まされている僕に親父が言う。
「それで美大に知り合いが居てな、ぜひ来てほしいと言われてさ!」
「それって名古屋?」
「そう!」
僕の生まれ育った名古屋。でも美大って東京にもあるはずだが、
「帰るってこと?」
「おう、そっちの方が楽だろ?大学卒業したらまたここに戻ってくればいいだけじゃないか」
「あぁ…うん」
「よし、決まりだな」
「あ、待って」
「何だ?」
「ちょっとだけ待っててくれるかな?」
親父が紹介してくれるとは思っていなかった。でも美術のこと学べるならその大学には行きたいな、絵には自信がある。賞だっていくつかは取っている。だけど、僕が親父に『ちょっとだけ待っててくれるかな?』と言った理由は。
スマホの着信が鳴る。ベッドに寝転んでいた僕は起き上がりスマホを手に持った。相手は上原歩夢。彼女からの着信だった。
「もしもし」
『もしもし、空良くん?あのね、今日はありがとう』
それは今日行われた体育祭のお礼の電話だった。
「あぁ、こちらこそありがとうね、歩夢ちゃん」
『うん、凄く楽しかったよ』
「僕も楽しかったよ」
『えへへ』
ここで言ったほうがいいかな、じゃないとずっと溜め込んでしまう。
『空良くん?』
ちょっと聞きたそうな彼女の声。伝えるか…
「あ、黙っちゃったね、ごめん…実はさ…僕、美術系の大学に行こうと思ってさ」
『美術の大学?』
「うん」
『その大学って何処なの?』
「名古屋…」と言うと『名古屋…』彼女は少し戸惑い気味に小声で言い返した。
『それって、もう空良くんとは一緒にいられないってこと?』
予想通りの返事が返ってきた。そう、来年の3月には彼女とは一緒にいられなくなる。僕はなぜが黙ってしまった。『うん』って言ったらどう返事が返ってくるかそこは分からなかった。
『あ、私何言ってるのかな、えへへ、ごめんね。空良くんが行く大学に私がついて行っても意味ないもんね』
「歩夢ちゃん…」
『大丈夫、ありがとう教えてくれて』
「うん、また今度、改めて話すね」
『うん、じゃあおやすみ』
「おやすみ」
数分間の通話は終了。なんかスッキリした。正式に彼女に話してから親父に伝えよう。残り10ヶ月の高校生活。今後どう彼女と過ごすが僕は考えなら眠りにつった。
明日、何処か行こうかな...
お久しぶりです。就職が決まってもうすぐ終わるところですが、投稿頻度が落ちてますね。マイペースで行ってますのでそこはお許しください。
さて、次回はいつになるか...
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